きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

揺らぐ地域スポーツ① 指定管理者制度 見えない施設の実態

2019-04-12 12:54:32 | スポーツ・運動について
揺らぐ地域スポーツ① 指定管理者制度 見えない施設の実態
日本の地域スポーツの基盤が揺らいでいます。そこにどんな問題があるのか、いま何が求められているのか。現状と背景、望まれるあり方を探ります。

6年前に完成した東京都文京区の総合体育館。まだ新しい施設ながら、プールにはカビやさびが発生し、利用者から苦情が寄せられました。
10年前から同区のスポーツ施設は、区内に本社がある東京ドームグループ(東京D、14年度からミズノとの共同事業体)が管理運営しています。
民間事業者に公共施設の管理を委ねる指定管理者制度によるものです。同制度は国の行政改革の方針「民間でできることは民間に委ねる」に基づき、2003年から導入されました。
区は約1千万円かけ排気口を設置する対策を補正予算で提案しました。しかし、原因不明のまま工事するのは解決にならないと議会は予算化を否決。結局、清掃を徹底することで一定の改善が図られました。とはいえ、東京Dがどんな管理をしていたのか分からないため、いまだに原因は解明できていません。
指定管理の期間は5年。区はその間、実績を項目ごとに得点化し評価します。それでも、日常的に施設をチェックしているわけではないので問題が起きた時の対応は難しい。
「施設管理の実態が議会から見えなくなってしまっている」。日本共産党のまんだち幹夫区議は制度の問題点を指摘します。



プールにカビやさびが発生した文京総合体育館=東京都文京区

不透明な経費
不透明な経費も分かってきました。昨年、日本共産党などの追及で事務費約3500万円の内訳として「本社経費」約2千万円(17年度決算)の存在が明らかになりました。すると東京Dは、初めて他社との竸合になった来年度以降の指定管理者の募集で本社経費をゼロにする提案をしてきたのです。「区に貢献するため、そこは本社で一括して負担します」というのが理由です。
「では、今までは何だったんだ。そもそも必要なものなのか」とまんだち区議は憤ります。

各地で事故も
指定管理者制度は各地でスポーツ施設の事故も招いています。体育館の床板が剥離してけがをする事故は、制度導入後から目立ち始め10年間で7件が報告されています。
「あれはワックスのかけすぎが原因」。そう指摘するのは都のスポーツ施設管理に携わってきた国士舘大学客員教授の鈴木知幸さんです。スポーツ施設の管理は専門性が必要です。しかし、指定管理者になって施設や器具の手入れや扱いなどの知識を持つ職員が現場からいなくなっています。それが事故につながっているというのです。
文部科学省は床板事故の再発防止で通達を出しましたが、現場の実態を知る鈴木さんは、「通達は現場に伝達されていない」と言い切ります。制度の変わり目で、行政と施設を管理する現場とのずれが生じているのです。
文京区のまんだち区議は言います。「指定管理者になって常にいろんな問題が出てくる。公共施設のあり方を含めて検証Mすべきです」皿(青山俊明)
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年3月29日付掲載


「民間にできることは民間に委ねる」と導入された指定管理者制度。効率優先とは言え、住民サービスをするのに自治体の職員が関わらなくなっていいものか、問われます。

スポーツ界の今を考える 改革の道のり④ 指導者育成し暴力断て

2018-11-24 20:27:00 | スポーツ・運動について
スポーツ界の今を考える 改革の道のり④ 指導者育成し暴力断て
スポーツ問題研究会代表 辻口信良弁護士

つじぐち・のぶよし=1947年、石川県生まれ。関西大学法学部卒。弁護士。日本スポーツ法学会理事、スポーツ問題研究会代表などを務める。龍谷大学、関西大学講師。日本初のスポーツ選手代理人(プロ野球・ヤクルトの古田敦也選手、92年)。著書に『“平和学”としてのスポーツ法入門』(民事法研究会)など

スポーツ界の暴力やパワハラが社会問題として大きく取り上げられています。さまざまな団体が対策を打ち出しているものの、現場の指導者一人一人にまで浸透しているとは言えず、「上滑り」になっていると思わざるを得ません。
2013年、大阪市立高校バスケットボール部の男子生徒が顧問教諭の体罰に耐えかねて自殺するという痛ましい事件が明らかになりました。同年、柔道女子ナショナルチームの15選手が監督らの暴力を告発しました。ぼくは選手たちの代理人を務めました。
これらを機に、いくつかの競技団体が暴力根絶宣言を発表するなど、改革に足を踏み出しました。しかし、その趣旨が多くの指導者にきちんと伝わっていないと感じます。
スポーツ指導の場における「愛のムチ」、暴力の連鎖は根深いものがあります。
講師を務めている大学でアンケートを取った結果、いわゆる体育会系の学生は、過去に指導者から暴力を受けた経験が多々あることがわかりました。中には「泣きながら僕を殴ってくれて、感動しました」という衝撃的なフレーズもありました。
体操女子の宮川紗江選手と、コーチだった速見佑斗氏の関係も同じです。たたかれていた宮川選手はパワハラだと考えていないと言います。速見氏も選手時代から指導者の暴力を当然のこととして受け止めていたようです。



体操女子・宮川紗江選手への暴力行為について記者会見を終え、深々と頭を下げる速水佑斗コーチ=9月5日(共同)

戦前教育に根
問題の起源は、日本の教育制度の成り立ちにあると思います。
明治維新の後、近代の教育制度がスタートしました。政府が「富国強兵」「殖産興業」を掲げ、国のために役立つ人材を早く育成するのが至上命令という時代です。悠長なことは言っていられないと、「考えさせる」より「結論を教える」ことが優先されました。国策として体育に取り入れられたスポーツでも、指導者に命じられたとおりにやる、上意下達になりました。しかも、軍隊の介入などで、内容の合理性・科学性を問うことなく、逆らえない体制になっていきました。
日本国憲法が制定されてからも、「軍隊式」のやり方は残りました。スポーツの根源ともいえる遊びや楽しみ、公平性の要素が抜け落ちたままになってしまいました。
これでは選手の自主性や判断力は培われません。事のよしあしを考え行動する、スポーツで最も大切な「自立した個人」を育てられません。
日本の選手は決められたことを能率よくこなすのが得意な半面、判断を委ねられた途端に方向感覚を失ってしまうという傾向があります。高校野球の甲子園大会では、走者が出ると打者が一球ごとに監督のサインを確認する場面をよく目にします。
例えば、子ども同士で十分に議論をさせたうえで「こうやったらどう?」と提示したり、手本を見せたりするといった働きかけが必要です。地道で根気のいる作業ですが、それがあるべき姿だと思います。

国の予算増を
問題の解決には指導者も選手も自覚を高めていく取り組みが求められますが、急務なのは、「指導者を指導する」育成システムの構築です。
日本サッカー協会は指導者のライセンス制度を採り入れ、系統的な育成を行っています。一方で、競技によっては現役引退直後に監督に就くケースもあります。指導者としての訓練をまったく受けていないのなら、自らの体験をよりどころにするしかありません。暴力の連鎖を生む一因になっています。
中小の競技団体は指導者の担い手が少ないうえに、予算も限られています。指導者育成を進めるために、国が思い切ってお金をかけるべきです。
2020年の東京五輪・パラリンピックに向けてスポーツ予算が増えているとはいえ、5兆円の軍事費と比べればあまりにも少ない額です。1機あたり約150億円というF35戦闘機の購入を2機減らすだけで、今のスポーツ予算分くらいの財源が捻出できます。
スポーツは「創る平和」に寄与するというのがぼくの考えで、スポーツの「平和創造機能」を訴え続けています。スポーツは暴力とも深く関係するのですが、なぜ暴力やパワハラが起きるのか、どうすれば解決できるのか。スポーツに関わる全ての人が粘り強く考えていかなくてはなりません。
(佐藤恭輔)(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月20日付掲載


スポーツ界に残っている暴力の根源は、明治維新時の「富国強兵」「殖産興業」ですか。いま、「西郷どん」でやっていることですね。
競技能力を高めるには、以前の根性や忍耐ではなくて、人体工学・科学技術的なものが導入されています。
しかし、指導者を育成することも残されているんですね。

スポーツ界の今を考える 改革の道のり③ 自立した人間づくりへ

2018-11-23 14:52:04 | スポーツ・運動について
スポーツ界の今を考える 改革の道のり③ 自立した人間づくりへ
柔道女子日本代表 増地克之(ますちかつゆき)監督(48)

女子の日本代表監督を務める今も、筑波大学柔道部の監督だった時(2006~16年)も、自立した人間を育てていくのが私の最大の使命です。
柔道は畳に上がれば一人でたたかいます。11年に行われた国際柔道連盟のルール変更によって、試合中の指導者の役割が著しく制限されました。それまではいつでも選手に指示できましたが、いまは試合が止まっている「待て」の間だけに限られています。
選手は自分で試合を組み立て、勝つための策を瞬時に判断しなければなりません。指導者が手取り足取り教えるようでは、そうした力は育ちません。もしここで指導者が「ただ勝てばいい」という考えに陥ってしまえば、パワハラや暴力に頼ることにもなりかねません。



9月の世界選手権で5階級を制した(後列左から)新井千鶴、浜田尚里、朝比奈沙羅、芳田司、阿部詩の女性選手たち。(前列左から)男子の優勝者、阿部一二三、高橋直寿の両選手=バクー(共同)

最後は人間性
競技レベルが高くなればなるほど、体力や技術の差はありません。勝ち負けはある意味、紙一重です。では、最後に決するものはなにか。その日に一番最高の状態に仕上げた者が勝ちます。柔道に日々、誠心誠意向き合い、課題を一つ一つ主体的に克服して、どんな事態にも対応できる状態で本番にのぞむことです。その過程では技術だけでなく自律性も磨かれます。つまり、最後は人間性が左右するのです。
もちろん畳の上だけでなく柔道場を出ても、またその後の人生においても自立した人間になることが大切だと考えます。
目先の大会で結果を残すことは大事です。しかしそれとともに、10年、20年たった後にその選手が何を残せるかが重要です。学んだことが将来にいかされ、社会や次世代に還元されてこそ、自分の指導が教育的な意味を持つと考えます。それには自立した考えを持てる選手を育てないといけません。
5年前に私の故郷・三重県で開かれた全国中学校柔道大会(全中)で、指導者たちを対象にした講演でこう訴えました。
「全中で活躍した選手で、その後オリンピックに出場した選手は多くない。部活は楽しくのびのびと行い、勉強の時間の保障もしてほしい。のびしろを残しながら次の年代に上げるのが指導者の責任だと思う」
これは大学で指導した経験からの実感でもあります。高校時代に実績を残した選手の多くが伸び悩む姿を見てきました。筑波大学柔道部は選手の自主性を重んじる部風があります。練習時間も短めです。寮がないから生活も各自任せです。
高校時代まで柔道漬けで厳しく指導されてきたになじめず、燃え尽き症候群のように気の抜けた状態になってしまう傾向が少なからずありました。

対等な立場で
自立した選手を育てるうえで代表監督の私に課せられているのは、選手が気持ちよく柔道に専念できる環境をつくることです。
それには選手の意見を尊重することが第一です。例えば私が力を入れている外国人対策のミーティングでも、選手が自分の意見を言える雰囲気づくりを心がけています。
次に、監督である私と選手の間に入っている5人の担当コーチを尊重することも大事です。
担当コーチは時間をかけて選手を技術指導しています。上の者がそれを飛び越えて介入すると担当コーチの存在が薄れ、チームの輪を乱してしまいます。
私から選手に伝えたいことがあったら、まず担当コーチに相談します。それも自分の考えを押し付けるのでなく、「こういう方法があると思うけどどうだろうか」と問いかけるようにしています。序列でなく対等な立場で尊重しあい、特定の選手だけでなく全員と平等に接することで、選手のやる気とチームの団結力が生まれるからです。
うれしいことに9月の世界選手権(アゼルバイジャン・バクー)で日本女子代表は7階級中5階級で金メダルを獲得しました。16年のリオデジャネイロ五輪では一つにとどまりましたから、順調にきています。
選手たちのたたかいぶりを見ていると、度胸の強さに感心させられます。外国選手への苦手意識が消えつつあり、気後れなく立ち向かっています。選手や担当コーチたちと自由に意見を出し合った成果なのかもしれません。
どんな相手に対しても自分の持てる力をすべて出し切れるかどうか。自立した選手を東京五輪の畳の上に送り出すために、これからも心を砕きたい。
(勝又秀人)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月19日付掲載


選手は自分で試合を組み立て、勝つための策を瞬時に判断。指導者が手取り足取り教えるようでは、そうした力は育たない。
柔道のような個人競技では特にそれが重要だという。

スポーツ界の今を考える 改革の道のり② 大事なのは三つの「F」

2018-11-22 11:09:35 | スポーツ・運動について
スポーツ界の今を考える 改革の道のり② 大事なのは三つの「F」
日本トップリーグ連携機構 市原則之専務理事
いちはら・のりゆき=1941年10月30日、広島市生まれ、77歳。ハンドボールの元日本代表選手、監督。日本ハンドボール協会副会長、同リーグ機構会長、JOC副会長、専務理事などを歴任。現在は、団体ボール競技のリーグを束ねる日本トップリーグ連携機構の専務理事。広島山陽高等学校理事長

暴力指導やパワーハラスメントは、日本のスポーツ界の奥深いところにある問題です。
日本オリンピック委員会(JOC)専務理事だった2013年1月、柔道の女子15選手が私のところに訴えにきました。
代表監督らの暴力指導の中身はひどいものでした。これが社会問題になり、日本のスポーツ界は暴力指導に正面から向き合うことになりました。

暴力の克服へ
スポーツ団体が共同で「暴力行為根絶宣言」を出しました。「フェアプレーの精神やヒューマニティーの尊重を根幹とするスポーツの価値とそれらを否定する暴力とは互いに相いれない」と。しかし、私たちはこの問題を克服できていません。
そもそもスポーツ界の暴力は、軍隊的な指導の名残でもあります。欧米に比べ日本人は体格やパワー、筋力で劣ります。
それを昔は持久力や精神力、根性で克服しようと過酷な練習で心身ともに選手を追い込みました。
しかし、選手の人権を認めないところにスポーツ指導は成り立ちません。何より指導者の意識の転換が求められます。
JOCは1996年アトランタ五輪の成績不振を機に「ゴールドプラン」(2001年)という競技力向上戦略をつくりました。柱の一つは指導者養成です。各競技の代表チームの指導者の資格制度をつくり、科学的で国際的な視野を持った指導者を輩出するためです。



平昌五輪の選手村で食事をする選手たち=2月6日(AFP時事)

人間性を育む
私たちはただ強い、メダルを取れる選手を育成すればいいと考えているわけではありません。コーチ、指導者は素晴らしい人間性を育む人でなくてはなりません。
私はスポーツには三つの「F」が大事だとよく話します。一つはファイティングスピリット。常に全力を尽くす。第二はフェアプレー。スポーツの公平・公正な精神を培う。三つ目はフレンドシップ。友情を育むこと。この三つは五輪の「選手村」の精神です。
貧しい環境の国、そうでない国の選手も同じ食事や生活をし、同じ条件でたたかう。そして選手村に帰って「よく頑張った」と交流し合う。この精神を指導者も選手も身につけることが大事だと思います。
スポーツには人々に勇気や夢を与え、元気にする力があります。私はロンドン五輪(12年)で改めて実感しました。
このときJOCは東日本大震災で被災した20人の子どもたちを招待しました。両親やきょうだいらを亡くした子たちです。日に日に表情が生き生きと変わるのがわかりましたが、一人だけ変わらない子がいたのです。
競技を見ていても一人ポツンとして、お世話係のオリンピアンが「連れてこない方がよかったかな」と嘆くほど。ところが、最後の女子サッカーの準決勝のときに変わりました。競技が進むにつれて、みんなのそばに寄ってきて、日本が勝った瞬間は輪の中心でともに喜び合ったのです。
私はそれを見て、子どもの心を変えられるスポーツは、すごいなと改めて。指導者も選手もこのスポーツの持つ力を自覚すべきです。

1人でも告発
5年前、柔道の女子選手は勇気をもって15人で暴力を告発しました。いまは1人でも告発する選手が出てきています。これは変化であり一つの光です。選手が自立し、暴力を憎む気持ち、人権意識が育っている証しです。
「指導者は学ぶことをやめたら、教えることをやめなくてはいけない」
サッカーの元フランス代表監督の言葉です。選手を真ん中におきながら、ともに成長できる、真摯(しんし)な監督、コーチを増やすことが、スポーツ界を変える力になる。私はそう確信しています。(和泉民郎)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月18日付掲載


日本のスポーツ界にとって、暴力問題は根深い。欧米との体格の差を、持久力や根性で克服しようした時代があった。その名残りが暴力にも。
3つの「F」とは、ファイティングスピリット、フェアプレー、フレンドシップ。


スポーツ界の今を考える 改革の道のり① 競技団体運営の基準を

2018-11-21 15:31:56 | スポーツ・運動について
スポーツ界の今を考える 改革の道のり① 競技団体運営の基準を
レスリングのパワーハラスメント、日本大学アメリカンフツトボール部の悪質タックル問題など相次ぐ不祥事を受け、スポーツ界はその対応に迫られています。問題の背景、根源に何があるのか。どんな処方箋が求められるか。識者とともに考えます。第1回は日本スポーツ法学会前会長で弁護士の望月浩一郎さんです。(聞き手 和泉民郎)

日本スポーツ法学会前会長 望月浩一郎弁護士
もちつき・こういちろう=1956年、山梨県生まれ。弁護士。日本スポーツ法学会前会長。日本学生野球協会、日本相撲協会などの各種委員を務める。Jリーグ・川崎、我那覇選手のドーピングをめぐる仲裁事件の選手代理人。スポーツ事故訴訟にも関わる。著書に『運動部活動の理論と実践』(共著、大修館書店)など。

―スポーツ界の現状をどう見ていますか。
不祥事には二つの側面があると思います。一つは選手への暴力、パワハラといった指導者のあり方。もう一つはスポーツ団体の運営上の未熟さです。とくに後者は有効な対策が見いだせていないように思います。

―ボクシング連盟の問題はその典型ですね。
ボクシングは山根明前会長による補助金不正流用や「奈良判定」など不正行為や独裁的な体質が間題となりました。こうしたアンフェアな運営は論外ですが、他のスポーツ団体も役員の多くは競技のOBが担っています。競技の専門的な技能、知識はあっても組織運営やマネジメント能力があるとは限りません。
みんなで決めていく経験も乏しい。これらの弱点を克服するには努力を求めるだけでなく、特別な手だてが必要だと感じます。



日本ボクシング連盟の山根明会長(当時)を告発し、記者会見する「日本ボクシングを再興する会」の代表ら=8月8日、東京・霞が関の弁護士会館

国の干渉注意
―国が、スポーツ団体の監督権限強化の法改正を検討しています。

現在、スポーツ議員連盟でも議論されていますが、国がより積極的に関与する方向での議論となっていることには注意が必要です。
私は、国が直接スポーツ団体に干渉することには賛成できません。戦前の文部省による「野球統制令」の問題を考えるべきで、スポーツ団体の自主的な努力を尊重すべきです。ただ、現状でいいわけではありません。競技団体の多くは、中央の事務局ですら数名のスタッフで運営される零細企業です。人もお金もないなかで何ができるかを考える必要があります。

「はずみ車」
―どんなやり方がありますか。

日本スポーツ協会、日本オリンピック委員会が組織運営のあり方、ガバナンスのガイドラインを作成し、構成団体に求める。これをクリアしないといけないという基準をつくることです。
例えば、サッカーのJリーグにはクラブライセンス制度があります。プロのクラブとして最低限必要な条件を示し、認可の有無を決めています。
最初に基準をクリアするのは大変ですが、一度できれば「慣性の法則」でいく部分も大きい。一度にすべてに適用するのが無理ならモデルをつくり、それを「はずみ車」に広げるやり方もあります。

外部の人材も
―ほかにやれることはありますか。

柔道は代表監督の女子代表選手にたいするパワハラ問題をきっかけに連盟の組織改革に進みました。柔道経験がある企業の役員を会長に据えて。
テコンドーやフェンシングは法律家がその運営にかかわっています。外部から人材を招き改革することも一つの方法です。

―組織改革は、暴力、パワハラ指導の解決にもつながりますか。
フェアプレーを運営に貫くことは、スポーツ団体の大事な要件です。それがフェアなスポーツ活動につながります。とくに暴力、パワハラ指導をただすには、精神論でなく科学的な指導者の養成が決定的です。
日本高等学校野球連盟は指導者が学ぶ場として毎年「甲子園塾」を開催し、全都道府県から約50人が参加しています。その指導者は各県に戻り報告会を開くなど、成果を還元しています。
競技団体がこうした努力を強めることと合わせ、私は指導者の交流ができる組織が必要だと思っています。指導者が一人で悩むのではなく、指導方法の情報を得られ、学ぶこともできる。よりよい指導を模索している人は少なくありません。
しかし、その受け皿が少ない。国はそういうところにこそ財政面も含めた援助をすべきです。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月17日付掲載


スポーツ界で、選手への暴力やパワハラも問題だが、競技団体の運営も未熟な点が残されているという。補助金や運営費の私的流用はもってのほかだが、競技だけでなく運営もフェアさが求められると。