きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

世界経済の構造転換③ 中国に追い抜かれる米

2023-09-06 07:36:03 | 経済・産業・中小企業対策など
世界経済の構造転換③ 中国に追い抜かれる米
二大経済国家の米中対立が激化しています。攻撃するのは米国で、反撃するのが中国です。ここには、戦後の既得権益を脅かされつつある国の危機感と、追いつき追い越そうとする国の立ち位置の違いが見えます。

GDP既に逆転
一物一価の法則を基準にした為替レート(購買力平価・ビッグマック指数)で比較すると、各国の本当の経済規模が分かります。すると、米国の国内総生産(GDP)は2016年に中国に追い抜かれました。危機感をもった米国は中国へ圧力をかけ始めます。22年には中国のGDPは30・2兆ドルに達し、米国は25・4兆ドルにとどまります。メディアで報じられませんが、日本のGDPは09年にインドに抜かれました。(図)
経済力を増強しようとする中国の対外戦略は、アジア―中東―ヨーロッパ―アフリカを網羅する広域経済圏構想「一帯一路」政策(17年)です。陸と海のシルクロードを現代的にバージョンアップしたこの政策は、ユーラシア大陸の全域・世界人口の6割ほどの経済圏を形成します。
「一帯一路」政策は、中国市場の拡大、エネルギー・食料資源の確保、国内余剰労働者問題の解決、外交上の安全保障の強化など、多方面で中国経済と影響力を拡大します。すでに米国の貿易総額の20%は中国に依存しています。米国の世界支配の既得権益は著しく侵されはじめました。これが米中対立の基本的な背景です。
中国は、科学技術の基礎的な指標である論文数・研究者数・政府の予算額などで、米国を追い抜いています。企業の特許数でも中国のアリババがトップです。いずれ研究内容も高度化するでしょうから、米国の危機意識はいやが上にも高まります。
米国による中国たたきは、中国のIT(情報技術)最先端企業・ファーウェイ(HUAWEI)の排除に見られるように、科学技術をめぐって展開されています。科学技術は世界の公共財であり、その発展を止めることは中国だけでなく世界にとって不幸なことです。米国の既得権益を守ろうとする「アメリカ・ファースト」戦略は、中国だけでなく世界にとって不利益をもたらします。




独自決済網重視
歴史上、覇権国家は自国の弱点を周辺国のせいにし、周辺国の犠牲で覇権を維持してきました。戦後の「日米貿易摩擦」、「プラザ合意」や現在の「米中貿易摩擦」はその身近な例と言えるでしょう。
戦後、米ドルは、米国内だけでなく、国際取引の決済や各国の外貨準備の主要通貨=基軸通貨として機能してきました。しかし、1999年にユーロが登場し、最近では中国のデジタル人民元の登場などにより、米ドルの地位は低下してきました。各国外貨準備に占める米ドルの割合は、戦後の9割台から5割台に低下しました。
米ドルにとって脅威なのは、中国のデジタル人民元です。それは人民元が米ドルに代わる国際通貨になることでなく、「一帯一路」の広域経済圏に米ドルの入り込む余地がなくなる脅威と言えます。
中国がデジタル人民元の使用を重視するのは、ウクライナ侵略への経済制裁として米欧諸国がロシアの銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークから排除する措置をとったからです。インドもこの措置に反応し、インド・ルピーの独自の決済網を重視し始めています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月31日付掲載


中国の「一帯一路」政策(17年)。陸と海のシルクロードを現代的にバージョンアップしたこの政策は、ユーラシア大陸の全域・世界人口の6割ほどの経済圏を形成。
米国による中国たたきは、中国のIT(情報技術)最先端企業・ファーウェイ(HUAWEI)の排除に見られるように、科学技術をめぐって展開。科学技術は世界の公共財であり、その発展を止めることは中国だけでなく世界にとって不幸なこと。
基軸通貨も、米ドルだけでなく、ユーロ、デジタル人民元、インド・ルピーなど多元化。

世界経済の構造転換② 地球規模の搾取と収奪

2023-09-06 07:11:58 | 経済・産業・中小企業対策など
世界経済の構造転換② 地球規模の搾取と収奪
群馬大学名誉教授 山田博文さん

現代経済は、一国で商品が生産され販売されるといった、単純な実体経済が支配的な経済ではありません。地球を舞台にした現代経済の特徴は、グローバル化・情報化・金融化の三つのキーワードで読み解くことができるようです。(図)




あらゆる領域に
現代経済は、原材料の調達・加工・製造・輸送・販売などが国境を越え、地球規模のグローバル・サプライチェーン(供給網)のもとで営まれています。多国籍企業は、安い国で原材料を調達・加工・製造し、完成品は高く売れる国で販売し、驚くほどの独占的高利潤を得ています。
グローバル化したのは、モノだけでなく、カネ・ヒト・技術・情報などあらゆる領域に広がります。グローバル化の主な推進主体は、市場原理主義・新自由主義政策を世界各国に普及するアメリカ政府・大企業・金融業・国際通貨基金(IMF)・世界銀行などです。日本など各国の巨大資本もグローバル化の大波に乗って多国籍化し、高利潤を得ています。
他方、多国籍企業の搾取と収奪を受けた国々では、深刻な貧困問題や環境破壊が発生しました。2021年現在、1日1・9ドル(197円)以下で生活する極度の貧困状態にある人々は7・7億人(10人に1人)におよびます。さらに地球温暖化などの環境破壊で、人類が地球に住めなくなる危機的事態も進展しました。
経済のグローバル化の限界が表面化し、その見直しが始まりました。国連は30年までに、貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育、クリーンエネルギー、ジェンダー平等、気候変動対策などのSDGs(持続可能な開発目標)を加盟国全体で達成することを決めました。
現代の経済活動は、情報通信技術(ICT)の革命に支えられ、時間と空間の制限を越えています。企業・団体・個人は、デジタルプラットフォーム(インターネット上の経済活動基盤)を利用することで、地球の裏側との取引もリアルタイムの速度で実施できます。記録されたビッグデータは人工知能(AI)で解析され、多様な需要にマッチした新しいビジネスチャンスが提供されます。
しかし、企業・団体・個人の情報が、アメリカの巨大IT独占企業(GAFAMなど)の提供するデジタルプラットフォームを介して第三者に知れわたるリスクも発生します。

金融化の進展で
現代経済のグローバル化・情報化のメリットを最大限引き出したのは、銀行・証券・各種投資ファンドなどの金融業です。金融業とITとは親和性が高く、経済の金融化が進展しました。金融とはマネーの融通のことですが、現代のマネーの大半は銀行預金(預金通貨)として、グローバルに連結された銀行のコンピューターの中の数字情報として存在しています。国境を越えた数百億円の売買取引でも、マネーの受け払いは銀行口座を利用し、一瞬で完結します。一瞬で空前の利益が得られる一方、失敗すれば大資本でも破綻するハイリスク・ハイリターンの経済です。
実体経済の規模を表す世界の国内総生産(GDP)は約100兆ドルですが、世界の株式・債券・預貯金といった金融資産の規模は約320兆ドルです。人類の生存に不可欠な実体経済が、株式・債券・為替といった金融資産のバプリーな動向に振り回される不安定経済―これが現代経済の特徴です。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月30日付掲載


多国籍企業の搾取と収奪を受けた国々では、深刻な貧困問題や環境破壊が発生しました。2021年現在、1日1・9ドル(197円)以下で生活する極度の貧困状態にある人々は7・7億人(10人に1人)におよびます。さらに地球温暖化などの環境破壊で、人類が地球に住めなくなる危機的事態も進展。
国連は30年までに、貧困撲滅、健康と福祉、質の高い教育、クリーンエネルギー、ジェンダー平等、気候変動対策などのSDGs(持続可能な開発目標)を加盟国全体で達成することを決定。