柿ピーをもらった蟹が、じゃあ代わりにおにぎりをあげようと言うと猿は、「おにぎりならもう持っているよ」と言って断りました。何が入っているのと蟹が言うと、「何も入ってないよ」と猿は答えて、母猿が握ってくれたおにぎりを蟹にも分け与えると、蟹は大変満足した様子でした。 #twnovel
「おつかれさまでした」(笑顔)こんな時間に? とも思いつつ僕は何気なく彼女とすれ違った。その後で犯人探しが始まったのだった。「誰だ、あの子に土産物をあげたのは?」皆自分ではないと否定した。彼女は、土産物を手にすると即帰宅するという習性を持つ奇特な人らしかった。 #twnovel
「夏」がテーマだった。駅の壁に数十メートルに渡って飾られる作品は、一週間で次の作品群に切替わる。いよいよ今日は僕の絵が……。壁の前に来ると、新しい色と空気が感じられ、胸が高鳴った。けれども、すぐさま切なさに塗り替えられてしまった。テーマは「秋」になったという。 #twnovel
束ねた葱を押さえながら切った。とんとん拍子で抜かりなく切ったつもりが完全に切れていないところがあって、延々と連なる葱続きの大陸からとめどなくペンギンを始め多様な生物が歩いてきた。「私の国には素晴らしい九条葱があったものだ。」ロシアからきたという大統領が言った。 #twnovel
鉄のカーテンに閉ざされた教室で秘密の動画が流されている。漁船または海賊船が突っ込んできて純情な船と衝突する。「ここで見たことは誰にも言わないこと!」スパロウ船長が解放されヒーローインタビューを受けている途中でチャイムが鳴った。カーテンを開けると周囲は海である。 #twnovel
男は何も言わずに、届けた。大阪市の職員ではないようだ。「落ちていたのですか?」男はそれにも答えずに、「ハンカチさえもここでは持っていかれる」とだけ言った。腕時計は6時30分で止まっていて、高価な物かはわからなかったが、僕はAMを想像した。もう朝に近い夜だった。 #twnovel
「粗茶ですが」と先生は茶碗を手渡した。「もぎたての悪魔のような色」みんなで回して飲むというので、みんなで時計回りに回りながら一口飲んでは、次の人に手渡した。回りながらなので零れて床に落ちたり、顔にかかったりした。そうして回り果ててみんなチーズになってしまった。 #twnovel
古くなった言葉は回っていても回っていないように落ち着いて見えてしまうので、今を生きている証のようなものが欲しくなって、後先を考えずに言葉を投げつけると、テーブルの上で閃光のように回り、そのせいで一番古いベイブレードが押し出されてしまった。さよなら、昔の僕たち。 #twnovel