碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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テレ朝版「華麗なる一族」は見どころ満載

2010年01月26日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』の連載コラム「テレビとはナンだ!」。

今週は、テレビ朝日の連ドラ「宿命」(金曜夜9時)について書いた。

原作は、楡周平さんの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京」だが、小説を読んでイメージした登場人物たちから、見事にジャンプしたナイスなキャスト(笑)に特徴がある。


見出し:

テレ朝版「華麗なる一族」は見どころ満載

コラム本文:

ドラマ「宿命 1969-2010~ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京」(テレビ朝日)。

長いタイトルだ。 

69年の「東大安田講堂」以来、別々の道を歩いてきた男女が再会する。

30年の歳月は一人を大病院の経営者に、もう一人を与党の大物政治家にしていた。しかも互いの息子と娘が政略結婚だ。

というわけで、テレ朝版「華麗なる一族」である。

しかし、TBSのそれとは雰囲気が違う。話の筋もさることながら、キャスティングが大きい。

男は奥田瑛二で、妻が松坂慶子。女は真野響子で、息子が北村一輝。北村に捨てられる恋人は小池栄子である。全体に、華麗というより泥臭い。

いや、その泥臭さがいいのだ。

中でも北村一輝の“怪優”ぶりが際立っている。

「政治家を目指すエリート官僚」には絶対見えないところが面白い。いつ豹変してくれるのか、目が離せないではないか。

小池栄子もまた「敏腕トレーダー」とはびっくりだが、北村に裏切られて復讐を始めた途端、生き生きしてきた。映画「20世紀少年」で見せてくれた狂気に期待しよう。

つまり、このドラマの第一の見どころは“意外な配役”にある。

二番目がゴールデンタイムであることを忘れさせる“昼ドラ”的テイストだ。

団塊世代の闘争体験も、その後の処世もヘンに美化したりせず、“どろどろ”感で押して頂きたい。
(日刊ゲンダイ 2010.01.26付)