2022年01月01日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[2021年ロシア漁業者スケトウダラ操業総括と高次加工の展望]
ロシアスケトウダラ漁業者協会会長ブグラクは、2021年のスケトウダラ操業の総括と当該製品の高次加工の展望を概説した。
2021年のスケトウダラ漁獲量は167万トンで前年2020年より6%減少したが、洋上でのフィレ、ミンス、すり身等の高次加工製品の生産は大幅に増加し12万トンに達した。
また、陸上加工においてフィレとすり身の生産は約2万トンとなった。
2020年秋に導入された新型コロナウイルス拡散防止対策による中国の冷凍水産物輸入制限は、そこを主要市場としてきたロシアのスケトウダラ業界に大きな打撃を与えた。
同業界は、2022年末までに、この制限が緩和されることはないと見ている。
現在も大連の港は封鎖され、青島もコンテナ積みの製品のみ受け入れをしている。
ウラヂオストクにおける保管能力と冷凍コンテナの不足は深刻となっている。
また、2022年1月1日から、中国の輸入水産物表示の新たな規則が発効し、ロシアからの冷凍スケトウダラ輸出がより複雑なものになる可能性がある。
新規則に基づき、外包材と内包材の双方に必要な表示ラベルの貼付が必要になる。
韓国釜山を経由した中国向け輸出も、2021年5月以降、ロシアが発給した衛生証明が受け入れされていないため、一度、韓国が輸入、韓国から中国へ輸出する登録を行うことを余儀なくされ、物流の手続きは多くの段階を踏むことになり経費は増大している。
スケトウダラ漁業者協会は、2021年上半期のこれらの経費による損失を2億6,000万ドルと見積もっている。
ブグラクは、問題解決のため、高次加工製品を自国で生産し、可能な限り外国の再加工を介さず、直接ユーザ市場へアクセスをすることが重要だと考えている。
ブグラクは、国内外の新規市場開発の取り組みについて語り、水産加工が発達している東南アジアの国々について特に言及した。
たとえば、タイにはかなり強力なサケマス加工部門があり、ベトナムはタラ類の加工を得意としている。
2021年、ロシア企業は、これらの市場への製品供給を積極的に模索、バイヤーと商談を重ね、供給量が増加に至った。
また、アフリカ諸国へも年間を通じ製品を供給した。
ただし、これらの市場でも品質と物流に問題があり、すべてがそれほど単純なわけではないと語り、この状況で最も正しい戦略は、自国の加工処理能力を発展させることだとしている。
国内市場については、現在12万トン-13万トンの冷凍スケトウダラ、フィレ製品が供給されており、仕向けの半分は政府調達、軍隊、連邦刑務所、病院などの機関分野となっている。
国民一人あたりのスケトウダラの消費量は、ドイツやアジア諸国よりは少ないものの、米国やヨーロッパの平均よりは多くなっている。
一方、ロシア国内市場の拡大に可能性はあるものの、現在の製品形態、流通経路、小売を含む価格形成のメカニズムを考慮すると、消費量の爆発的な増加を期待するべきではないと指摘、状況を変えるには、製品形態の範囲を拡大し、新しいタイプの製品を開発する等、消費者向け最終製品の生産量を増やす必要があるとブグラクは語った。