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赤旗創刊93周年で考える② 権力の暴走・腐敗を監視 切磋琢磨する存在として

2021-01-30 07:29:41 | 赤旗記事特集
赤旗創刊93周年で考える② 権力の暴走・腐敗を監視 切磋琢磨する存在として
藤田 健(編集局次長

ジャーナリズムの歴史を考えるうえで、もう一つ考えなければならないのは、「中立公正」や「不偏不党」というスローガンがどうして生まれたのかです。
朝日新聞は創刊当初から「公平無私、勧善懲悪」(朝日新聞社執務規程)を看板にしましたが、その裏では1882年(明治15年)から85年(同18年)にかけて内閣機密費を毎月500円受け取っていました(注1)。当時の小学校教員の初任給が5円(明治19年)といわれますから、現在の初任給を25万円として、朝日新聞が受け取っていたのは月2500万円、年3億円もの大金でした。

(注1)「金百三十六円九十三銭九厘 朝日新聞補助金十五年五月より十八年四月迄毎月金五百円つつ相渡猶(なお)不足の分本行の通渡済明細勘定書並受取書あり」(伊藤博文『秘書類纂許財政編』)

「不偏不党」はどう生まれたか
決定的だったのが、1918年(大正7年)に起きた「白虹(はっこう)事件」です。当時、「朝日」は薩長の藩閥政府を批判、米騒動の報道禁止について抗議して寺内内閣を弾劾する「関西記者大会」を開くなど、政府追及の急先鋒(せんぽう)でした。
ところが、その記者大会を報じた「朝日」の記事に「白虹日を貫けり」という言葉がありました。これが、中国のことわざで「兵乱の前兆」だとして、政府から「朝憲紊乱(びんらん)」つまり天皇制政府の転覆を意図していると言いがかりをつけられ、新聞紙法違反で弾圧されたのです。右翼団体による中傷宣伝・不買運動が横行し、社長が右翼暴漢に襲われるという事件もおきました。
もちろん、非難されるべきは、言いがかりをつけて弾圧した政府の側です。しかし、このとき「朝日」は、沸き起こっていた言論界の抵抗・批判と結んでたたかうという方向をとりませんでした。社長の辞任、編集局長、社会部長らの退社などのうえ、朝日新聞として「皇室尊崇」「不偏不党」を宣言したのです(注2)。「不偏不党」はいわば天皇制政府への屈服の言葉だったのです。

(注2)朝日新聞社の「本領宣明」(1918年12月)「我社創刊以来茲(ここ)に四十年を閲(けみ)し、常に皇室を尊崇して国民忠愛の精神を鼓励し、言を立て事を議するは、不偏不党公平穏健の八字を以て信条と為し…」

生産階級の新聞 病的感覚を補正
このとき「大阪朝日」を追われた著名なジャーナリスト長谷川如是閑はこういいました。
「社会的事実の正しい感覚は、資本家新聞だけ見てゐては全く分らない、といふのは、欧米の新聞界の現状である。日本でも結局さうなるに違ひない。現に大部分さういふ傾向になつてゐる。それ故に、生産階級の新聞紙が日本にも生れることが、今の病的感覚を代表する多くの新聞紙の感覚を補正する唯一の道であらうと思ふ」(「社会的感覚機関としての新聞紙」、『解放』1923年9月)
時を経ていま、「朝日」の元編集委員・論説委員で新聞労連委員長も務めた藤森研さんが朝日新聞社刊の『ジャーナリズム』1月号に論考を載せています。そこで藤森氏は「もともと日本の新聞は、明治の自由民権運動を背景に、政党機関紙が主流を占めて成長してきた。明治中頃から『不偏不党』を掲げる報道新聞がとってかわって主流になり、現在に至る」という歴史を踏まえながら、こう主張します。
「機関紙が鋭敏なセンスでジャーナリズム性を発揮することは、一般メディアにとってもよい刺激だ。機関紙と一般メディアとが切磋琢磨(せっさたくま)しながら、権力の暴走や腐敗への監視を、さらに強めていくことを期待したい」
私たちはもちろん、商業新聞が権力監視というジャーナリズムの役割を発揮することを期待しています。同時に“機関紙とジャーナリズムは両立しうるし、実践している”と言い続けられるように、権力の暴走や腐敗への監視を強め、一般メディアと切磋琢磨できる存在でありたいと思います。
(おわり)(編集局次長)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月29日付掲載


「中立公正」や「不偏不党」と言うと、真っ当な事に様に思われがちですが…。
「公平無私、勧善懲悪」が看板だった戦前の「朝日新聞」。「白虹(はっこう)事件」を機に、社の方針を転換。「不偏不党公平穏健の八字を以て信条と為し…」とまで落ちぶれたのです。
「不偏不党」と「公平穏健」はセット、権力に抗わないってことだった。
いま 、政党機関紙と一般メディアとが切磋琢磨しながら、権力の暴走や腐敗への監視を、さらに強めていくことが求められている。


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