昨年の秋から刊行が始まった『大系 黒澤明』(講談社)。
黒澤監督の「全著述・全発言を集大成」というフレコミに嘘はない。
雑誌に載った小さな文章や、埋もれていた座談会もしっかり収められているし、初めて見る写真も満載だ。
編・解説の浜野保樹さん(東大教授)の労作である。
ようやく、その第2巻を入手した。
このシリーズは時間順で構成されているが、今回は1952年から73年。
「東宝への復帰」から「時代劇三部作」を経て「黒澤プロダクション」へと、ダイナミックな時代に当たる。
嬉しいのは、この時期に生み出されたのが『七人の侍』『用心棒』『天国と地獄』などで、私の好きな作品が多いことだ。
11両編成の「特急こだま」を借り切って行われた『天国と地獄』の撮影裏話は、読んでいてもわくわくする。
また、撮った作品だけでなく、実現しなかった企画や作品に関する文章や発言を読めるのも有難い。
たとえば、1964年に開催された「東京オリンピック」の記録映画についてなど、とても興味深かった。
黒澤側が提示した予算と、組織委員会のそれとが大きく食い違い、結局、この仕事から降りてしまうのだ。
代わりに撮ったのが、市川崑監督だった。
そういえば、黒澤さんは『トラ・トラ・トラ!』も降りたが、その辺りの文章も出てくる。
ともあれ、残りは3巻と4巻。
楽しみにしています。