2022年01月27日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[日本EEZでの日本漁船のためのスルメイカのTAC設定に加味されていない漁獲情報等]
ここ数年、韓国の近海のイカ漁船団は、東海(日本海)の北朝鮮海域で中国漁船がイカを乱獲するため資源量が低下していると主張している。
また、ロシア漁業庁沿海地方管理局とFSB沿海地方管理局は、許可を得ることなく、イカを違法漁獲する北朝鮮小型漁船による密漁が横行したため、この対策を検討する特別会議を設置して対策にあたったが、この問題を排除することには成功していない。
過去には、ロシアが認めた正規の漁獲割当を北朝鮮が中国に転売、ロシア当局が入域した北朝鮮フラッグ船を検査したところ、船内は中国そのものだったという事件もあった。
COVID19の感染拡大防止により、中国漁船による北朝鮮海域での活動、北朝鮮の小型漁船による違法漁業は鈍化しているが、これらの再開の可能性は排除されていない。
日本近海のスルメイカは冬に東シナ海で生まれ主に太平洋を北上するグループ(冬季発生系群)と、秋に日本海で生まれ日本海を回遊するグループ(秋季発生系群)での構成とされてきたが、最近では、行動不明な夏季発生群の存在が指摘され始めている。
また、朝鮮半島西岸沖合で韓国漁船は1万トン以上の漁獲を行っているが、日本での資源評価からは、この部分が欠落している。
現状、明らかに資源が日本海沿岸国とまたがっている当該資源について、次の漁獲情報が加味されていない資源評価とTAC設定になっていることが、あらためて指摘される。
(明らかでない漁獲情報等)
①北朝鮮水域での中国漁船操業(日韓EEZよりはるかに大きい漁獲をしているとの情報がある)
②ロシア水域でのロシア国内漁船による沿海地方海域、西サハリン海域、南クリール海域操業
③ロシア水域沿海地方海域でのロ韓、ロ朝、ロ中漁業協定に基づく各国漁船の操業
④日本海を中心とした北朝鮮の違法操業
⑤朝鮮半島西岸沖合における韓国漁船と中国漁船の操業
⑥その他
これらの指摘に対し、日本の関係機関は、秋季発生系群を対象に、日本海北西部の人工衛星の夜間可視データを利用し、灯火を用いる漁船操業のモニタリング体制の構築に取り組み、中国漁船、北朝鮮漁船の漁獲量の把握を試みているが、その推定は困難な状況にある。
なお、秋季発生系群を対象に、公表された2012年からの北太平洋公海部分(NPFC海域)での中国漁船とロシア漁船の漁獲データが日本の資源評価の一部に加味されたが、そのオーダは合算して千トン台で小さな数量となっている。