碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

倉本聰さん曰く「テレビは“劣化のスパイラル”」

2010年01月05日 | テレビ・ラジオ・メディア

今日の『産経新聞』に、脚本家・倉本聰さんのインタビューが載っていた。

記事のタイトルは「話の肖像画 臨界の日本(上)」。

長年続けてきた富良野塾を閉じるに当たって、ということだが、現代の若者たちに対する感想はかなり苦いものだ。

そして、テレビについて問われると、次のような言葉を返している。

――(記者)最近のテレビをどう見ていますか。バラエティー、お笑い番組全盛で、いつも同じ顔ぶればかり…

倉本:全く同感ですね。こうした番組は「数字(視聴率)が取れるから」というけど、視聴率調査はそもそもCMがどれぐらい見られているか、の調査ですよ。つまり「経済ベース」でモノを見ている。本当にどんな番組が見られているのかを調べるなら国(総務省)が主導して録画率まで調べるべきでしょう。

――ドラマはどうですか

倉本:まったく見ませんね(苦笑)。見ると、どうしても批評家になっちゃうんですよ。「こうすりゃいいのに」ってね。テレビも視聴率(つまり経済本位)ばかりに目が行って“劣化のスパイラル”に陥っている気がします。こっちも視聴者の方が、ずっと先を行ってますよ。
(産経新聞 2010年1月5日)


うーん。辛いことだが、倉本さんの指摘は的を射ているのだ。

草創期からテレビと関わってきた脚本家の、この深い絶望感のようなものに、今、テレビはどう応えられるだろう。

2010年のテレビ界を展望

2010年01月05日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』での連載コラム「テレビとはナンだ!」。

今年最初の原稿は、2010年を展望する形で書かせていただいた。


見出し:

民放が貧すれば鈍するにならないことを祈りたい

コラム本文:

昨年、テレビ界の“流行語大賞”は「予算削減」だった。

今年も引き続きこの路線が進むはずだ。

何しろ好景気は望めないし、たとえ多少景気がよくなっても視聴者側での「テレビの優先順位落ち」は回復が難しい。

スポンサー側もその辺りは承知していてテレビ広告を控える。

するとまた予算削減→質の低下→視聴者のテレビ離れ→スポンサー離れと“負のスパイラル”が加速するのだ。

一方、昨年元気だったNHK。

不況でも受信料は入ってくるから今年は民放との差がより開く。

「坂の上の雲」など超大作はもちろん、昨年の「ブラタモリ」や「ワンダー×ワンダー」のようなエッヂの効いた娯楽番組を繰り出してくるだろう。

ならば民放はどうするか。

まず、これまで以上に知恵をつかう。

昨年のテレビ東京「空から日本を見てみよう」がいい例だ。

さらに少ない予算を有効に生かすこと。

自社の利益を減らしてでも、予算を制作会社に回し、番組の“中身”にお金をかけるのだ。

それでこそ“現場”も頑張れる。

昨年11月、放送倫理・番組向上機構(BPO)がバラエティ番組に対する異例の意見書を出した。

「バンキシャ!」など報道系の次は、バラエティで問題が起きそうだとの予感があったからだ。

民放が「貧すれば鈍する」に陥らぬ1年であることを祈りたい。
(日刊ゲンダイ 2010年1月5日付)