揺らぐ地域スポーツ① 指定管理者制度 見えない施設の実態
日本の地域スポーツの基盤が揺らいでいます。そこにどんな問題があるのか、いま何が求められているのか。現状と背景、望まれるあり方を探ります。
6年前に完成した東京都文京区の総合体育館。まだ新しい施設ながら、プールにはカビやさびが発生し、利用者から苦情が寄せられました。
10年前から同区のスポーツ施設は、区内に本社がある東京ドームグループ(東京D、14年度からミズノとの共同事業体)が管理運営しています。
民間事業者に公共施設の管理を委ねる指定管理者制度によるものです。同制度は国の行政改革の方針「民間でできることは民間に委ねる」に基づき、2003年から導入されました。
区は約1千万円かけ排気口を設置する対策を補正予算で提案しました。しかし、原因不明のまま工事するのは解決にならないと議会は予算化を否決。結局、清掃を徹底することで一定の改善が図られました。とはいえ、東京Dがどんな管理をしていたのか分からないため、いまだに原因は解明できていません。
指定管理の期間は5年。区はその間、実績を項目ごとに得点化し評価します。それでも、日常的に施設をチェックしているわけではないので問題が起きた時の対応は難しい。
「施設管理の実態が議会から見えなくなってしまっている」。日本共産党のまんだち幹夫区議は制度の問題点を指摘します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/d2/d56c3a4150f1f3c36fd03ac505f56ba6.jpg)
プールにカビやさびが発生した文京総合体育館=東京都文京区
不透明な経費
不透明な経費も分かってきました。昨年、日本共産党などの追及で事務費約3500万円の内訳として「本社経費」約2千万円(17年度決算)の存在が明らかになりました。すると東京Dは、初めて他社との竸合になった来年度以降の指定管理者の募集で本社経費をゼロにする提案をしてきたのです。「区に貢献するため、そこは本社で一括して負担します」というのが理由です。
「では、今までは何だったんだ。そもそも必要なものなのか」とまんだち区議は憤ります。
各地で事故も
指定管理者制度は各地でスポーツ施設の事故も招いています。体育館の床板が剥離してけがをする事故は、制度導入後から目立ち始め10年間で7件が報告されています。
「あれはワックスのかけすぎが原因」。そう指摘するのは都のスポーツ施設管理に携わってきた国士舘大学客員教授の鈴木知幸さんです。スポーツ施設の管理は専門性が必要です。しかし、指定管理者になって施設や器具の手入れや扱いなどの知識を持つ職員が現場からいなくなっています。それが事故につながっているというのです。
文部科学省は床板事故の再発防止で通達を出しましたが、現場の実態を知る鈴木さんは、「通達は現場に伝達されていない」と言い切ります。制度の変わり目で、行政と施設を管理する現場とのずれが生じているのです。
文京区のまんだち区議は言います。「指定管理者になって常にいろんな問題が出てくる。公共施設のあり方を含めて検証Mすべきです」皿(青山俊明)
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年3月29日付掲載
「民間にできることは民間に委ねる」と導入された指定管理者制度。効率優先とは言え、住民サービスをするのに自治体の職員が関わらなくなっていいものか、問われます。
日本の地域スポーツの基盤が揺らいでいます。そこにどんな問題があるのか、いま何が求められているのか。現状と背景、望まれるあり方を探ります。
6年前に完成した東京都文京区の総合体育館。まだ新しい施設ながら、プールにはカビやさびが発生し、利用者から苦情が寄せられました。
10年前から同区のスポーツ施設は、区内に本社がある東京ドームグループ(東京D、14年度からミズノとの共同事業体)が管理運営しています。
民間事業者に公共施設の管理を委ねる指定管理者制度によるものです。同制度は国の行政改革の方針「民間でできることは民間に委ねる」に基づき、2003年から導入されました。
区は約1千万円かけ排気口を設置する対策を補正予算で提案しました。しかし、原因不明のまま工事するのは解決にならないと議会は予算化を否決。結局、清掃を徹底することで一定の改善が図られました。とはいえ、東京Dがどんな管理をしていたのか分からないため、いまだに原因は解明できていません。
指定管理の期間は5年。区はその間、実績を項目ごとに得点化し評価します。それでも、日常的に施設をチェックしているわけではないので問題が起きた時の対応は難しい。
「施設管理の実態が議会から見えなくなってしまっている」。日本共産党のまんだち幹夫区議は制度の問題点を指摘します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/d2/d56c3a4150f1f3c36fd03ac505f56ba6.jpg)
プールにカビやさびが発生した文京総合体育館=東京都文京区
不透明な経費
不透明な経費も分かってきました。昨年、日本共産党などの追及で事務費約3500万円の内訳として「本社経費」約2千万円(17年度決算)の存在が明らかになりました。すると東京Dは、初めて他社との竸合になった来年度以降の指定管理者の募集で本社経費をゼロにする提案をしてきたのです。「区に貢献するため、そこは本社で一括して負担します」というのが理由です。
「では、今までは何だったんだ。そもそも必要なものなのか」とまんだち区議は憤ります。
各地で事故も
指定管理者制度は各地でスポーツ施設の事故も招いています。体育館の床板が剥離してけがをする事故は、制度導入後から目立ち始め10年間で7件が報告されています。
「あれはワックスのかけすぎが原因」。そう指摘するのは都のスポーツ施設管理に携わってきた国士舘大学客員教授の鈴木知幸さんです。スポーツ施設の管理は専門性が必要です。しかし、指定管理者になって施設や器具の手入れや扱いなどの知識を持つ職員が現場からいなくなっています。それが事故につながっているというのです。
文部科学省は床板事故の再発防止で通達を出しましたが、現場の実態を知る鈴木さんは、「通達は現場に伝達されていない」と言い切ります。制度の変わり目で、行政と施設を管理する現場とのずれが生じているのです。
文京区のまんだち区議は言います。「指定管理者になって常にいろんな問題が出てくる。公共施設のあり方を含めて検証Mすべきです」皿(青山俊明)
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年3月29日付掲載
「民間にできることは民間に委ねる」と導入された指定管理者制度。効率優先とは言え、住民サービスをするのに自治体の職員が関わらなくなっていいものか、問われます。