2022年01月11日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[2022年 ロシア漁業の注目すべき政策]
今年2022年、ロシア漁業が強く意識している政策動向を列挙すると次のとおりとなる。
①投資を目的とした漁獲割当配分の第2弾の設定動向
ロシア農業省は、2021年11月、投資が義務付けされた漁獲割当配分の第2弾の設定法案について、影響評価を受けるため、水棲生物資源の漁獲割当手続きの改善を目的とする”水棲生物資源保護に関する連邦法の改正案“を明らかにしている。
法案では、新たな漁獲割当として、“投資クオータ”第2弾、カニ漁獲割当オークション第2弾、そして投資目的の市場価値の高い魚種のオークションが設定されることになるが、このあり方について政府と業界関係者の論議が継続されている。
②資源利用税引き上げの動向
ロシア政府によって提出された水棲生物資源利用税引き上げのための税法改正案が2021年11月、ロシア下院第1読会を通過したが、各水棲生物資源の利用税のインデクスにデフレータ(名目値から物価上昇や下落などの変動部分を取り除き実質値を得るための係数)を用いることを盛り込んでいるものの、当該係数設定が市場の実際の状況を反映していないとの指摘があり、問題解決に注意をはらうよう求められている。
また、控除対象漁獲量の算定基準に対象期間の設定が欠落している等、不明確な部分があり、この改善も要求されている。
水棲生物資源利用税の見直しは、2015年の国会における大統領プーチンの指示に基づいている。
商業価値の高い主要魚種では、次のとおり引き上げの見込みとなっている。
オホーツク海スケトウダラ 3,500ルーブル/トン ⇒ 4,300ルーブル/トン(約¥6.45/kg)
その他海域スケトウダラ 2,000ルーブル/トン ⇒ 4,300ルーブル/トン(約¥6.45/kg)
カレイ類 1,000ルーブル/トン ⇒ 2,100ルーブル/トン(約¥3.15/kg)
オヒョウ(カレスガレイを含む) 3,500ルーブル/トン ⇒ 12,600ルーブル/トン(約¥18.90/kg)
ベニザケ 20,000ルーブル/トン ⇒ 30,000ルーブル/トン(約¥45.00/kg)
タラバガニ 35,000ルーブル/トン ⇒ 80,000ルーブル/トン(約¥120.00/kg)
③操業日誌と操業許可証の電子媒体化関連漁業法の動向
2021年10月、操業日誌と操業許可証を電子媒体へ移行するための関連漁業法の改正案が国会に提出されている。
電子操業日誌は既に使用されているが、当該法案で法的根拠をもつことになる。
技術的管理装置を備えた漁船が操業を行う場合、電子媒体で通報、これを保管する必要があり、法案による対象が、トン数80トン以上、メイン・エンジン出力55kw以上の漁船だと伝えられた。
一方業界は、対象範囲に入る漁船のなかで、МРС(MRS)タイプの約80隻には、この管理装置がなく、技術的に困難だと指摘し、適用の除外を求めており、このためには、特定条項を盛り込む必要がある。
法案ではこれより小型で管理装置が装備されていない船舶は、紙媒体を選択することも可能となっている。
また、操業日誌が紙媒体の場合、操業許可証も紙媒体で取得することが可能となっている。
なお、法案が採択された場合、2022年9月1日に発効することになり、翌年2023年9月1日までの1年間、電子媒体から紙媒体への移行猶予期間が設定される予定となっている。
④その他動向
漁場海面区画のオークションの設定、極東地方、北部地方等、各地方の漁業規則の改正の動向が注目されるところとなっている。