碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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『料理の怪人』の内容と視聴率にびっくり

2010年11月30日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中のコラム「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分では、テレビ東京『料理の怪人』を取り上げました。

自動的に『料理の鉄人』(フジ)を思い浮かべるタイトルですが、その中身は相当違います(笑)。


見出し:

変則技を披露する「料理の怪人」は
内容も視聴率もお粗末


コラム本文:

料理バラエティ番組は、これまで料理人に様々な呼称を与えてきた。

名人、達人、鉄人、神様、マエストロ等々。

しかし、さすがに“怪人”はいかがなものか。

怪人の作った料理を食べたいと思う人は少ないはずだ。

先週、テレビ東京「料理の怪人」は、プライム枠で2.9%という驚異的な低視聴率を叩き出した。

登場した「バブリーな明石焼」は、泡だてた卵白に卵黄とタコとはんぺんを混ぜ合わせた珍品。

普通サイズ20個分のボリュームは笑えるが、これで「巨大な泡の蛸怪人」などと言われても困る。

また、「回転アツアツ夫婦怪人」の店主夫妻は塩ラーメンを専門とする。

しかし、ラーメン自体には特徴がない。

で、その実体とは、夫が派手な湯切りをする際、妻は熱湯を浴びないようクラシックバレーもどきのターンで逃げ回るというもの。

さらに「劇場型やきとり怪人」なる焼鳥屋も出てきたが、これは主人の作業が全部の客から見える構造の店をつくったに過ぎない。

結局、いずれも料理の変則技やサイドストーリーであって、料理の本質とは無関係だ。

唯一感心したのは、「撹拌のどごし怪人」として紹介された豆腐屋さん。

香り・のどごし・滑らかさへのこだわりは、怪しいどころか、ごく真っ当な職人技なのだ。

無理筋の“怪人”より、当たり前のことを当たり前以上に大切にする料理人と、その料理こそが見たい。

(日刊ゲンダイ 2010.11.30付)