きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

変貌する経済 アベノミクス② 格差問題に世界が警告

2015-03-14 16:37:16 | 経済・産業・中小企業対策など
変貌する経済 アベノミクス② 格差問題に世界が警告

米国を震源地にしたリーマン・ショックは、世界経済を大恐慌の瀬戸際にまで追い込んだだけでなく、「資本主義と格差」という問題を社会に鋭く突きつけるきっかけになりました。
2011年9月に米ニューヨークで始まった「ウォール街を占拠せよ」を合言葉にした抗議行動は、全米に広がり、欧州、アジア地域にも波及しました。
金融危機をつくり出したウォール街の大手金融機関の経営者が巨額の報酬を受け取る一方で、労働者は低賃金でぎりぎりの生活を強いられています。この行動は格差社会への不満と抗議の意思をあらわしていました。オバマ米大統領も同年10月6日の記者会見で、「米国人が感じている不満の一部だ」と理解を示したほどです。
世界銀行の元副総裁で、ノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツ教授は、英経済紙フィナンシャル・タイムズ(12年6月25日付)に掲載したコラムで、ウォール街は世界経済を破滅の危機に陥れたものの、「金融機関の企業家たちは、巨額の所得を手にして立ち去った」と皮肉りました。そして、アメリカの政治制度は、他者を犠牲にして富裕層を利するものになっていると断じたのです。



抗議行動のためウォール街近くの公園に集まった人たち=2011年10月17日、ニューヨーク(田中一郎撮影)

国際機関に変化
人々の怒りとたたかいの中で、国際機関にも変化が生まれてきました。
構造改革路線を世界に押し付けてきた国際通貨基金(IMF)は、14年2月にスタッフの研究論文「再分配、格差そして成長」を発表しました。格差が小さい国ほど経済成長率は高く、経済成長が持続する傾向がある、というもので、「格差の縮小はより速く、より永続的な成長に役立つ」と結論付けています。
経済協力開発機構(OECD)も同年12月、所得格差の拡大が経済成長を損なっているとする報告書を発表しました。
報告書は「成長の恩恵は自動的に社会全体に波及(トリクルダウン)するわけでない」「格差の抑制や逆転を促す政策は、社会の公平化につながるばかりではなく、より人々を豊かにし得る」と強調しました。
IMFのラガルド専務理事は、同年6月6日、ロンドンで次のように発言しています。
「おしなべてここ数年で、持つ者と持たざる者との間の差(所得格差)が大きく開きました。戦後のどの時代と比較しても、今日、富裕層が報酬の一段と大きなシェアを手にするという状況が多くの国で起こっています」「より格差が進んだ社会では、基本的な栄養や保健、教育、スキル、融資といった前進するための基本的な道具を手にすることができない人々があまりにも多く存在します。これは、経済的不安定のために人々が技術と教育への投資を過剰に差し控えるといった、悪循環を生み出す可能性があります」
経済格差は、社会を不安定にする悪循環を引き起こす、というわけです。

世界の富の50%
国際援助団体オックスファム・インターナショナルは1月、世界の経営者や政治家が集まる世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の開催に合わせて報告書を発表しました。上位1%が所有する世界の富は、14年には全体の48%に達し、わずか2年後には50%を超えると警鐘を鳴らしました。
富裕層は、彼らの利益を増やすことに役立つ法律や制度をつくりだすために、巨額の資金を使っています。彼らこそ、貧困層のための税制改革などの「主要な障害である」と、オックスファムは強調します。
「主要な障害」の日本版―。それこそ、一握りの多国籍企業のための政策である「アベノミクス」を全面支援する日本の財界です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年3月11日付掲載


IMFも、「格差が小さい国ほど経済成長率は高く、経済成長が持続する傾向がある」と発表。OECDも、「格差の抑制や逆転を促す政策は、社会の公平化につながるばかりではなく、より人々を豊かにし得る」と。
いい加減に日本政府も、トリクルダウンから脱却すべき。