法人税減税の実態⑤ 献金の見返りに優遇
不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん
さまざまな租税特別措置についてその概要を見てみましょう。
大企業ばかり
①研究開発減税(試験研究費税額控除)
租税特別措置法に規定された政策減税です。企業が研究開発を行う場合に、試験研究費の2%から14%を法人税額から控除(控除上限は法人税の25%)できる制度です。
租税特別措置法の減税額では最多の項目となっています。2022年度は全体で7636億円となっており、そのほとんどが大企業への適用です。研究開発費に毎年1兆円規模を投じるトヨタ自動車は、22年度は915億円の減税を受けたと推定されています。
②賃上げ減税(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
租税特別措置法に規定された政策減税です。その事業年度の控除対象雇用者給与支給増加額の15%から40%相当額の法人税額の特別控除ができる制度です。22年度の減税額は全体で5150億円となっており、最近では研究開発減税に次ぐ減税額です。
法人に利益が出て、法人税額が発生した時に法人税から控除できる仕組みのため、赤字の中小企業には何の支援にもなりません。大企業優遇税制を廃止して、それを財源に、中小企業には社会保険料の減免など直接支援することが求められています。
③受取配当益金不算入
子会社などからの受取配当金について、法人税法上の利益から除き課税しないものです。持株比率3分の1以上の株式の配当のすべて、5%以上3分の1未満の株式の配当の50%、5%未満の株式の配当の20%が、受取配当益金不算入として利益から除かれて減税になります。受取配当はたとえ100%子会社からの配当であっても、別法人から所得が移転した収入です。これを利益から除くことは、その企業に対する優遇措置です。
④外国子会社配当益金不算入
国内の法人が外国子会社(持株比率25%以上)から受ける配当の95%を、法人税法上の利益から除き課税しないものです。外国子会社に蓄積した利益を国内に還流するためと説明されますが、③の受取配当益金不算入と同様の理由により、グローバル大企業優遇措置です。
⑤連結納税(グループ通算制度)
22年度からグループ通算制度に改定されました。グループ内の各法人を納税単位として、各法人が法人税額の計算および申告を行い、その中で損益通算(赤字と黒字の相殺)を行うものです。グループ内の課税所得が減り、減税となる大企業優遇税制です。
国民政治協会に2000万円以上の献金をした企業・団体
(2022年・万円)
総務省「政治資金収支報告書」から作成。HDはホールディングス、Gはグループ、FGはフィナンシャルグループ
公平を犠牲に
なぜ税の公平を犠牲にして、大企業優遇税制が続くのでしょうか。自民党への企業・団体献金があるからです。財界人は「企業が政治に金を出せば必ず見返りを期待する」と述べています。
トヨタ自動車の22年度減税額は5211億円、自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金額は5000万円、同じく三菱商事は3755億円と2800万円です。それぞれ1万倍を超える見返りがあったのです。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月11日付掲載
さまざまな租税特別措置についてその概要を見てみましょう。
大企業ばかり
①研究開発減税(試験研究費税額控除)
②賃上げ減税(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
③受取配当益金不算入
④外国子会社配当益金不算入
⑤連結納税(グループ通算制度)
トヨタ自動車の22年度減税額は5211億円、自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金額は5000万円、同じく三菱商事は3755億円と2800万円です。それぞれ1万倍を超える見返りがあったのです。
不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん
さまざまな租税特別措置についてその概要を見てみましょう。
大企業ばかり
①研究開発減税(試験研究費税額控除)
租税特別措置法に規定された政策減税です。企業が研究開発を行う場合に、試験研究費の2%から14%を法人税額から控除(控除上限は法人税の25%)できる制度です。
租税特別措置法の減税額では最多の項目となっています。2022年度は全体で7636億円となっており、そのほとんどが大企業への適用です。研究開発費に毎年1兆円規模を投じるトヨタ自動車は、22年度は915億円の減税を受けたと推定されています。
②賃上げ減税(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
租税特別措置法に規定された政策減税です。その事業年度の控除対象雇用者給与支給増加額の15%から40%相当額の法人税額の特別控除ができる制度です。22年度の減税額は全体で5150億円となっており、最近では研究開発減税に次ぐ減税額です。
法人に利益が出て、法人税額が発生した時に法人税から控除できる仕組みのため、赤字の中小企業には何の支援にもなりません。大企業優遇税制を廃止して、それを財源に、中小企業には社会保険料の減免など直接支援することが求められています。
③受取配当益金不算入
子会社などからの受取配当金について、法人税法上の利益から除き課税しないものです。持株比率3分の1以上の株式の配当のすべて、5%以上3分の1未満の株式の配当の50%、5%未満の株式の配当の20%が、受取配当益金不算入として利益から除かれて減税になります。受取配当はたとえ100%子会社からの配当であっても、別法人から所得が移転した収入です。これを利益から除くことは、その企業に対する優遇措置です。
④外国子会社配当益金不算入
国内の法人が外国子会社(持株比率25%以上)から受ける配当の95%を、法人税法上の利益から除き課税しないものです。外国子会社に蓄積した利益を国内に還流するためと説明されますが、③の受取配当益金不算入と同様の理由により、グローバル大企業優遇措置です。
⑤連結納税(グループ通算制度)
22年度からグループ通算制度に改定されました。グループ内の各法人を納税単位として、各法人が法人税額の計算および申告を行い、その中で損益通算(赤字と黒字の相殺)を行うものです。グループ内の課税所得が減り、減税となる大企業優遇税制です。
国民政治協会に2000万円以上の献金をした企業・団体
(2022年・万円)
日本自動車工業会 | 7800 |
日本電機工業会 | 7700 |
日本鉄鋼連盟 | 6000 |
住友化学 | 5000 |
石油連盟 | 5000 |
トヨタ自動車 | 5000 |
キヤノン | 4000 |
不動産協会 | 4000 |
日産自動車 | 3700 |
野村HD | 3500 |
日立製作所 | 3500 |
三菱重工 | 3300 |
大和証券G本社 | 3200 |
東レ | 3000 |
プレハブ建築協会 | 3000 |
パナソニックHD | 2850 |
伊藤忠商事 | 2800 |
住友商事 | 2800 |
丸紅 | 2800 |
三井物産 | 2800 |
三菱商事 | 2800 |
日本製鉄 | 2700 |
ゼンショーHD | 2500 |
本田技研 | 2500 |
日本鉱業協会 | 2100 |
ソニーG | 2000 |
JR東日本 | 2000 |
日野自動車 | 2000 |
みずほFG | 2000 |
三井住友銀行 | 2000 |
三井不動産 | 2000 |
三菱電機 | 2000 |
三菱UFJ銀行 | 2000 |
JR東海 | 2000 |
公平を犠牲に
なぜ税の公平を犠牲にして、大企業優遇税制が続くのでしょうか。自民党への企業・団体献金があるからです。財界人は「企業が政治に金を出せば必ず見返りを期待する」と述べています。
トヨタ自動車の22年度減税額は5211億円、自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金額は5000万円、同じく三菱商事は3755億円と2800万円です。それぞれ1万倍を超える見返りがあったのです。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月11日付掲載
さまざまな租税特別措置についてその概要を見てみましょう。
大企業ばかり
①研究開発減税(試験研究費税額控除)
②賃上げ減税(給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)
③受取配当益金不算入
④外国子会社配当益金不算入
⑤連結納税(グループ通算制度)
トヨタ自動車の22年度減税額は5211億円、自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金額は5000万円、同じく三菱商事は3755億円と2800万円です。それぞれ1万倍を超える見返りがあったのです。
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