卒業式を迎える。ここは毎回しんどいなと思います。生徒は学校を巣立っていきます。当然ですが。私は残される。当たり前の話ですがこれはキツイなと思います。生徒は「変化」のある生活になります。これまでとは全く違う環境で新しい生活を送る。が、私は取り残される。ここに対して寂しいとかではないのですが辛いなという部分があります。他の人がどう感じるのかは分かりませんが。
とはいえ、この2年間この子達が少しでも楽しめるようにしたいという想いが強くありました。周りに何と言われようとです。どうせ普段から好き勝手にやっていると思われているのだからこれからもやろう。卒業式の日に泣きながら終わるというのは面白くない。どうせ楽しませるなら最後まで楽しませて終わりたいなという気持ちが強くありました。何となく「高校最後の日」というだけではなくて。最後の日、楽しかったよねって思ってもらえる。記憶に残る事がしたいなと。
ということで久しぶりに動画を作ろうかなと。手の込んだことをするのは時間的にしんどい部分もあります。よく考えたら「素材」がないというのもあります。生徒からもらうことにしましたがこの手のフットワークが重い。素材が集まらないので作成するのに時間がかかります。本当に1ヶ月くらいかかったでしょうか。やっていくうちに写真や動画の素材がないので追加で連絡して集める。作成するとこだわりも出てくるので何度も作り直すことに。トータルで50時間は使ったのではないかなと思います。これはこれで思い出に浸れるので楽しい時間ですが。
合間に自分で録音したり教室の写真を撮影に行きました。やはり誰もいない教室は寂しい。
2月29日。この日は卒業式前の最後の登校。午後まであれこれやる事がありました。この前の登校日に「みんなで食べる最後の昼食になる」という申し出がありました。で、どうしたいのかと聞くと「みんなでピザ🍕を食べたい」と言い出す。もうめちゃくちゃです。まー楽しいんでしょう。ピザ高いやろうって話をしたのですが「持ち帰りにしたら半額になる」と。この子達はこういう情報に詳しい。「先生、取りに行って欲しい」と無茶苦茶なことを言い出す。いや、私もあなた達と一緒に体育館に居ないとまずいよね?みたいな話です。
こうなったら別の人に頼んで取りに行ってもらうしかない。副担任にお願いしました。この子達には事あるごとに言っていますが「やりたい」と思う事が全てでからわけではない。「やりたい」に対しては多くの人の助けが必要になるのです。今回はこれも伝えられることかなと思っていました。「ピザが食べたい」というだけではなくそこの裏側に何があるのか。自分達が楽しむためには多くの人の力があってできている。感謝の気持ちを持ちなさいという話をするだけではなく「やりたいこと」をするためには何が必要なのかを考えないといけない、感じ取れないといけない。その機会だと思っていました。
多分周りからすれば「何をやっているんだ」と言われるでしょう。常識的にみたら「普通やらないだろう」と言われる可能性は高い。でも「常識」ってなんだろうか。これまでの流れから世の中は変わってきている。それなのにがんじがらめの中で子供達を縛り付けるって面白くない。もちろんそれが人として許されることかどうかというのは大きいと思います。
最後だからみんなで思い出に残る食事がしたい。バラバラだったクラスの子達が一つの方向に向かうのであればそれは「教育活動」として意味があるんじゃないかなと。私自身が「枠の中」で何かをするというのが全てだと思っていません。小さな枠の中で何かをすることでは学べない部分がある。だから授業でも外に出て何かをさせるという経験をさせる。「教育活動」っていう偉そうな話ではなく。他の人に迷惑をかけるのでなければ問題はないのではないか。クラスのみんなが同じ空間でピザ🍕を食べる。家ではなく教室で。それは何年後かに「そういえば卒業式の前の日に教室でピザ食べたよね」って話せる。それがすごく大切なんじゃないかなと。
29日。ある生徒に「てるてる坊主」を作って欲しいと頼んでいました。クラス全員で。3月1日にどうしてもやりたい事がありました。それには雨が降ってしまったらできないからです。本来であれば29日はありません。この日は朝から雨が降っていました。うるう年だから晴れるかもしれないというチャンスを与えてもらったのです。だからどうしても晴れて欲しい。半強制的なところもありましたが全員で作りました。
更にどうしても見せたいYouTubeがあったので。全員で見ることに。これは夕張高校の昨年度の卒業式の時の様子です。PTA会長の挨拶。調べたら出てくると思います。この子達に伝えたいなと想うメッセージが詰め込まれているから。正直伝わるかなという不安もありました。しかし、生徒は一言も話さずに見入っていました。何人かは既に涙を流していました。別に泣かそうと思っていたわけではありません。今だからこそ伝えられるメッセージがあると思っています。
更に昨年副担任をしてくださっていた先生を教室に呼んでいました。退職されていますがぜひ来てほしいとお願いして。この子達の成長を見てほしいなという気持ちもありました。この子達を支えてくださった先生の話をきちんと聞くことも必要かなと。情報はネットでいくらでも手に入ります。そこにも大切な話はあります。が、やはり直接生の言葉を聞くというのは今しかできないかなと。
貴重な時間でした。私はこの子達のために何ができるかがすごく大切だと思っています。私が主役ではない。この子達が何を感じて何をしていくのか。そこがあればきっと生きていける。そう思ってやっています。
また書きます。