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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

最低賃金の焦点(下) 時短で雇用守る

2024-05-26 07:07:41 | 働く権利・賃金・雇用問題について
最低賃金の焦点(下) 時短で雇用守る

山縣宏寿・専修大学准教授に聞く

最低賃金が上がっても、雇用が失われない場合があります。それは最賃引き上げによって、労働力の需要が増える場合です。

残業をなくして
なぜ労働力需要がふえるか。最賃の上昇で労働者の収入が増えれば、消費に向かう。そうなると企業は増産しなければなりません。そのためには労働力確保を必要とします。そうすると労働力が必要になり、失業者が減るわけです。
その際、どう労働力需要に結びつけていくかが極めて重要です。たとえば、増産によって企業内で必要な労働時間が1日8時間から12時間になったとしましょう。そのとき、労働者1人あたりの労働時間を残業も含めて12時間にするのではなく、8時間にすればいいのです。そうすると、労働力需要が高まるわけです。
しかし日本では、増産が雇用に結びつきにくい要因があります。日本の労働時間の上限規制があまりにも弱すぎることです。一企業内で仕事量が1・5倍になったとしても、新しい労働者を雇用せず、労働者1人あたりの残業を増やすことで対応することができるわけです。極端な例でいえば「あなたは、いままで8時間労働だったけれども、これからは12時間働いてほしい」ということです。なぜ日本では雇用増で対応しないかというと、雇用を増やすより、労働者に長時間労働をやらせる方が、企業にとって人件費を削減できる構造があるからです。ここで12時間の仕事を2人で担当していたとすれば、2人の労働時間はあわせて24時間になります。この仕事を3人で担当すれば、1人あたり8時間で済むわけです。
つまり、最賃を引き上げる際、「失業者が増える」「雇用者が減る」ということにならない仕組みを整える必要があるわけです。そのためには、労働時間の上限規制をしっかり行うことで、労働者に長時間の残業をさせた方が人件費が安くなるという構造を壊すことが必要です。



「最低賃金今すぐ上げろ」と訴えるサウンドデモ参加者たち=2023年7月15日、東京都新宿区

上限規制の強化
最賃だけが、労働政策として機能しているわけではありません。もし最賃の引き上げが「雇用の縮減につながる」というのであれば、他の政策と連動させて雇用増に向かう仕組みを社会の中に構築することこそ求められています。
いま日本の労働時間の上限規制は、時間外労働では、過労死水準と同じ1カ月100時間、年間720時間です。時間外労働と休日労働とを合わせた時間では、年間960時間の時間外・休日労働をさせることが可能な状況となっています。最賃引き上げと雇用増を同時に実現するためには、労働時間の上限規制を強化することが必要です。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月24日付掲載


労働力需要が増えた場合。どう労働力需要に結びつけていくかが極めて重要。たとえば、増産によって企業内で必要な労働時間が1日8時間から12時間になったとしましょう。そのとき、労働者1人あたりの労働時間を残業も含めて12時間にするのではなく、8時間にすればいいのです。そうすると、労働力需要が高まるわけ。
ここで12時間の仕事を2人で担当していたとすれば、2人の労働時間はあわせて24時間になります。この仕事を3人で担当すれば、1人あたり8時間で済むわけ。

最低賃金の焦点(中) 引き上げが失業者減に

2024-05-25 08:04:53 | 働く権利・賃金・雇用問題について
最低賃金の焦点(中) 引き上げが失業者減に

山縣宏寿・専修大学准教授に聞く

最低賃金引き上げをめぐる議論では、最賃が上がれば「失業者が増える」「雇用が減る」といった主張が根強く出されます。
そこで、リーマン・ショックが一段落した2011年を起点にして19年までの間に上がった最賃額の累積増加額と、失業者の増減についての相関関係を調べました。グラフは、横軸に累積増加額をおき、右にすすむほど5円、10円と最賃額が上がります。縦軸は、失業者数の増減で、ゼロ以下は失業者の減少を示します。




負の相関関係に
このグラフからわかることは、最賃の増加額が増えていくと、むしろ失業者が減っているということです。この期間の相関係数はマイナス0・78と、やはり強い負の相関関係があります。
また、15~19年、17~19年と、それぞれの間で最賃の累積増加額と失業者も調べましたが、最賃が上がっている地域ほど、失業者は減っていました。15~19年の相関係数は0・63、17~19年は0・57となっています。これは重要な事実だと思います。
一方で、この間の雇用増は、正規雇用の増加もありますが、約3分の2が非正規雇用です。また年収100万円以下という給与所得者も約393万人から456万人に増加しています。日本社会全体でみると、間違いなく富は生み出されているのですが、それをどう分配するかが間われています。
日本では全企業の99・7%が中小企業ですが、社会の中で生み出された富の多くが、大企業の内部留保として500兆円以上たまっています。設備投資や研究開発にも使われず、配当もされず、賃金にも回らない。社会のなかで生み出された富が、大企業と中小企業の間できちんと分配されれば、多少最賃が上がったとしても、中小企業がそんなに困るはずがないのです。

分配関係の改善
しかし日本では、重層下請け構造や優越的地位の乱用などにより、中小企業に利益が分配されない構造があります。そこを是正することで、最賃が上がっても、その分の人件費増をまかなえるという大企業と中小企業の富の分配関係にしていくことが重要です。
こういう構造になれば、最賃が上がっても失業者が増えるということもおさえられるだろうと思います。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月23日付掲載


このグラフからわかることは、最賃の増加額が増えていくと、むしろ失業者が減っているということ。
一方で、この間の雇用増は、正規雇用の増加もありますが、約3分の2が非正規雇用。
日本社会全体でみると、間違いなく富は生み出されているのですが、それをどう分配するかが間われています。
最賃が上がっても、その分の人件費増をまかなえるという大企業と中小企業の富の分配関係にしていくことが重要。

最低賃金の焦点(上) 地域間格差是正は急務 低い地域で人口流出 地域経済に打撃

2024-05-24 07:12:19 | 働く権利・賃金・雇用問題について
最低賃金の焦点(上) 地域間格差是正は急務 低い地域で人口流出 地域経済に打撃

山縣宏寿・専修大学准教授に聞く

最低賃金の引き上げをめぐる審議が夏から始まります。焦点になっているのが、大幅引き上げとともに、地域間格差の縮小です。最賃額の低い地域から高い地域への人口流出が指摘されており、その打開が急務になっています。最賃をめぐる課題について、専修大学准教授で、労働運動総合研究所(労働総研)常任理事の山縣宏寿さんに聞きました。
(行沢寛史)

近年、最低賃金が上昇していますが、その中で見逃せないのが、各都道府県で最賃の地域間格差が広がっていることです。
そこで、2019年時点の最賃額と各都道府県の人口移動の相関関係について調べました。表は、横軸に最賃の額、縦軸に転入・転出を示しており、ゼロより上が転入超過で人口が流入している地域、ゼロより下が転出超過で人口が流出している地域を示しています。




相関関係を確認
この表からわかることは、最賃額の低い地域がゼロより下に集中して転出超過となり、最賃額が高い地域で転入超過となっていることです。これは都道府県をまたいで引っ越しをした場合だけで、最賃額の高い地域に出勤する人たちは含まれていません。
注意してほしいのは、これは相関関係、つまり最賃額の格差と各地域の転入・転出がどの程度関係しているかを示したものだということです。最賃額が高い地域は転入超過になる傾向が高く、低い地域では転出超過になる傾向が高いということです。その点で、「最賃が低いから高い地域への人口移動が起きている」という因果関係ではないことです。
ただ、最賃額の高低と転出・転入の相関関係の強さ=相関係数は0・65となっています。各専門によって若干異なりますが、おおむね「0・2を超えると弱い相関関係がある」「0・4を超えると中程度の相関関係がある」「0・7を超えるとかなり強い相関関係がある」とされています。今回の結果は、相関関係を確認することができますし、その程度も小さくない数字といえます。
近年、最賃額の地域間格差が広がり、1995年の最高額と最低額の格差が96円から、昨年の改定で220円となりました。地域間格差が広がれば広がるほど、転出・転入の数字がさらに動く可能性があります。


労働力確保に影
この動きを具体的な地域として、山形県を例に考えたいと思います。山形県でも、各都道府県との最賃額の格差が大きければ大きいほど、その地域への転出超過となっています。東北地方は全国的にも比較的最賃が低い地域ですが、その中で宮城県だけは他県よりも相対的に高く、山形県から宮城県への転出の割合がかなり大きくなっています。さらに転出の割合が大きくなっているのが、東京都や神奈川県です。
そこで、東京などの首都圏を中心地域、東北地方を周辺地域、その間にある茨城県、栃木県、群馬県などを準周辺地域として、山形県での人口移動を見てみました。すると、東北地方内での転出・転入の差はあまりないのですが、宮城県への大きな転出があるという構造になっています。そして、かなり強い求心力となっているのが中心地域への転出です。その間に挟まれている準周辺地域は、最賃額に多少の差があっても、それほど大きく人が移動していないという結果になりました。
これはあくまでも引っ越しによる転入・転出が確認できる数字です。しかし、引っ越しを伴わない県をまたいだ通勤があり、山形県から宮城県まで通勤することは、かなりあることだと聞いています。同様に奈良県でも最賃額が高い大阪府などへの転出はしていないのですが、大阪府などに通勤しているといいます。つまり、最賃額の高い地域に労働力が集まり、低い地域では、労働力の確保がより困難になっていることがわかります。
また男女別にみた相関関係では、男性が0・64、女性が0・66と、ほぼ差がありませんでした。
現在の地域間格差でこれだけの人口移動があるわけですから、その格差が広がれば、低い地域から高い地域への転出はさらに大きくなります。



「最低賃金を全国一律1500円に」と訴える人たち=2023年10月2日、東京都渋谷区

全国一律でこそ
労働政策の基本的な役割の一つは、生産活動を行う上で必要な労働力をどう安定的に確保するかにあります。しかし、最賃の現状は、労働力の確保を困難にするばかりか、危うくする性格のものです。最低賃金法1条にある「労働者の生活の安定」にとって十分な額かというと、25歳・単身者世帯の最低生計費すら保障できていないわけです。このもとで若い労働者が、結婚して子どもを産み育てられるのか。この問題は、社会全体の中で労働力自体が縮小し、最終的には枯渇してしまうという事態を引き起こす性格があるのです。
問題を解決するには、最賃を大幅に引き上げることとあわせて、地域間格差を縮小し、全国一律にしていくしかありません。
政府は「地方創生」などと言っていますが、最賃の地域間格差は、政策として整合性を欠いています。一方で「地域の中で、安定・安心して暮らせる雇用を増やす」「労働力を確保する」といいながら、他方で地方経済が成り立たなくなるような地域間格差があるわけです。いまブレーキとアクセルを両方踏んでいるような状態です。
労働力の確保の観点からも、地方経済の観点からも、地域間格差を緊急に是正していくことが必要です。
(つづく)◇

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月22日付掲載


近年、最低賃金が上昇していますが、その中で見逃せないのが、各都道府県で最賃の地域間格差が広がっていること。
この表からわかることは、最賃額の低い地域がゼロより下に集中して転出超過となり、最賃額が高い地域で転入超過となっていること。これは都道府県をまたいで引っ越しをした場合だけで、最賃額の高い地域に出勤する人たちは含まれていません。
最低賃金法1条にある「労働者の生活の安定」にとって十分な額かというと、25歳・単身者世帯の最低生計費すら保障できていないわけです。

女性の住宅貧困が深刻 横浜市が単身者の住まいの状況調査 家賃が払えなくなる36% 家賃補助や保証人制度等を要望

2024-05-22 07:04:28 | 政治・社会問題について
女性の住宅貧困が深刻 横浜市が単身者の住まいの状況調査 家賃が払えなくなる36% 家賃補助や保証人制度等を要望

全世帯に占める一人暮らし(単身世帯)の割合が増加しています。国立社会保障・人口問題研究所は4月に「日本の世帯数の将来推計」を発表。この中で単身世帯は、20年の38%から50年には44・3%と急激に増加する予想です。単身世帯とくに女性の単身世帯にとって、住宅の課題と問題点について、横浜市の男女共同参画推進協会は、横浜市に住む単身者500人に住まいの状況~シングル女性の課題を中心にアンケート調査を行い、昨年3月に調査報告書を発表しました。

2020年の国勢調査によると50歳未婚率は男性25・8%、女性16・4%を占め、20年前と比較すると男性2倍以上、女性3倍以上に急激に伸びています。
今回の調査は、横浜市内で一人暮らしをする勤労世代がどのような住まいに住み、居住についてどのような課題をかかえ、どのような支援ニーズを持っており、どのようなジェンダー格差があるのかを把握することを目的としています。調査項目は27項目で、男性・女性各250人から無作為にウェブアンケート行っています。


①住居費負担率
家賃や住宅ローンの支払額などの住居費について、全体では6万円~9万円未満が40・2%と最も高く、次いで3万円~6万円未満が31・2%を占めています。賃貸住宅では全体で6万円~9万円未満が50・4%と高い。
月収に占める住居費の負担率は30%台以上が全体で31・4%と高くなっている。とくに賃貸住宅居住者の負担率は、30%台以上の割合は、全体で37%、女性36・6%、男性36・9%で、持ち家も含めた全対象者の回答より高くなっています。



②住居費の支払についての負担感
住居費の負担感について、全体で「やや負担」が31%で最も高く、次いで「非常に負担」が22・2%で、合計すると53・2%と過半数が負担に感じています。女性では「やや負担」34%、「非常に負担」が21・6%で、合計55・6%と住居費の負担を重く感じています。



③今後の住まいの不安
持ち家以外を対象として、今後の住まいの不安について過半数が不安を感じています。具体的な内容では「家賃等を払えなくなること」が36%と最も高く、「転居することになっても保証人を頼める人がいないこと」が全体で17・6%、男性で19・9%と高くなっています。「転居することになっても初期費用が準備できないこと」全体で17・6%、女性では18・4%、「更新を断られること」が全体で14・7%、「立ち退きを迫られること」が全体で15%を占め、立ち退き等に伴う借家問題の不安が高い割合を示しています。



④単身者への住まいのサポート
単身者への住まいのサポートとして利用したいことについて、全体で69%は利用したいサポートがあると回答しています。中でも「国や自治体からの家賃補助」が36・2%と最も高く、次いで「保証人や保証制度の見直し」と「単身でも入居しやすい公営住宅」がいずれも35・2%となっています。
女性では利用したいサポートがある割合は72・8%と高く、具体的には、「国や自治体からの家賃補助」と「単身者も入居しやすい公営住宅」がいずれも38・4%で、次いで「保証人や保証制度」が36・8%となっています。「国や自治体からの初期費用(仲介手数料・敷金・礼金)の補助」や「年齢や性別、職業、収入等で入居を断る業者等への指導」では男性と比べ女性から高い要望の声が上がっています。
本調査を監修された追手門学院大学の葛西リサ准教授は「生涯未婚率、離婚率の上昇による単身世帯の増加をはじめ、雇用の非正規化の急速な進行は、婚姻を前提とした居住保障システムを崩壊させ、女性たちの居住の貧困を露呈させることにつながった」と指摘しています。


「全国借地借家人新聞」2024年5月15日付掲載


賃貸住宅居住者の負担率は、30%台以上の割合は、全体で37%、女性36・6%、男性36・9%で、持ち家も含めた全対象者の回答より高い。
住宅費の負担感は、女性では「やや負担」34%、「非常に負担」が21・6%で、合計55・6%と住居費の負担を重く感じています。
今後の住まいの不安について過半数が不安を。具体的な内容では「家賃等を払えなくなること」が36%と最も高い。
単身者への住まいのサポートとして利用したいことについて、全体で69%は利用したいサポートがあると回答。中でも「国や自治体からの家賃補助」が36・2%と最も高い。


AIと民主主義⑤ 技術の危険性 念頭に活用

2024-05-20 07:13:49 | 赤旗記事特集
AIと民主主義⑤ 技術の危険性 念頭に活用

経済研究者友寄英隆さん

最後に、現在の矛盾に満ちた資本主義社会を民主的に変革する立場から「人工知能(AI)と民主主義」について考えてみましょう。

体制擁護の応答
筆者は社会科学と生成AIの利用に関する論文を準備中に、自然な文章などをつくる生成AIの「チャットGPT」にマルクス経済学について質問してみました。「経済学における労働価値説について解説してください」と。
AIと何回も応答を繰り返したあと、AIの出した結論は、労働価値説は現代的でないと否定的でした。そこで、拙稿では次のように指摘しました。
「生成AIを利用するさいに忘れてならないことは、現在の世界の主要国は資本主義社会だということです。利潤追求が経済活動の基本目的になっている社会です。生成AIが利用しているデータの圧倒的材料は、現体制を前提としています。そのために、生成AIは体制擁護のイデオロギー的な道具になる危険があります」(「生成AIを社会科学はどう読み解くか」『治安維持法と現代』第46号、2023年)
AIを利用したプロファイル(人物履歴)にジェンダーバイアス(性別によるあやまった偏見や差別)が生まれることがあります。そのため企業の採用や昇進、行政機関や信用評価のための金融機関の審査などの分野でAIを利用するとジェンダー不平等が拡大する可能性があります。
ジェンダーバイアスが起こるのは、AIのアルゴリズム(動作を規定する手順)の設計や学習データが現代社会の偏見や差別を前提としているからです。社会科学についての生成AIの応答が「体制擁護」的になることと同じ原理です。
AIによるジェンダーバイアスを防ぐには、データの選定やアルゴリズムの設計を改善することが必要です。しかしなにより大事なことはAIに過度に頼らず、人間が主体になって社会を変革していくことです。
AIは現代社会の民主的な変革にとって積極的な可能性も生み出しています。代議制民主主義をいっそう発展させるために、AIを利用して直接民主主義を活用する条件です。



AI利用でのジェンダーバイアスに警鐘を鳴らすネット記事

変革理論の発展
AIの利用が可能な最新のスマホを使えば簡単に日本や世界の人びとと直接会話できます。「Zoom(ズーム)」などのアプリを利用すれば、外国在住の人たちとも国際会議を開けます。AIやデジタル技術は、時間と空間の制約を超えて人と人の結びつきを可能にしています。
しかし、こうした直接民主主義の技術的条件は、現実の資本主義社会では、情報格差、情報セキュリティー問題(個人情報保護など)、情報犯罪(偽情報など)によって実現を阻まれています。
人間社会のさまざまな分野でAIの利用やデジタル化が進むことは、新しい科学・技術の応用による社会的生産力の発展の結果であり、そのこと自体は人類文明の進歩を意味します。しかしAIやデジタルの技術には、原理そのものに危険な要素が内包されていることを銘記しておく必要があります。
とりわけ人類社会の進歩と発展をめざす民主的社会変革の運動にとって、AI技術の原理が持つ特徴・限界・危険性を深くとらえたうえで、社会変革の理論そのものの創造的な発展をめざすことが求められます。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年5月18日付掲載


「生成AIを利用するさいに忘れてならないことは、現在の世界の主要国は資本主義社会だということ。利潤追求が経済活動の基本目的になっている社会。生成AIが利用しているデータの圧倒的材料は、現体制を前提。そのために、生成AIは体制擁護のイデオロギー的な道具になる危険が」
AIによるジェンダーバイアスを防ぐには、データの選定やアルゴリズムの設計を改善することが必要。しかしなにより大事なことはAIに過度に頼らず、人間が主体になって社会を変革していくこと。