眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ゆとり&ポリバレント

2018-05-21 21:35:44 | 短歌/折句/あいうえお作文
「開いてますか?」
「ごめんなさい。今日はもう……」
「煙草は吸える?」
「今日はもう終わっちゃったんです」
「そうか。じゃあ、あんまりゆっくりはできないね」
「ええ」
「何時まで?」
「20時までなんです」
「そうか。ちょうど20時じゃないか」
「またゆっくりと……」
「アイスコーヒー」
「こちらでよろしいですか」
「1杯飲んですぐ帰るとしよう」
「ミルクは入れられますか」
「うん。この時計合ってるの?」
「はい」
「チャンネル変えていい?」
「何か」
「代表の試合やってないかな」
「ああ。ちょうどハーフタイムみたいですね」
「そうか。ハーフタイムか……」

(このあとは前半戦のハイライトです)

「来週雨降るかな?」
「どうでしょう」
「明日日の出は何時かな?」
「どこか行かれるんですか?」
「行くかもしれない」
「そうなんですか」

(間もなく後半戦のキックオフです!)

「灰皿あります?」
「ごめんなさい。もう片づけてしまいました」
「そうか。遠藤出てるかな」
「遠藤?」
「うん。遠藤」
「どの遠藤です」
「どのってあんた」
「すみません。あまり詳しくないんで」
「そうなの」
「ジーコでしたっけ」
「そりゃずっと前だよ。ロシア政権じゃないんだから」
「お待たせいたしました。アイスコーヒーになります」
「ありがとう。飲んだらすぐ行くから」
「ええ」

(このあと、いよいよ後半戦のキックオフ!)

「監督変わったんだよ」
「へー。よく変わるんですか」
「日本の大臣ほどじゃないけどね」
「ああ。そうなんですね」
「今頃になってね」
「大会は近いんですか」
「もうすぐだよ。ああ、あんまり興味ないんだっけ」

(このあと、いよいよ後半戦! ビッグ4集結なるか!?)

「成績がわるかったんですか」
「ゴタゴタみたいだね」
「衝突ですか」
「まあ色々あるみたいだ」
「どこも色々大変ですね」
「本当に大変なのは選手たちの方だよ」
「そうですか」
「と言うか迷惑なんだよ」
「はい」

(このあと、いよいよ絶対に見逃せない後半戦のスタート!)

「さっきまでゆとりだデュエルだ言ってたと思ったら、次の瞬間にはポリバレントだのグローバルだの、真逆じゃないか」
「うーん。真逆というのはちょっとわかりませんが」
「何? わからない?」
「……」

(このあと、いよいよ後半戦のキックオフ!)

「なかなか笛は吹かれないな!」
「待つと長いですよね」
「で、またポリバレントだと」
「ポリバレントですか……」
「ポリバレントで突破できんのかよ」
「じゃあ、まあ。お客さん、そろそろ……」
「うん?」
「もう、そろそろ」
「ああ。ごめんなさいね」
「いえ」
「マスター。ここは長いの?」
「まあそこそこ」
「10年くらい?」
「できたのは、ちょうどワールドカップがあった年でしょうか」
「へー。どこの」
「いやー、そこまでは」
「どこが優勝したのかな」
「……」
「そうか。この辺りにどこかゆっくりできるところないかな」
「確かではありませんが」
「はい」
「噂によると、駅裏から少し西に下ったところに姉妹が経営する古風な喫茶店があるとか」
「ふーん。駅の向こうか」
「ええ。まあ、あるらしいとか」

(このあと、いよいよお待ちかねの後半戦がキックオフ!)

「もうええわぁ!」
「……」
「もう、うそじゃないか!」
「はあ」
「何がポリバレントなんだよ。さっきまでお前なんていらないって言ってた奴が、今日になったら、お前は絶対に欠かせないって?」
「まあまあ」
「お前、ふざけんなよ! いったいどっちなんだよ?」
「じゃあ、そろそろ」
「何を信じたらいいんだよ、俺たちは」
「はい」
「国か、チェアマンか、協会か、スポンサーか、サポーターか」
「はい」
「うん? どうなん」
「……」
「俺は言葉だ」
「……」
「俺は言葉の自由を信じる」
「そうですか。お客さん。じゃあ、そろそろ」
「ああ。コーヒーも飲んだしもう行くよ」
「すみませんね。急がせたみたいで」
「いえ、こちらこそ」
「……」
「西だっけ?」
「はい。噂では」
「じゃあ、噂を信じて行ってみるか」
「ありがとうございました」

(このあと、ついに後半戦のキックオフ!)





AIが
時計の針で
したためた
寓話に浮かぶ
さよならの味

折句「江戸仕草」短歌
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンド・フロア

2018-05-21 20:04:15 | 折句の扉
1階はレジとカウンターだけの僅かなイートイン・スペースがある。階段を上がると入り口からは想像できないほどの広がりが待っていた。迷うほど存在するテーブルの中から君は1つを選んで落ち着く。唐突な孤独感。天井が高く、周りには誰もいない。世界が変わった感じがする。突然地球の外に追い出されてしまったような不安を抱く。咎められるべき理由は数え上げればいくらでもあるように思う。不安に打ち勝つために君は折句の扉を開く。不安、孤独、自由。探していたのはこのような場所だったのかもしれない。

感情の
キリマンジャロが
月を切る。

関心が
恐怖に変わる
ツイートを。

カタカナは
気分によって
土を掘る。

足音が階段をゆっくりと上がってくる。誰かが歌の中に入り込んでくる。コツコツコツ……。

「お待たせいたしました」

歌から少し離れたところにカップを置いて店員は帰っていった。天井のあちらこちらに見える巨大な風車が力なく回っている。風は届かない。90年代ロックが流れている。美容院に置いてあるようなおしゃれな雑誌が並べられている。手にする者は誰もいない。

感情に
切れ目を入れた
角を立て。

神様は
聞く耳持たぬ
ツナサンド。

回文に
季節にそった
罪を交ぜ。

「そっちはいけません!」

どこからともなく子供が駆けてきた。子供にいけない場所などないのだ。母親の制止を楽しむかのように広い店内を駆け回ったり、テーブルの上に乗ったりしている。
「そんなことをしたらいけません!」
広いところがうれしいのか歯止めが利かない。勢い余ってテーブルの脚にぶつかって泣き出してしまった。
歌が、かきつばたが、飛んでいってしまう。ただのカフェではない。託児所にもなっている。君は小さかった頃の自分を少し振り返る。母が奇妙な色のセーターを編んでいる。夜になり12月になりおやつになり春になり、いつになっても完成しないセーター。音楽が最初にかえった。90年代ロックは12曲入りのエンドレステープのようだ。

母さんが
きりんを描いた
慎ましい。

母さんが
きりんを描いて
つけ込んだ。

母さんが
気を病みながら
ついた餅。

魚が焼けるような匂いが階段を上がってきた。趣向を凝らしたケーキだろうか。甘くはない新しいケーキだろうか。食べたくない。そんなの食べたくないと君は思う。自分たちの夕食だろうか。この店に住んでいるのだろうか。何時までだろうか。

解散の
きっかけを知る
罪を得て。


「724番の札でお待ちの方。お待たせしました」
君は数字の書かれた紙切れを持って、カウンターに歩いていく。そこはもはやカフェでなくなっている。どこにいるのかはっきりとしない。

「今日はどういったご用件で?」
唐突な声が君を問いつめている。



Xday
恐れおののき
待つよりも
今を歌って
愛するがいい

折句「エオマイア」短歌

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フリースタイル会議

2018-05-21 18:38:48 | 短歌/折句/あいうえお作文
足早な
計算式で
友を立て
浮かぶ記憶は
フリースタイル

折句「揚げ豆腐」短歌
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ラーメン心中

2018-05-21 12:39:05 | 短歌/折句/あいうえお作文
割れ物に
たっぷり満ちた
汁がある
ふー ラーメンが
ねえ うまかっちゃ

折句「渡し舟」短歌
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする