昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが歩いていました。するとおじいさんとおばあさんのすぐ側をあまりにも歳の離れた人間が通りかかりました。子供たちです。おじいさんとおばあさんは、優しく微笑みかけながら、見知らぬ子供たちに声をかけました。
「気をつけてね」
「仲良くね」
「魚に気をつけて」
「元気にね」
「先生にも気をつけて」
「それじゃあね」
おじいさんとおばあさんは、子供たちがもっともっと小さくなるまで立ち止まったまま見送っていました。あんな時代もあったねと遠い昔をみつめているようでもありました。
「おじいさん、山は?」
おばあさんが急に思い出したように言いました。
「今日はええ」
今日は山はお休みです。