『日刊ゲンダイ』の連載コラム「テレビとはナンだ!」。
今週は、テレビ朝日の連ドラ「宿命」(金曜夜9時)について書いた。
原作は、楡周平さんの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京」だが、小説を読んでイメージした登場人物たちから、見事にジャンプしたナイスなキャスト(笑)に特徴がある。
見出し:
テレ朝版「華麗なる一族」は見どころ満載
コラム本文:
ドラマ「宿命 1969-2010~ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京」(テレビ朝日)。
長いタイトルだ。
69年の「東大安田講堂」以来、別々の道を歩いてきた男女が再会する。
30年の歳月は一人を大病院の経営者に、もう一人を与党の大物政治家にしていた。しかも互いの息子と娘が政略結婚だ。
というわけで、テレ朝版「華麗なる一族」である。
しかし、TBSのそれとは雰囲気が違う。話の筋もさることながら、キャスティングが大きい。
男は奥田瑛二で、妻が松坂慶子。女は真野響子で、息子が北村一輝。北村に捨てられる恋人は小池栄子である。全体に、華麗というより泥臭い。
いや、その泥臭さがいいのだ。
中でも北村一輝の“怪優”ぶりが際立っている。
「政治家を目指すエリート官僚」には絶対見えないところが面白い。いつ豹変してくれるのか、目が離せないではないか。
小池栄子もまた「敏腕トレーダー」とはびっくりだが、北村に裏切られて復讐を始めた途端、生き生きしてきた。映画「20世紀少年」で見せてくれた狂気に期待しよう。
つまり、このドラマの第一の見どころは“意外な配役”にある。
二番目がゴールデンタイムであることを忘れさせる“昼ドラ”的テイストだ。
団塊世代の闘争体験も、その後の処世もヘンに美化したりせず、“どろどろ”感で押して頂きたい。
(日刊ゲンダイ 2010.01.26付)