碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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さらば!『波瀾万丈』、『ブロキャス』、そして『ウルルン』

2008年09月22日 | テレビ・ラジオ・メディア
昨日(21日)、いつものように日本テレビ『いつみても波瀾万丈』を見てみたら、来週の最終回に向けての「総集編」だった。

放送開始が92年3月だから、足掛け16年の長寿番組だ。初代の司会者は逸見政孝さんだったが、翌93年にガンの宣告を受け、番組を降板。闘病生活を経て、その年の12月に亡くなった。

逸見さんとは特番の約束があったため、あの記者会見に来るよう事務所から連絡があった。まさか「私はガンです」という言葉を聞く会見になるとは、思ってもみなかった。一緒にやるはずだった仕事について、逸見さんは「私も残念です。ごめんなさいね」とおっしゃっていたのが忘れられない。

そんな思い出のある『いつみても波瀾万丈』も、ついに終わってしまう。日曜の午前中、家にいる限りは、ほとんど見ていた番組であり、一人の視聴者として寂しい。

その前夜、20日(土)の夜には、TBS『ブロードキャスター』が最終回を迎えていた。

福留さんとのお付き合いも長いが、歴代のスタッフには知り合いも複数いて、スタジオに行ったこともあるし、親近感のある番組だ。やはり、土曜の夜、あの時間帯に自宅にいる場合は、チャンネルを合わせていた。

こちらの放送開始は91年4月。実に17年間続いたことになる。どんな番組も簡単に打ち切られたり、消えたりするこの世界で、よくぞ頑張ったと思う。

そうそう、先週の日曜(14日)には、『世界ウルルン滞在記』も終了したのだった。これも長寿番組といっていい。13年の歴史がある。

ここ1、2年は、視聴率対策だったのか、スタジオの出演者が変わったり、タイトルが「世界ウルルン滞在記ルネサンス」や「ウルルン2008」になったりした。しかし、「タレントさんが海外でホームステイする」というコンセプトは変わらないまま、ずっとやってきた。

『いつみても波瀾万丈』、『ブロードキャスター』、そして『世界ウルルン滞在記』。マンネリといわば、言え。そのマンネリこそが貴重だったことが、無くなってみると、よく分かるはずだ。遅いけど。

これらの番組は、終了することなく、流され続けているいくつかの、いや、多くの番組と比較して、素直に「いい番組」「良心的番組」だと言える内容だった。

また、これも大事な点だが、「変わらないものが、そこにあること」の安心感と一種の癒しを、見る側に与えてくれていた。

終了するからには、終了させる側にとっての、終了させるだけの理由はあるはずだ。しかし、視聴率や制作費の問題を超えて、これらの番組が持っていた「価値」はあったと思う。それは各局にとっての価値だけでなく、テレビというメディアにとっても大切な価値だったのだ。

よく、お年寄りが嘆く。年をとることの寂しさは、親兄弟にはじまり、知人・友人など、自分が知っている人、自分を知っている人が、どんどん少なくなっていくことだ、と。

今年の秋は、それに似た寂しさを、テレビから感じる秋になったようだ。

3つの番組の関係者の皆さんに、「お疲れさまでした」と「ありがとう」を言いたい。