独占パワー③ 米上院公聴会での証言
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政治経済研究所 合田寛主任研究員
物価高騰とインフレの原因を突き止めるために、アメリカ上院の委員会では5月2日、物価問題に関する公聴会が開かれました。
公聴会の冒頭、シェロッド・ブラウン委員長(民主党)は「物価高騰と企業利益の増加が同時進行している。これは偶然の一致なのだろうか」と問いかけています。企業が利益を増やすために、コストを大幅に上回る価格を付けているのではないかという問いです。
新しい企業戦略
公聴会では3人の研究者に証言を求めました。その一人、アリ・ブスタマンテ氏(ニューオーリンズ大学教授)は、物価引き上げをめぐる企業の新しい戦略について、次のような証言をおこなっています。
現在、進行しているインフレは企業の価格決定力に関係した暴利追求によって引き起こされている。競争的な市場では企業のマークアップ(原価に加えられる利潤)は低いが、企業がマーケット・パワーを強めるにつれてマークアップを高め、高い価格を付けることができるようになる。最近のマークアップの高まりは少数の大企業によって先導された―。
そのうえで、大企業が高いマークアップを設定し、維持するためにとっている戦略として、次の五つを挙げています。
① 標準的マークアップ引き上げ 売り手が利益を増やすために、コストに対するマークアップの割合を引き上げること。
② 「シュリンクフレーション」 シュリンクというのは「減る、少なくなる」という意味。価格は従来通り維持するが、商品の量やサイズを減らすことによって、実際上の値上げを図ること。
③ 「ダイナミック・プライシング」 膨大な消費者のデータをもとにして、人工知能(AI)を使って価格を調整すること。レストランのメニュー・ボードや商品棚の価格ラベルを電子化し、最大の利益が得られるように、日ごとに、あるいは時間ごとにリアルタイムで価格を変更する。
④ 「おとり価格」戦略 消費者に高価な商品を選ばせる目的で、比較対象として、見劣りする商品を紹介すること。
⑤ 抱き合わせ販売 個別に買うよりも節約できると説明して、他の商品と一緒に販売すること。
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アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏(ロイター)
透明性の確保を
ブスタマンテ氏は、大企業が暴利目的の価格設定によって得る利益は、配当や自社株買い(株価上昇)を通じて経営者と株主の資産を増やす一方で、消費者、労働者、中小企業にとっては有害なものだと証言しました。
最後に、政府の取るべき手段として、反トラスト法を強化するとともに、公正さと透明性を確保するための価格設定ガイドラインを策定することを提案しています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月11日付掲載
アメリカ上院の委員会では5月2日、物価問題に関する公聴会。公聴会の冒頭、シェロッド・ブラウン委員長(民主党)は「物価高騰と企業利益の増加が同時進行している。これは偶然の一致なのだろうか」と問いかけています。企業が利益を増やすために、コストを大幅に上回る価格を付けているのではないかという問い。
公聴会では3人の研究者に証言を求めました。その一人、アリ・ブスタマンテ氏(ニューオーリンズ大学教授)は、物価引き上げをめぐる企業の新しい戦略について、次のような証言。
大企業が高いマークアップを設定し、維持するためにとっている戦略として、次の五つを。① 標準的マークアップ引き上げ② 「シュリンクフレーション」③ 「ダイナミック・プライシング」④ 「おとり価格」戦略⑤ 抱き合わせ販売
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政治経済研究所 合田寛主任研究員
物価高騰とインフレの原因を突き止めるために、アメリカ上院の委員会では5月2日、物価問題に関する公聴会が開かれました。
公聴会の冒頭、シェロッド・ブラウン委員長(民主党)は「物価高騰と企業利益の増加が同時進行している。これは偶然の一致なのだろうか」と問いかけています。企業が利益を増やすために、コストを大幅に上回る価格を付けているのではないかという問いです。
新しい企業戦略
公聴会では3人の研究者に証言を求めました。その一人、アリ・ブスタマンテ氏(ニューオーリンズ大学教授)は、物価引き上げをめぐる企業の新しい戦略について、次のような証言をおこなっています。
現在、進行しているインフレは企業の価格決定力に関係した暴利追求によって引き起こされている。競争的な市場では企業のマークアップ(原価に加えられる利潤)は低いが、企業がマーケット・パワーを強めるにつれてマークアップを高め、高い価格を付けることができるようになる。最近のマークアップの高まりは少数の大企業によって先導された―。
そのうえで、大企業が高いマークアップを設定し、維持するためにとっている戦略として、次の五つを挙げています。
① 標準的マークアップ引き上げ 売り手が利益を増やすために、コストに対するマークアップの割合を引き上げること。
② 「シュリンクフレーション」 シュリンクというのは「減る、少なくなる」という意味。価格は従来通り維持するが、商品の量やサイズを減らすことによって、実際上の値上げを図ること。
③ 「ダイナミック・プライシング」 膨大な消費者のデータをもとにして、人工知能(AI)を使って価格を調整すること。レストランのメニュー・ボードや商品棚の価格ラベルを電子化し、最大の利益が得られるように、日ごとに、あるいは時間ごとにリアルタイムで価格を変更する。
④ 「おとり価格」戦略 消費者に高価な商品を選ばせる目的で、比較対象として、見劣りする商品を紹介すること。
⑤ 抱き合わせ販売 個別に買うよりも節約できると説明して、他の商品と一緒に販売すること。
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アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏(ロイター)
透明性の確保を
ブスタマンテ氏は、大企業が暴利目的の価格設定によって得る利益は、配当や自社株買い(株価上昇)を通じて経営者と株主の資産を増やす一方で、消費者、労働者、中小企業にとっては有害なものだと証言しました。
最後に、政府の取るべき手段として、反トラスト法を強化するとともに、公正さと透明性を確保するための価格設定ガイドラインを策定することを提案しています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月11日付掲載
アメリカ上院の委員会では5月2日、物価問題に関する公聴会。公聴会の冒頭、シェロッド・ブラウン委員長(民主党)は「物価高騰と企業利益の増加が同時進行している。これは偶然の一致なのだろうか」と問いかけています。企業が利益を増やすために、コストを大幅に上回る価格を付けているのではないかという問い。
公聴会では3人の研究者に証言を求めました。その一人、アリ・ブスタマンテ氏(ニューオーリンズ大学教授)は、物価引き上げをめぐる企業の新しい戦略について、次のような証言。
大企業が高いマークアップを設定し、維持するためにとっている戦略として、次の五つを。① 標準的マークアップ引き上げ② 「シュリンクフレーション」③ 「ダイナミック・プライシング」④ 「おとり価格」戦略⑤ 抱き合わせ販売
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