Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、188

2017-05-25 22:35:54 | 日記

 「お昼は食べたのかい?」

父の声に蛍さんが振り向くと、いつの間にか病室に父が帰って来ていました。

母はいいえと、この子はお腹が空かないと駄々を捏ねてるんですと父に訴えると、

「お前がちゃんとやらないからだろう。」

そう言うと、自分が代わるからと、お前はもう弟に帰ってもらうよう言ったらどうだと、懐から白い封筒を取り出しました。

母はそれを見てにっこりしました。

 「父さんからだ、お前からという事でお小遣いとして渡してやると言い。」

そう言って母に白い封筒を手渡すのでした。母は嬉しそうに廊下に走り出て行きました。叔父を探しに行ったのでしょう。

 「駄目だよちゃんと食べないと、良くならないぞ。」

父はめっという感じで蛍さんを目で叱ると、箸を持って食事をさせようとします。蛍さんも父にそう言われたので口を開けて食べてみますが、

『不味い。』

何だか食事が不味いのです。最初は美味しいと思って食べていたのですが、途中から何だか不味くて食が進まなくなったのでした。

 自分では、世話慣れない母に食べさせてもらって気が滅入ったせいだと思っていましたが、こうやって何時もの様に父に食べさせてもらっても、

どうもしっくりと来ないのは、食事が酷く不味い物で、食べたくないからだという事が分かって来ました。

 「美味しくない。」

そう父に訴えると、病院の食事という物はそう言う物だと父は事も無げに言います。

「でも、最初は美味しかったんだもの。お母さんに食べさせてもらっている途中から不味くなったんだもの。」

そう蛍さんは言って、そっちのお味噌汁が欲しいと器を自分の手に受け取ると、ごくりと飲んでみました。

「薬臭い。」

これは薬の味がしました。彼女にもよく分かりました、味噌汁の味ではありません。

 父は蛍さんの言葉に、味噌汁の臭いを嗅いでみます。そしてちょっと口に汁を含んで、嫌な顔をしました。

そしてご飯の方をくんくんと嗅いでみて、やはり一口くちに含んでみました。

父はすぐにご飯を出して、ぺっとハンカチで口を拭いました。

 「いや、旨いじゃないか。」

彼は頬を赤くして澄ましてそう言うと、蛍さんにもう少し食べたらどうだ、と箸に乗せたご飯を差し出します。


ダリアの花、187

2017-05-24 22:47:35 | 日記

  「お前母さんを見たかい?」

病室の隅に置かれた水枕の山を尻目に父が尋ねました。

何時から起きていたんだい 、目が覚めた時側に誰がいたんだい。そんな事を父は静かに蛍さんに尋ねて来るのでした。

彼女が、10時のおやつの時間が済んで お昼に近い時間だって、お兄ちゃんがそう言ってベッドの側にいたと答えると、

父は、お母さんは?側にいなかったのかい、と確認するように尋ねるのでした。

「お母さん、全然見てないけど。」

蛍さんが答えると、父は何だか身を起こして廊下の物音に耳を澄ませました。

  「お前そこに居るんだろう、入って来たらどうだ。」

え父はそう言うと箸を下ろし、盆に載せると立ち上がりました。

そうしてその儘廊下に出て行き壁の向こうでヒソヒソ話し合う気配がしていました。

  廊下の方から特に何も物音が聞こえなかった蛍さんは、父が急に廊下に出ていった理由がわからずキョトンとしていましたが、

 目の前のお盆の料理を眺め、食事途中にお預けを食らった気分になっていました。

お箸もそこにある事だしと、箸を手に取ると1人で食事を続けました。

廊下のヒソヒソ話しは聞こえていましたが、蛍さんに内容は分かりませんでした。

  その後、食事途中にふいに母が部屋に入ってきました。

「あれ、お母さん、どうしたの?」

蛍さんは意外な母の出現に驚きました。彼女は母が病院にいるとは思わなかったのです。

母は特に何も言わず、少し沈んだ表情で蛍さんの手から箸を取ると、彼女に食事を取らせようとしましたが、

蛍さんは母の手から食事をとる事に抵抗があるのでした。

  何しろ普段から母に食べさせて貰った事がないので慣れません。要領を得ないので食事がポロポロこぼれるか、口の端じにくっついてしまいます。

「もういいわ。」

自分で食べるから、そう言うと蛍さんは、箸を貸してと手を出して母から箸を受け取ると自分で食べ始めました。

が、気分が沈んで食欲がなくなり、すぐに箸を下ろして仕舞いました。

お腹は空いていましたが、もう要らないというと、母に背を向けて横になって知らん顔をしていました。

 


ダリアの花、186

2017-05-24 20:13:04 | 日記

 蛍さんは直ぐにホカホカと心地よい暖かさに包まれました。『春が来たみたい。』そんな事を考えていました。

しかし、その心地好い暖かさは過ぎて、段々と暑くなってきました。頃は夏の昼近くです。

静かに寝台に横たわっていると、床に接している部分が熱くなってきて、蛍さんは何度か寝返りを打つのでした。

それももう限界になるくらい、暑い上に退屈です。お腹もすいて、喉も乾いてきました。

病室には誰もやってくる気配がありません。病院内もしんとしています。

蛍さんは枕元をきょろきょろ眺めてみましたが、食べられそうな物はもちろん、飲み水も置かれてはいないのでした。

 そ―っと頭を上げて、片肘をついて、身を起こしてみます。

特に何か起こりそうな気配はありません。『大丈夫そうだ。』そう思った蛍さんは、上半身を起こして寝台に座ってみました。

寝台の縁に座って足を垂らしてみます。すーっと足元が涼しくなり、寝ているよりはましな状態になりました。

部屋のの中を眺めてみると、寝台の頭の方向に窓がありました。窓は少し開いて、そこから風が入って来るようです。

窓を全部開けたらもっと涼しい風が入って来ないかなと、彼女は窓辺に歩いて行き窓に手を掛けました。

すると、窓の下の光景が彼女の目に入りました。

 窓下には外掃除をしている用務の人が1人見えました。雑草の処理をしているようです。

すると、その用務の人に近付いていく叔父の後ろ姿が目に入って来ました。

何やら2人で話しています。そして、叔父は振り返って笑顔で戻って行きました。

蛍さんは窓を全開にして、窓辺に手をかけて風が入ってくるのを確かめていました。心持涼しくなった気がします。

『そのうち風が強くなったら、部屋ももっと涼しくなるでしょう。』そうおしゃまに思った彼女は満足して寝台に戻ってきました。

素足の足裏に触れる床板の涼感に、彼女は床で寝転んでいたいと思いましたが、床の埃っぽさにそれは出来ないのです。

渋々また元の暑苦しい寝台に乗るのでした。寝台から足だけ放り出して、そうやって空間に涼を求めて、蛍さんは誰か病室に入って来るのを持っていました。

 少しして、廊下の方で父の声がして、聞き覚えの無いおばさん風の女性の声がしたと思ったら、戸口に父が昼食を載せたお盆を持って入って来ました。

「やぁ、起きてるのかい、お腹が空いたんだって。」

そう言って何だか寂しそうに笑うと食事の盆を蛍さんの脇に置きました。そして父は箸で食事を蛍さんの口に運んでくれるのでした。

蛍さんは自分で食べなくていいので何だか妙な気がしましたが、父の沈んだ様子に黙って父のするに任せていました。


ファミマ

2017-05-24 14:35:13 | 日記

ファミリーマートです。略してファミマです。

ご近所に多いのでよく利用します。スイーツやお弁当を買う事が多いです。

買い物をして貯めたTポイントで、給油時にポイント還元しています。

どのくらい割安で給油できるかが、現在の楽しみです。

名前のファミリーマートも家庭的で気に入っています。


ダリアの花、185

2017-05-23 22:19:01 | 日記

  それでも冷え込んでいるような冷たさではありません。

不思議な事を言うと、叔父は姪の事を心配しながら、それでも笑って、

「ホーちゃんこそ、俺の事を揶揄っているだろう。こんなに暑いのに、どうして寒いんだい。」

と造り笑顔で尋ねてみます。

  暑い?変ねと蛍さんも思います。そして叔父の顔をよく見て見ました。

叔父はこめかみの部分に汗の粒を付けています。本当に暑そうです。部屋の大気も確かに寒くなく、蛍さんが試しに吐いた息も白くなりませんでした。

しかし、蛍さんはやはり寒く感じるのでした。

寒いよお兄ちゃんと蛍さんは言って、言ったそばからぶるっと身震いしてしまいました。

話す声も震え声になって来ます。叔父は本当に何だか姪の様子がおかしいと感じました。

 大体、真夏のこの暑い時期なのに、蛍さんはきちんと布団を被っているのです。寒いというよりどう見ても布団蒸しです。

蒸し暑くて布団を跳ね返さないのが不思議なくらいです。叔父はもしかしたらと、蛍さんの足元の方の布団を捲ってみました。

 「あれ?」

あれれと、彼は蛍さんの足元から水枕を取り出しました。そして反対側の足元も覗いてみて、そこからやはり水枕を取り出しました。

そこで彼は、思い切って蛍さんの布団をさっと剥がしてみると、果たして彼の目に映ったのは水枕に囲まれた蛍さんの寝間着姿でした。

「これだけ水枕に囲まれていれば、寒くもなるさ。」

そうムッとした声を上げた彼は、如何にもむすっとした機嫌の悪い顔つきに変わりました。

 彼は寝台から水枕を全て取り除くと、布団も外したままで、蛍さんをよしよしと静かに落ち着かせて寝かせ、言いました。

「ホーちゃん、これで温かくなるよ。」

暑いくらいになると思うけどね。お兄ちゃん少し兄さん、というのは君のお父さんの事だけど、に話があるから、

少しここからいなくなるけど、静かに寝ているんだよ、分かったね。

そう言ってにっこり笑うと、

「黄な粉団子でも買って来てやるよ。」

そう言ってわーいと蛍さんを喜ばせると、じゃぁと言って彼は病室から出て行ったのでした。

 「黄な粉団子か、早く食べたいな。」

串に刺さったおいしそうな黄色い団子を思い浮かべて、蛍さんは嬉しそうににっこりしました。

何だか本当にお腹が空いてきて、グーッとお腹の虫も鳴き出したのでした。