2022年01月30日
北海道新聞(森川純、松嶋加奈)
[マダラどっさり 道内各地、今冬も漁獲好調 外食需要減で価格手頃]
冬の味覚マダラが道東や日本海側など全道各地で豊漁だ。道内の昨年12月の漁獲量は6千トン余りで前年同月の約3割増。今年に入っても好調が続いている。新型コロナウイルス禍で外食需要が縮小し、鍋料理にする切り身のほか、天ぷらなどにして食べる雄の白子「マダチ」も手頃な価格で手に入る。巣ごもり需要も見込まれ、道漁連などは「安くておいしいマダラを味わって」と消費を呼びかけている。
■資源量が豊富
マダラは沖合底引き網漁船や沿岸の刺し網、はえ縄漁船が漁獲し、産卵のために深場から浅い水域に寄る冬場がピーク。小樽機船漁協の沖底船3隻は27日までの4日間で計350トンを水揚げした。余市郡漁協(後志管内余市町)の刺し網漁船8隻は、昨年11月中旬以降の水揚げ量が今年1月27日までで307トン。しけの日が多く前年同期を下回るが、24日は40トン、約2700箱分に上った。
豊漁の要因について、道立総合研究機構中央水試(余市町)は「2014年生まれが資源の多い卓越年級群になっている」(佐藤充資源管理グループ主査)と指摘。雌1匹は一度に180万~400万粒を産卵し、餌などの生育環境が良いと子の生残率が高まり資源が増大するという。
21年の道内漁獲量は約4万4千トンに上り、過去10年間で最多だった20年の4万4570トンに肩を並べる。
漁獲増に伴い価格は下がっている。道漁連によると、昨年12月以降、根室、釧路、小樽など主な産地の浜値は1匹3~4キロの大きさの雄雌込みで1キロ200円前後。豊漁だった昨冬と同水準で、4、5年前と比べ2~3割安く、1月も下げ基調だ。コロナの影響もあり、水産卸のカネシメ高橋水産(札幌)の担当者は「アンコウやアワビと同様、マダチも飲食店の需要が少ない」と説明する。
■販売先を開拓
札幌市内のスーパーなどでは切り身のパックが100グラム当たり100~150円程度、マダチが同300円を切り一部では格安で売られている。イオン北海道は「切り身は家族構成に合わせて選べるよう二切れ、三切れ、半身などをそろえた」という。
マダラの多くは根室、稚内、宮城県などの加工場に運ばれ、切り身や冷凍品となる。浜値回復を願い、道漁連は2年前から加工向けの原魚買い取りと販路拡大に取り組んでいる。北海道機船漁業協同組合連合会も学校給食などの販売先を開拓。スーパーの鍋セットなどの商品開発には半年かかるといい、原口聖二常務理事は「市場の寡占化で大口の流通が増え、豊漁の魚を素早く活用してもらうのが難しい」と課題を挙げる。
■身・白子とも加熱必要
鍋やフライ、ムニエルと用途が広いマダラの身、ポン酢で味付けしたり天ぷらや吸い物になる白子とも、寄生虫対策から家庭では加熱が必要だ。特に白子は下ごしらえが欠かせない。
白子の旬は全道的に2月前半ごろまで。一鱗新岡商店(後志管内余市町)の新岡恭司社長によると、余市前浜のマダラなら1月末まで。ボウルに白子を入れて塩を絡め、数時間置いて水で洗いぬめりを除く。沸騰した湯にちぎった白子を入れ、浮いてきたらすぐ氷水に取って、しめる。また、産地の店で新鮮なキモ(肝臓)やチュウ(胃)が手に入れば、塩でしめて水洗いし、湯引き後、鍋に入れる。新岡社長は「下ごしらえをして、さまざまな食べ方を楽しんで」と話す。