2022年02月24日
リポート 北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二
[米国 ロシア産水産物輸入禁止法案をめぐり西海岸と東海岸が上院で衝突]
米国上院においてロシア産水産物輸入禁止法案をめぐり、アラスカ州選出議員とマサチューセッツ州選出議員が衝突した。
2022年2月9日、米国アラスカ選出上院議員ダン・サリヴァン(Dan Sullivan)とリサ・マコウスキー(Lisa Murkowski)がロシアからの水産物輸入を禁止するための法案、“米ロ水産物相互主義法”S.3614を提出、全会一致での承認を求めたが、マサチューセッツ州選出上院議員エドワード・マーキー(Edward Markey)がこれに抵抗を示した。
ダン・サリヴァンは、ロシアによるウクライナ侵攻を取り巻く現状に鑑み、両国間の“容認できない貿易不均衡”を是正する機会とすべきとし、ロシア大統領プーチンが、アラスカ州のスケトウダラ漁業者、カニ漁業者を犠牲にして莫大な利益を得ていると言及した。
これに対し、エドワード・マーキーは、この法案が米国の水産物輸入・加工業界に意図しない結果をもたらす可能性があると述べ、反対を強く表明した。
エドワード・マーキーは、地元の水産加工業者、業界の何百人もの労働者を組合員とする労働組合が、輸入禁止措置の潜在的な影響を懸念していると語った。
ダン・サリヴァンはマサチューセッツ州の水産加工業者が大量のロシア産スケトウダラを処理していることを承知しているとした上で、代替にアラスカ州から原料製品の調達は可能だと応戦した。
エドワード・マーキーは、妥協案についてダン・サリヴァンと協力したいと述べたが、ウクライナに軍事力を派遣する決定を下したロシアに対する制裁措置を大統領ジョー・バイデン(Joe Biden)が発表したことにより、その取り組みは複雑になる可能性がある。
なお、スケトウダラ輸入・加工業界ばかりでなく、ロシア産のカニに依存している業界も法案に反対しており、米国のカニ漁業の不漁から、ロシア産以外に補填調達する原料は存在せず、東海岸ばかりでなく、北西部の水産加工業も荒廃させることになると指摘している。