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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

軍拡と財政金融危機⑤ 集中する富に課税を

2022-10-28 07:09:37 | 予算・税金・消費税・社会保障など
軍拡と財政金融危機⑤ 集中する富に課税を
群馬大学名誉教授 山田博文さん

現代日本の財政状況はすでに終戦時と同水準の厳しさです。政府が国内総生産(GDP)の2・6倍の債務を抱える「政府債務大国」となっています。

債務大国への転落
戦後日本は、国債増発と金融緩和政策を先行させ、将来所得を先取りしながら、大型公共投資や不況対策などを推進する経済運営を続けてきました。財政と金融へのタカリの構造が、戦後の平和国家日本を「政府債務大国」に転落させました。
普通国債発行残高だけでも、2022年度には約1000兆円に達します。この莫大(ばくだい)な国債の管理を一手に担っているのは国債整理基金特別会計です。本来なら10年で全額償還される長期国債も60年かけて償還(「60年償還ルール」)されるので、10年目の一般会計には6分の1しか計上されません。残りは国債整理基金特別会計を発行母体にした借換債の発行で処理されます。そのため、日本財政の全貌は一般会計からは見えません。
そこで、一般会計と13の特別会計の重複分を除いた主要経費別純計額で確かめると、政府債務返済のための国債費は全体の33・6%の99・5兆円に達しています。国民の生存権と社会生活のための社会保障関係費96・9兆円を上回る最大の経費になっています(図)。
日本財政は借金で首が回らない状況にあり、今後、軍事関係費を2倍にする財源など、逆立ちしても出てこない事態です。
しかも増発された国債の過半を日銀が買い入れて保有しているので、現代日本の財政は日銀に依存した状態(財政ファイナンス)です。いったん民間金融機関が公募入札した国債を最終的に買い入れてきたのは日銀です。異次元金融緩和政策をやめて日銀が国債を買わなくなったら、財政資金が調達できず予算が成立しなくなります。




財政危機のおそれ
この先、さらに「防衛国債」を増発して政府債務を積み増すと、財政危機を誘発するでしょう。しかも増額される軍事費は少数の軍需企業の経営を好転させるだけで、経済的波及効果がありません。
すでに日銀資産(686兆円)の79%を、価格変動リスクのある国債(546兆円)が占めています。世界各国はインフレ対策のため、金融引き締めに転換し、一斉に金利を引き上げはじめました。日米の金利格差は3%ほどに拡大しています。世界のマネーは金利の高い方に流れます。低金利の日本からマネーが逃避する市場の圧力に日銀が耐えられなくなり、金利が上昇(=国債価格が下落)すると、財政サイドでは国債利払い費の上昇(1%で10兆円増)となって財政危機を深刻化させます。金融サイドでは日銀保有国債の評価損発生で日銀信用が毀損(きそん)し、円安になり、輸入物価が高騰します。それに連動して国内物価が高騰し、国民生活が破壊される深刻な事態に陥ります。
現代日本はほぼ半世紀ぶりに、不況と物価高が併存するスタグフレーションに突入しています。新型コロナウイルス禍、サプライチェーン(供給網)の切断、可処分所得の低下を背景とした不況下で、物価が高騰しています。今後、国民の反発が激化し、早晩、軍拡路線は頓挫する可能性が高いといえます。



川崎重工が製造するC2輸送機(航空自衛隊のホームページから)

応能負担で再生を
終戦直後の膨大な政府債務は、国民からの大収奪によって解消されました。これを教訓とした今後の課題は、応能負担による日本再建を展望することでしょう。「大企業の内部留保金484兆円」「富裕層の純金融資産333兆円」「対外純資産411兆円」など、一極に集中する富へ新規に課税し、その税収を政府債務の解消、貧困と格差是正、経済再建などに活用する対策が求められています。
目下のウクライナ戦争は、軍事力以前の問題として、食料・エネルギーの自給率の低い国が物価高と食糧危機に襲われ、敗戦国状態に陥ることを示しています。食料・エネルギーを外国に依存する日本の課題は、自給率を高め、自立的で持続可能な経済システムを構築することです。それこそが、国民の命を守り国民経済を発展させる、本来の国防力増強であるといえるでしょう。(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年10月22日付掲載


一般会計と13の特別会計の重複分を除いた主要経費別純計額で確かめると、政府債務返済のための国債費は全体の33・6%の99・5兆円に達しています。国民の生存権と社会生活のための社会保障関係費96・9兆円を上回る最大の経費になっています。
日本財政は借金で首が回らない状況にあり、今後、軍事関係費を2倍にする財源など、逆立ちしても出てこない事態です。
終戦直後の膨大な政府債務は、国民からの大収奪によって解消されました。これを教訓とした今後の課題は、応能負担による日本再建を展望を。「大企業の内部留保金484兆円」「富裕層の純金融資産333兆円」「対外純資産411兆円」など、一極に集中する富へ新規に課税し、その税収を政府債務の解消、貧困と格差是正、経済再建などに活用する対策が求められています。


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