「僕の心は概ね君で満たされたよ」男は契約を迫る。「不完全な愛で私の心を動かすつもり?」女はそれを突き返した。「お父さんの理解を得てるんだよ」勝手な言い分に女は納得がいかない。「理解って何よ?」男は黙って辞書を差し出す。かみ合わない会話から手を引く時の切り札だった。#twnovel
DJ はあらゆる音を持っていて求める相手によって奏で分けることができた。「動くな!」招かざる客がなだれこんできた。「踊る者は許さない!」深夜を過ぎて高速回転中の DJ が「よく足元をごらん!」と叫ぶ。オレンジ色の毛先が、日常に付着した黒い汚れの上を往復運動している。#twnovel
押し黙った朝だった。「雨で挨拶が遅れています」ここからは想像がつかないような、酷い雨なのだろう。どうして待とうかと悩んでいるとすっかり暗くなって、夜になった。挨拶もくたびれた様子でやってくると「おはよう」と言う。「おはよう」と返すと夜は少しだけ明るくなったようだ。#twnovel