遊びをせんとや

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安土桃山時代の美術はエキサイティング ~ひらがな日本美術史3 橋本治~

2021-08-17 05:45:28 | ブックリスト


この夏の課題図書は橋本治著「ひらがな日本美術史」である。

まず、この本にたどり着いたのは、NHK「本の道しるべ」だったか、「趣味どき!」だったかどちらかでライター・エディターの橋本麻里さんがまるで本棚だらけの自宅でこの本を紹介されたからだ。

 



話は逸れるが、この橋本麻里様、御年49歳。どこかの大学で日本美術史を教えてはるし、高校美術教科書の執筆者であり
どこかの博物館の副館長でもある。和菓子の研究者でもある。
ネット検索してたらなんと、高橋源一郎さんのお嬢さん。
またまた、話は逸れるが高橋源一郎さんと言えば4回離婚して5回結婚した方。ちなみに室井佑月さんは3番目の奥さん。

話を戻して、この時、この本のどこを紹介したかは今では覚えてないが、すぐにネットでポチリました。
本当は7巻あって全部欲しかったのだが、最後に重版がかかったのが2014年なので新品は少ない。
定価で3400円くらいするから、文庫と言ってもあーた。でも中身には解説のための図録写真も多数掲載されていて、半分日本美術全集みたいで私はお得だと思うのだけれど。これ新潮社の文庫となっているがB5版暑さ2㎝足らずくらいでめっぽう重い。
しかるに寝ながら読めない。読むけど。

1,4,5巻は古書的価値が付加されていて3倍近くの値段になっていたのであきらめた。

と、いうことで、一応手に入った2巻から読み始めた。

で、そこで3巻。これがすごい。

いよいよ、室町から戦国時代に突入して安土桃山がすんごく面白い。
室町~江戸の初期を指す。

狩野永徳と長谷川等伯の屏風絵のパートの部分もエキサイティングだったが、
なんてったって六曲一双の「豊国神社祭礼図屏風」伝岩佐又兵衛である。


この人はかの荒木村重の子どもである。
この荒木村重、無茶苦茶な人である。織田信長に仕えていたが、謀反を企て、有岡城に立てこもり説得に来た黒田官兵衛を
石牢に1年間閉じ込め、戦が不利となるや家来を捨てて、お茶碗なんかの道具を持って一人で息子のとこへ行ってしまう。
挙句の果てに毛利に亡命し、尾道あたりで姿を隠し、信長が本能寺の変で亡くなって秀吉の時代になると茶人として復活する。
なんて身勝手。

信長の事だから荒木一族は女子供も有岡城で処刑されたが、その時に乳母の機転で助かった当時2歳だった岩佐又兵衛である。
長じてそら普通の人にはならないわな。

この豊国神社祭礼図屏風には優に1000人を超える人物がつぶさにしっかり描かれている。全ての人間にストーリーが感じられるような
しつこさだそうだ。

でも全体のバランスを考えて冷静にレイアウトしてデザインしているところが凄いと書いてあった。
これだけ熱狂している祭りをよく細部まで覚えていることも凄いと。

私は又兵衛の人物の顔の表現が凄く好き。それぞれに性格やその時のセリフなんかも考えながら描いてたんだろうな。
人間くさい。絵巻物からの漫画の源流を感じる。

特に猿楽四座が揃って翁の能を奉納している場面は橋本さん曰く宝塚のトップスター4人が競演しているみたいなもんだそうだ。

そのほかにも茶道の道具についての橋本治論が展開されていて、

野々村仁静の例の壺が本阿弥光悦の「白楽茶碗 不二山」よりわかりやすい美だというのが驚きだった。
そうか圧倒的にそう思う人の方が多いんだ。

この本の後半に掛けて、めちゃくちゃ面白かった。
日本の上流階級の家屋の変遷。
女の人の衣服や髪型の変遷。着物の柄の変遷。

そして前から不思議な絵だなと思っていた。彦根屏風の謎


橋本流の独断でそれでも理論的に感性を交えて語られているのは痛快。
残念ながら、江戸初期、中期の4,5はないけど北斎などが取り上げられている6を楽しみに読みます。