Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、184

2017-05-22 20:39:51 | 日記

 「やぁ、ホーちゃん、目が覚めたのか。」

この時、叔父は普通ににこやかな笑顔をして蛍さんを覗き込んでいました。

「お兄ちゃん、やっぱり来てたんだ。夢かと思ってた。」

と蛍さんは答えます。この頃になると蛍さんは夢と現の区別が曖昧になって来ていました。

実は今迄、蛍さんが母の実家に行くのは毎年の盆と年末ぐらいでした。

それで彼女には、叔父の顔は盆と年の瀬にしか見る事が出来無いという固定観念がありました。

だから目覚めたばかりで意識が朦朧としていた蛍さんは、叔父の顔を見て今は年の瀬だと勘違いしてしまいました。

  さて、母の実家では、年暮れに恒例の餅つきの行事がありました。

その時、蛍さんの家の分も餅をついて貰い、つき上がった鏡餅やのし餅を貰って家に帰り、新しい年を迎えるのです。

  「もうお餅つきは終わったの?」

何時も餅つきが終わると、余った餅でお萩や黄な粉餅など作ってもらい、

蛍さんはもちろん、叔母や叔父も皆和やかに集い、お茶を用意して餅を頬張り一服するのでした。

出来立てのお餅を食べる事が、物心ついてからの蛍さんの毎年の年末の楽しみになっていました。

  「ホーちゃん、黄な粉餅がいいな。お兄ちゃんは?」

叔父は顔をしかめました。ホーちゃん寝ぼけているなと小声で独り言を言うと、

「ホーちゃん、今は盆だよ。」

と笑顔で姪に語り掛けるのでした。餅つきは年末だ、まだ半年ほど先の事さ。そう言って、

「分かったお腹が空いたんだろう。」

もうすぐ昼だからな、10時のおやつの時間にはもう遅いよ、昼まで我慢しようなと、蛍さんの布団の上から肩のあたりをポンポンと軽く叩くと、

叔父は彼女が母の里に来た時の、何時もの世話係然として姪をあやしてやるのでした。

  「そうだ、本でも買って来て読んでやろうか?」

そう叔父が蛍さんに語り掛けると、蛍さんはそれよりやはりお餅が良いと駄々を捏ね始めました。

「こんなに寒いのに、お盆って言ったら暑い時じゃないか、お兄ちゃんったら、変な事言って、またホーちゃんの事揶揄ってるんだろう。」

蛍さんはぷーっとほっぺを膨らませて叔父に文句を言いました。

「寒い?」

叔父は変だと思いました。

蛍さんの頬や布団から出ている手に触ってみました。確かに、蛍さんの頬や手は何だか温度が低いような気がします。


やはりクックパッド

2017-05-22 11:38:38 | 日記

 1番に思い付くのはクックパッドです。

以前から作りたいメニューを検索すると、必ずずこのサイトを開きます。

黒蜜作りとか、タンドリーチキンとか、過去にこのサイトのレシピを参考に作りました。

他にはフェイスブックの動画で目についた、目新しい料理レシピなど、作ってみたいなと思える物が多くあります。

ただ、画面が早すぎるので、確りメモして繰り返し再生しないと、私の場合ついていけません。

 


ダリアの花、183

2017-05-20 19:48:25 | 日記

 父は口をへの字に曲げたままで、義弟の勢いに返答も出来ないままその勢いに飲まれていました。すると、

「やぁ、あんたさん、来てくれたのかい。」

病室の入り口で明るい声が響き、蛍さんの祖父が顔を見せました。

「あんたの威勢の良い声が向こうまで聞こえたから、私も心丈夫で急いで駆けつけて来たよ。」

祖父は嬉しそうに満足げな笑顔を浮かべると、

「朝ご飯がまだなんじゃないか、一緒にどこかで食べて来よう。」

と叔父を誘いました。叔父も祖父のこのにこやかで明るい対応に、

「やぁ、お父さん、久しぶりです。この前はお世話になりました。また、良いものを頂きましてありがとうございました。」

そう言って笑顔になると、2人で和やかに話を始めました。

 叔父は僕は朝ご飯は済ませて来ました。でも、お父さんが食べに行かれるならご一緒しましょう。

また商売の話しなど向学のために聞かせてください。この前の話の続きが聞きたいなぁと嬉しそうに語り掛けました。

 おお、うんうんと、祖父もご満悦の体で、じゃあそこの食堂でと、話がまとまったところで2人は蛍さんの父を振り返り、

「お前その子の事は頼んだよ。大事な孫なんだから、気を付けるんだよ。」

「兄さん、ちゃんと見てやってください。ホーちゃんは僕にとっても可愛い姪なんです。どうかよろしくお願いします。」

そう父と義弟に言い置かれて、蛍さんの父は連れだって仲良く行ってしまった彼らに、むすっとして、

「何だい。2人して。」

と、そっぽを向くのでした。

何が確りなんだ、何がちゃんと見てやってくださいなんだ、お父さんだなんて、誰がお前の親なんだ。

と、蛍さんの枕元でブツブツ言っていました。

 蛍さんには事情が分かりませんでしたが、急に叔父が現れたので驚いてしまいました。ほぼ半年ぶりに会った感じです。

何時も優しい叔父なので、久しぶりにその顔を見る事が出来た事は嬉しく思ったのですが、

目の前で父と叔父がどうやら喧嘩めいたことをしていたようなので、昨日の伯母と父の険悪な様子が再び思いだされて、

何だか酷く気が重くなってしまいました。

蛍さんは目を閉じるとまたすやすやと眠りの世界に入ってしまうのでした。

次に蛍さんが目を覚ましたのは、その日の午後に近い頃だったでしょうか。枕元には叔父が付き添っていました。


ダリアの花、182

2017-05-20 10:13:06 | 日記

 この叔父の立てた騒音で、何事かと父が病室に戻って来ました。

「やあ、君、来てたのか?」

父は真顔で驚いたように言うと、一寸緊張したような、気を張ったような面持ちになりました。

 如何してここが分かったのか、如何やってここまで来たのか?そんな事を父は叔父に聞いていましたが、叔父が

「姉さんから。」

と言うと、ははぁんとこれで分かったと、蛍さんの父は合点しました。

「それでは、あれは実家にいるんだな。これで漸くあれの行方が分かった。道理で此処にいないはずだ。」

多分、蛍さんの母は如何してよいか分からず、自分の実家を頼って里に駆け込んだものと思われます。

急を聞いた蛍さんの叔父が心配し、朝1番に病院へ駆けつけてくれたのでしょう。

 「君、バスで来たのかね?」

ああ1番バスで、そう叔父が父に興味無さそうに言うと、父は叔父の無気力な様子に如何したんだねと尋ねてみます。

「如何したって、…言っても。」

叔父は言い淀みました。

「こっちの方が如何したのかって聞きたいよ、姉さんの話ではてっきりホーちゃんは、」

そこ迄言って叔父は言葉を飲み込むのでした。

 「ああ、その件なら解決したんだ。」

「解決したというか、心配なかったんだよ、元々、いやぁ、ははは、実は勘違いでね。」

そう父が言うと、勘違い?そう言って叔父はふっと笑みを漏らすと、そんな事だろうと思った。そう言って父を睨むと、

「そっちは勘違いで済むけど、こっちはそうはいかないんだよ。」

向こうじゃ皆昨夜から一睡もしないでホーちゃんの事を心配していたんだ。夜通しだよ。みんなで如何なったんだろうって、

そっちに電話しても誰も出ないし、大丈夫なら大丈夫と、こっちに連絡くらいしてくれてもいいんじゃないですか、

「そうでしょう、お兄さん。」

そう義弟に言われ、詰め寄られて、父は青ざめて顔を強張らせました。

 「いやぁ、こっちもあれが何処へ行ったか、行方不明で困っていたんだよ。」

何処へ行ったか知らなかったんだと父が言うと、知らないって、それでは姉は捜索願でも出してもらってたんですか?

姉さんが内以外の何処へ行くというんです、知らなくても分かりそうなものだ。大体、あれって姉さんの事ですね。

ムッとしたようにそう叔父は言って、気に入らないなぁと小声で呟きました。それは父にも聞こえていました。

 「ホーちゃんもこんな事になっているし、姉さんの事も放りっぱなしだし、兄さんの所はどうなっているんだ。」

無責任な、一家の主がそんな事でいいんですか。と、義弟の憤懣やる方無い抗議は続きます。


ダリアの花、181

2017-05-19 11:33:30 | 日記

 次の日の朝、蛍さんが目を覚ますと、父はもう起きていて、ほっとした様子で蛍さんの顔を覗き込んでいました。

娘が目を覚ますのを待ちかねていたようです。蛍さんが目を開けると、

「やぁ、おはよう。」

と声をかけました。にこにこして嬉しそうでした。

 蛍さんはいつも通りの視界にほっとしました。

また昨日のように慣れない世界が目に映るのではないかと思い、不安に思いながらそっと目を開けたのです。

「お父さん。良かった。」

親子で共にほっとすると、笑顔でお互いを見つめ合うのでした。

 蛍さんのたん瘤の腫れがあまりに酷かったので、昨晩お医者様がたん瘤を少し切って中身を出してくれたのでした。

おかげで両目の視界が利いて物は平常通りに見えるのでした。その代り、蛍さんの額から頭にかけて包帯がぐるぐる巻きに巻かれています。

見た目如何にも重体の患者然としています。これがたん瘤だけの怪我の患者だとは、知らない物にはとても思えない様相です。

 「お腹がすいたかい?朝ご飯を食べるかい?」

父がこう聞くと、蛍さんは自分が空腹な事に気付きました。

それで食事の準備をしてもらう事にして、父は朝の食事を頼みに病室を出て行きました。

 ダダダダダ…、父が病室から消えて、少しして駆け足の足音が響いて来たと思ったら、蛍さんの病室の入り口に叔父が現れました。

「ホーちゃん、大丈夫か?」

その声に蛍さんが声の主を見ると、その顔は母の弟にあたる叔父なのでした。

「あっ、お兄ちゃん。」

母の弟はかなり歳が離れていてまだ学生でしたから、蛍さんは何時も叔父さんではなくお兄ちゃんと呼んでいました。

 如何したのかと聞く蛍さんに、叔父は変わった表情でしばらく無言でした。

目が酷く吊り上がって、鼻に丸く皺などよせて、口の端は上がっています。蛍さんは初めてみる叔父のこのような表情に、

如何したんだろうと不思議に思い、その顔をじーっと見詰めていました。

 「お兄ちゃん、如何したの?」

余りに沈黙が長いので、蛍さんは怪訝な顔をして叔父の顔を見詰めながら話しかけました。

すると叔父はその不思議な表情のまま彼女の傍に歩み寄って来ましたが、一旦彼女から顔を背けて戸口を振り返り、

また元通りこちらに顔を向けると、

「やあ、ホーちゃん、元気そうだな。」

思ったより元気そうで良かったよと力のない声で言うと。

後はまた目を吊り上げて口の端などひくひくと震わせ、後に続く言葉がありませんでした。