厚生労働、法務両省は9月30日、病院以外に身元を明かさず出産する「内密出産」に関し、初の指針を公表した。
子どもの出自を知る権利の保障を念頭に、母親の身元情報の管理方法や開示手順に関する規定を明文化するよう医療機関に求めた。
「最も尊重されるべき点は母子の生命・健康の確保」として関係機関に連携を要請しており、支援の在り方が課題となる。
内密出産は熊本市の慈恵病院が独自に導入。
指針について厚労省は、市からの一照会に回答した内容や、現行法下での対応を整理したものだとしている。
国に制度化を求めていた慈恵病院は、指針公表を受け「内容を精査している」とした。
大西・熊本市長は定例記者会見で「(指針策定で)新たな事案にも着実に対応できる」と評価した。
法整備に至らなかったことを、加藤勝信厚労相は9月30日の記者会見で「制度を作ることが内密出産を促すことになるのではないかという議論もある」と説明。
予期せぬ妊娠に悩む女性の包括支援を続ける考えを示した。
指針によると、医療機関は、母親の名前や住所、生年月日を確認・管理する担当者などを規定に盛り込み、情報を永年保存することが望ましい。
医師らは診療録などを作り、開示に関する母親との同意内容も記録。
子どもを要保護児童として児童相談所に通告し、出生日など戸籍作成に必要な情報も提供する。
市区町村は、児相から必要な情報提供を受け、母の欄を空欄とした戸籍を首長の職権で作成できる。
子どもの監護者に母子手帳を交付する。
児相は子どもを適切に保護し、特別養子縁組制度や里親委託なども調整。
援助方針を立てるため母子の状況などを調査する際は、匿名を希望する母親の意向を考慮して対応する。
都道府県では、病院から内密出産受け入れの事前連絡があった際には関係機関で情報を共有。
病院の対応に違法性がないかどうかも確認する。
「内密出産」指針のポイント
(医療機関)
- 母親の身元情報管理の規定 を明文化
- 妊婦とのやりとりを含む診療録などを作成
- 児童相談所に通告し、戸籍 作成に必要な情報も提供
(都道府県)
- 市区町村や児相と情報共有
- 医療機関での対応に違法性がないか確認
(児相)
- 戸籍作成に必要な情報を市区町村に提供
- 子どもの一時保護や特別養子縁組、支援を適切に実施
(市区町村)
- 戸籍を作成
- 母子手帳を交付
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