碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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当たり前のニュースは本当に当たり前か

2008年09月14日 | 本・新聞・雑誌・活字

『五衰の人~三島由紀夫私記』(新潮社)などの著作で知られる徳岡孝夫さんは、元毎日新聞編集委員。78歳になる現在も、エッセイや評論で健筆をふるっていらっしゃる。
 
新著『ニュース一人旅』(清流出版)は、この10年間に伝えられた106のニュースをめぐる時事エッセイ集だ。

当たり前のように送り出され、当たり前のように受け取っていたニュースが、徳岡さんの手にかかると、まったく別の側面が見えてくるから面白い。

たとえば、少年による凶悪犯罪の報道に接して、「条件反射みたいに人権!と叫んで犯人を守るのは、おかしいじゃないか」と指摘する。

また、北朝鮮が予告もなく日本海にミサイルを撃ち込んだときは、「日本人はなぜ怒らないんだ」と憤る。

さらに、中国製殺虫剤入りジョーザの問題でも、何が起きても謝らない国との「対等でない友好」に再考を迫っている。

そして、徳岡さんが特に心配しているのが教育問題だ。小学生に対する中途半端な英語教育を止めて、国語の基盤を作れと説く。

提言は小学校高学年に『平家物語』を読ませること。そこには日本人の知と情と意の基礎があるからだという。

いずれの文章にも、半世紀にもおよぶジャーナリスト体験の蓄積が生かされており、読むうちに、ニュースを多面的・多角的に見られるようになる。

現在も、自民党総裁選はもちろん、厚生年金改ざん、事故米の転売問題など、徳岡さんの「見方」をうかがってみたいことが山積みだ。

ニュース一人旅
徳岡 孝夫
清流出版

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