碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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“踏ん張りどころ”のドラマ『秘密』(テレビ朝日)

2010年11月16日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中のコラム「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分は、テレビ朝日『秘密』について書いた。

ご存知、東野圭吾のベストセラー小説のドラマ化である。


見出し:

志田未来の「秘密」に2つの不満あり

コラム本文:

テレビ朝日の連続ドラマ「秘密」に期待していた。

何しろ主演が芸達者の志田未来である。

事故で亡くなった母・直子(石田ひかり)の意識を持つ、16歳の娘・藻奈美をどう演じるかが楽しみだった。 

期待は半分、達成されている。

見た目は女子高生でありながら、同級生や教師(本仮屋ユイカ)にとっては、まるで大人の女性のように思える奇妙な存在感がよく出ている。

ドラマ全体としても、必死で藻奈美として生きようとする直子の苦悩や、直子の夫であり藻奈美の父である平介(佐々木蔵之介)の混乱する様子が丁寧に描かれていて好感がもてる。

また、直子が死亡したバス事故の運転手一家の見せ方も手を抜いていない。

それでも視聴者にとっては2つの不満が残る。

ひとつは、とにかく物語の進行がスローモーなこと。

広末涼子が藻奈美を演じた映画版の長さは約2時間。

映像化するならそれくらいで十分なストーリーを、無理に連ドラ化しているから、間延び感は否めず、飽きてくるのだ。

もうひとつは時代性の欠如である。

原作は1998年の出版だが、ドラマは2007年の設定で始まり、現在は08年の話だ。

しかし、時代背景の描写はほとんどない。

さらに2010年の今、このドラマを視聴者が見せられている意味もよく分からないままだ。

健闘する志田未来のためにも、ぜひ後半で巻き返して欲しい。

(日刊ゲンダイ 2010.11.16付)