きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

労基法の危機 全労連・伊藤圭一さんに聞く(下) 割増賃金をなくす議論も

2024-06-06 06:56:06 | 働く権利・賃金・雇用問題について
労基法の危機 全労連・伊藤圭一さんに聞く(下) 割増賃金をなくす議論も

―「デロゲーション(適用除外)」の他にどんな議論がされていますか。
副業の割増賃金をなくすことが議題に上がっています。副業させると当然、長時間労働になります。労基法は副業と本業の労働時間を通算して割増賃金規制をかけています。
仮に本業で7時間勤務し、副業先でさらに4時間働いた場合は、本人の自己申告が必要ですが、本業と副業の通算で1日8時間を超える3時間分に、副業先企業の割増賃金支払い義務が発生します。
しかし、使用者に遠慮し労働者が申告しない場合がほとんどです。規制が運用されていないのをいいことに副業の割増賃金廃止を求める財界の意向が認められる流れが濃厚です。そのうえ通常の割増賃金そのものをなくす議論も出てきています。



労働基準関係法制研究会で議論する学者ら=5月10日、厚生労働省

最低基準未満
―研究会では「カスタマイズ」という言葉も使われています。

有識者研究会の中で労基法改悪を主張する学者は「職場に応じた労働条件のカスタマイズやルールメイキングが必要だ。一律規制なんてあり得ない」と主張しています。
しかし、労基法は最低基準を上回る多様なカスタマイズは認めています。8時間より短く、高い賃金で働く合意を推奨しています。
財界の息のかかった学者が「柔軟な働き方」や「多様な選択」と言いながら進めているのは、本来無効である最低基準を下回る改悪のカスタマイズです。
労働者が望む「多様な選択」を認めず、硬直的な働き方を強いているのは労基法でなく使用者が定めたルールです。それを労基法が原因であるかのようにすり替えています。だまされてはいけません。
もし労使合意を要件に労基法が柔軟化されれば、より長時間・低賃金で働かせたい使用者のやりたい放題の世界になります。
―この時期に議論が進められているのは、なぜですか。
時間外労働の上限規制(月100時間未満など)を導入した「働き方改革」関連法の施行から4年がたち、効果の検証を踏まえて労基法などの見直しの検討が始まっています。このタイミングで制定77年を迎える労基法も「寿命が来ているから」と改悪したいのでしょう。
労基法の見直しに向けて厚労省の有識者検討会「新しい時代の働き方に関する研究会」が2023年3月~10月に開かれ、報告書をまとめました。内容は「労使自治や合意による柔軟な働き方を妨害するな」というものです。
それを踏まえて有識者検討会「労働基準関係法制研究会」が今年1月から7回開催されています。この間、①事業、労働者概念②労働時間制度③労使コミュニケーションーなどの論点整理、労使団体の意見聴取を行っています。
当初予想より早いスピードで議論が進み研究会の結論は夏ごろにはみえてくるかもしれません。研究会の結論を受けた労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)は早ければ年内、遅くとも年明けには議論を開始する見込みです。

時間短縮こそ
―改悪を許さないために何が必要ですか。

4週4休制の廃止や、週44時間労働制の廃止、家事使用人への労働基準法の適用など、改善点も議論されていますが、狙いの中心は労基法・労働時間規制の無効化です。今、何が議論され、問題点はどこにあるのかの理解を広げて、改悪反対の世論をつくる必要があります。
さらに政府が背を向けている夜勤規制の拡充や変形労働時間制の見直し、法定労働時間の短縮など、あるべき法制度を要求し、ジェンダー平等やワーク・ライフ・バランスを実現するよう、皆で声をあげましょう。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年6月1日付掲載


財界の息のかかった学者が「柔軟な働き方」や「多様な選択」と言いながら進めているのは、本来無効である最低基準を下回る改悪のカスタマイズ。
労基法の見直しに向けて厚労省の有識者検討会「新しい時代の働き方に関する研究会」が2023年3月~10月に開かれ、報告書を。内容は「労使自治や合意による柔軟な働き方を妨害するな」というもの。
さらに政府が背を向けている夜勤規制の拡充や変形労働時間制の見直し、法定労働時間の短縮など、あるべき法制度を要求し、ジェンダー平等やワーク・ライフ・バランスを実現するよう、皆で声をあげましょう。
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