土筆(238)
『私は普通何でも1回聞けば分かるんだよ。』ふふんと、本心はやや腹立ちながら、可笑しそうに祖母は心の中で呟きました。さてと、彼女は蛍さんが話し出すのを待ち構えていました。「ど......
良いお天気です。10月も、もう少しで終わりです。
土筆(238)
『私は普通何でも1回聞けば分かるんだよ。』ふふんと、本心はやや腹立ちながら、可笑しそうに祖母は心の中で呟きました。さてと、彼女は蛍さんが話し出すのを待ち構えていました。「ど......
良いお天気です。10月も、もう少しで終わりです。
「私の…?!。」
私の嫌味に父は驚いていたが、真面目に何事か考え出したようだ。
「それでは、お母さんに聞いてみないとな。」
考えながら私に同意を求める様に父は言った。私はにっこり笑ってその言葉に答えた。そして父に背を向けるとにんまり笑った。私はしてやったりとばかりにダーッと走り出すと、そのまま一気に台所へと逃げ出した。これ以上父の傍に居て、何かまた話し掛けられるのを避けたのだった。
その後父は本当に母に問い掛けたようだ。1時間ほどしてから、自分のせいでは無いと母が言っていたと、また私を障子の前で待ち伏せしていて責め立てて来た。私はその時台所から居間に入って来たが、また父の言いがかりに付き合うのかと少々うんざりした。この時の私には、父が犯人を知っているという事実が強みとしてあったので、気持ちに余裕が持てた。
「変だねぇ。」
私は言った。お父さんのせいでも、私のせいでも無いなら、誰のせいで障子に穴が開いたんだろうね。
「若しかしたらそれはお母さんのせいじゃないの。」
開けたいから開けたんじゃないのかなぁ。駄目だと言われても、したいならすればいいと言っていたくらいの人だもの。私は母の為人を父に断言した。
「お母さん、ここに穴を開けたいから開けたんだよ。」
自分の為じゃないかなぁ。私はさも推理するような口ぶりでわざとらしく明言した。父は何というのだろうか、私には興味があった。父の返事に何と答えようかなと、内心少々愉快に感じながら私は父の顔を見詰めて彼の次の言葉を待った。
土筆(236)
『これは見ものだな、というより聞き物だな』等と駄洒落の様に可笑しく言葉を考え出してみます。彼女は自分で作りだした言葉に思わず笑顔になると、で、と、「それでホーちゃん、あんた諸行無......
雨模様が混じる曇り空。かなり涼しくなりました。暖房を用意する日は近いかもしれません。
その年の居間の障子襖が1度張り替えられて以降、気候の良い時期、日々私は盛んに外遊びに興じていた。毎日のように近所のお寺へも頻繁に遊びに出かけ、近隣を走り回り、日増しに世間の事を覚え体も逞しくなって行った。身長も伸びた。
そんなある日の事だ、張り替えられた障子にまた穴が出現した。私はまたかと思ったが、やはり衝撃を受けた。今年になって2回目だ。少々あっけに取られて障子の前に佇んだ。そんな私の前に廊下から父が現れて、私と顔を出くわすとハッとした表情になった。暗い顔が明るくなって何かが彼の脳裏に閃いた感じだった。
今回はもう父もとうに犯人の目星がついているはずだ。私はそんな点安心していたが、この時の父はやはり私にこれはお前かと確認して来た。勿論私は違うと答えたが、父は何やらそうかとも違うだろうとも言わずにやや考え込む風で黙っていた。その後ふんむと合点とも不満ともつかないような相槌を1つ打つと、彼は納得のいかない様な、後ろめたい所がある様な表情をして少々顔を赤らめた。
「実はお父さんは犯人を知っているんだが、」
父はそう言うと、お前がした事にしておかないか、と言った。えーっと私は内心嫌な心持がした。半分程だ。何故なら見ていなくても私にはこの穴の犯人が誰か想像がついたからだ。それは母だなと咄嗟に思った。父は母を庇おうというのだ。その事も想像がついた。
「あれも何の不満が有るのかなぁ。」
父は首を捻りそう口にすると、この穴が開いた時、自分は2階の窓から穴が開く瞬間を目撃していたのだ、と私に告白した。私は溜息を吐いた。それなら何故私に事の真偽を確認したのか、分かり切った事を何故にまた?と思ったのだ。父は穴を前に何だかしょんぼりしていたが、私の嫌そうな顔と首を横に振る姿に、やっぱりなと肩を落とした。
私にしても、いくら母の為だとはいえ濡れ衣を着るのは気が進まなかった。その上、新しい穴を見詰める内に、私の脳裏には昨年の穴が開いた当初の出来事、父から嫌疑を掛けられた遣り取りや、最初に母に抱いた険悪な感情が蘇って来た。それなのに、それなのに父は私に悪いとも思わず、あの母の罪を被れと言うのだ。私はそう合点すると、ムラムラと怒りが湧いて来た。私はむかむかした顔つきになると、首を左右に振り振り台所に進もうと歩み出した。すると父は、
「おいお前、お前にも悪い所があるんじゃないのか。」
と声を掛けて来た。この障子に穴が開いたのはお前のせいでもあるんじゃないのかと父は言うのだ。殆ど外遊びに出て家に居ない私の事だ、母に何の世話を掛けているというのだろう?。今回は障子戸の向こうも気にしてはいない、母とはこの襖関係の事で何の話もしていないのだ。私は即座に答えた。
「何にも無いけど。」
ムカムカした私はついでに、「それはお父さんのせいでしょう。」と嫌味たっぷりに言い返した。
土筆(235)
「お父さんは私が居るから1人じゃないわ。」蛍さんは父に言ったように、祖母の前でこう言葉を漏らすのでした。 ここ迄、公園の回想をしていた蛍さんは、所々父の言葉や自分の言葉を......
雨になった今日、扇風機を掃除して、綺麗にして仕舞い込みました。来夏までお休みです。今夏はご苦労様でした。