昨日は北海道と関東で地震があった。特に北海道では震度5弱だ。幸い大きな被害はなかったが、本当に「忘れた頃」に起きるから怖い。
大きな地震がある度に気になるのが、原発などの施設のことだ。本当に大丈夫なのか、という素朴な疑問が常にある。
昨年、新井克昌さんが書いた小説『日本列島放棄』(文藝春秋企画出版部)は、まさにそこをテーマとしていて興味深く読んだ。
この本をひと言でいえば、起きてはならないが「十分に起こり得る危機」を描いた、迫真のシミュレーション小説。我らが“地震列島”の抱える危うさを見事に物語化している。
200X年8月、連続して巨大地震が発生。最初は宮城沖で震度6強、マグニチュードは8・7だ。東北地方は大被害を受けるが、さらにその沿岸部を大津波が襲う。
牡鹿半島で養護施設を運営する伊澤一哉も何とか非難した。だが、女川原発で働く親友・木原の安否が気にかかり、単独で施設に潜入。
そこでは崩壊した装置から放射能が漏れており、木原の遺体を見つけた一哉も被曝してしまう。
5日後、今度は東南海や東海でも巨大地震が起きた。地震の被害はもちろん、浜岡・川内・美浜・敦賀の4原発でも放射能漏れが発生する。
折りからの超大型台風によって放射能による汚染地域は拡大する一方だ。全体の犠牲者も159万人に達した。
やがて、政府はこの国を「定住不可」と判断。北海道と沖縄の住民を除く9千5百万人を64の国と地域へと脱出させる計画を実施する。それはまさに国土を放棄することだった。
被曝以来、体の変調を自覚する一哉は、自らの命と祖国の両方を失う恐怖に直面する・・。
この小説で描かれる、地震による「原発の放射能漏れ」と、「台風による放射能の拡散」というダブルパンチが、あり得ないことではないところに怖さがある。
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現在の日本は、地震も台風もお構いなしの「総裁選祭り」の真っ最中だ。
これだけ「自民党が望むシナリオ」が明白であるにも関わらず、テレビや新聞、特にテレビがまんま”乗っかる”状態で、5人の候補者を連日画面に登場させている。
こうなると、視聴者は、いつの間にか”自分自身で”この国の首相を選んでいるような”気分”になってくる。しかし、実際はそうではないのだ。
まだ10日ほども、この「お祭り騒ぎ」が続く。どんな報道が為されていくのか、きっちり見ておきたい。