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居酒屋放浪記NO.0099 ~僕が僕であるために~「フォーク居酒屋 旅のつづき」(台東区上野)

2006-12-31 22:48:29 | 居酒屋さすらい ◆東京都内
 御徒町の居酒屋、「おかってや」御徒町南口店で会社の忘年会が開かれ、2時間の呑み放題、食べ放題が終了すると、会社の若手数人は店の外で「次、どこ行こうか」と思案に耽っているようだった。
 会が終わって、僅か数分。既に幹部らの姿はどこにも見えない。いくらもう一本締めで締めたとはいえ、これはひどい。まるで、雲の子を散らすように解散になった惨状から、わたしは、彼らと二次会に参加することにした。

 忘年会そのものは、とりたて当ブログに掲載するようなものでもなく、(昨年も、御徒町駅南口目の前の『伊勢』で開催したが、当ブログでは掲載せず)、半ば業務の延長のような慰労会だった。
 さかなが旨い、というのがウリの同店も、会社の忘年会ともなると、味わいは半減。この店はまた後日に訪れてみたいと思う。

 さて、二次会。
 どこへ行こうか、と思い巡らしてみるものの、各メンバー妙案は浮かばない。
 わたくし熊猫の思いつく店などは、立ち飲みしかなく、彼らに任せるしか手立てはない。
 考えること数分。意見が出ないところをみて、T見君が、「オレの知ってるところ行こうか」と口を開いた。
 聞くところによると、彼の義弟がマネージャーをやっている店だという。
 スナックかバーにでも行くのかな、と総勢5人でついて行くと、カラオケルーム「ビッグエコー」の煌びやかなビルの前まで来た。
 場所は、上野広小路。
 どうやら、目指すお店は、そのビルの地下にあるらしい。
 看板には、「フォーク居酒屋」と書いてある。
 店の扉を開けてみてびっくり。店内の中央にはステージがあり、楽器もそれぞれ揃っている。しかも、なんとドラムセットまである。
 なるほど、これがフォーク居酒屋か。T見君によると、この店は、第一興商が運営しているのだという。
 最近、団塊世代向けに、生ギターをお客自ら演奏させるお店が流行っていることは、なにかの雑誌で読んだ。会社の近所にも、そうしたお店が確かあったっけ。
 我々は、入り口近くのテーブルに着いて、生ビール(550円)を注文した。

 ちょうど、おっさんが歌う段になっていて、ステージに上がってきた。背広姿の会社員風。頭髪は既に寂しく、歳の頃は50代中頃。くたびれた格好のサラリーマンでもないが、バリバリといった風でもない。
 そのおっさんが、登壇しアコースティックギターをチューニングしている。その手つきはけっこう様になっている。
 演奏が始まって、びっくりした。演奏といい、ボーカルといい、ものすご~く上手なのである。しかも、歌っている曲はオリジナルだという。歌う前にMCでそう言っていた。

 そうこうするうち、店員が生ビールを運んできた。すると、「誰か弾いてみませんか」などと誘ってくる。
 既に忘年会で生ビールを4杯と焼酎「鏡月」のロックをしこたま飲んでいたわたしは、 「オレいっちゃいますよ」と名乗りをあげた。
 実はギターを持つのは4年ぶり。しかも、まだこのとき、わたしはこの店の雰囲気が掴めておらず、怖いもの知らずで弾き語りにエントリーしたのである。

 さて、何歌うかな。
 そう呟くと、K山さんはすかさず、「僕が僕であるために」をリクエスト。鈴木雅之さんの曲じゃない。もちろん尾崎豊である。
 わたしの音楽の歩みは尾崎と共にある。それを、K山さんも知っているのだろう。そして、彼女は、ミスターチルドレンの大ファンなのだ(尾崎豊のトリビュートアルバム「BLUE」にミスチルが参加。同曲をカバーしている)。
 今、歌っているおっさんの次くらいに順番だろう。何年もギターを弾いてないけれど、大丈夫だナ、などとタカをくくっていた。

 オリジナル曲を歌い終えたおっさんは上気した顔でテーブルに戻ってきた。すると、さっき生ビールを運んできたお兄さんが、マイクを持って司会となり、次の出演者を紹介する。
 今度は、島木譲二さんのような、いかついおっさんが登場してきた。
 どう見ても、風采の上がらないオヤジだ。だが、一旦ギターを持つと豹変した。
 アップテンポのアルペジオ。
 チューリップの「サボテンの花」だ。
 この人も、演奏、ボーカル共にこれまたうまい。
 思わず、演奏が終わると同時に、「あんちゃん!」とわたしは叫んでいた(ドラマ「ひとつ屋根の下」より)。
 その後、待てど暮らせどわたしの順番にならない。そして、次々に出演するおっさんたちの腕前の上手いこと上手いこと。
 吉田拓郎さんの「結婚しよう」、シガスガオさんの「夜空ノムコウ」、井上陽水さんの「東へ西へ」などなど。
 皆々がお世辞抜きでセミプロ並みの腕前を披露するなか、わたしはすっかり意気消沈してしまった。
 そして、とうとうわたしの番がアナウンスされる。
 すっかり熊猫、緊張の図。こんなことなら、昨夜にでも練習してくればよかった。
 皆がアルペジオや高度な技を披露するなか、わたしはコードを押さえてただただバッキングするのみ。しかも、すっかりコード進行も忘れており、「間違えました」と、途中訂正する始末。それでも一応完奏した。
 こんなあやふやな演奏でも、A藤君は「涙出そうになりました」と感想を述べてくれる。お世辞がうまいな。

 その後も、おっさんたちのセミプロ級の演奏は続く。
 ザ・ブームの「島唄」、ザ・ビートルズの「ミッシェル」、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」。
 わたしも1曲歌ったことで吹っ切れた。
 て、いうか、生ビールを飲み続けて、完全に酔ってきた。
 そして、またエントリーを。

 尾崎豊の「街路樹」。
 「2日前は彼の誕生日でした。生きていれば、41歳。この時期になると、彼の熱いハートと熱いビートがいつもわたしの胸に聞こえてきます」。
 オレ、なんで真面目にMCしてんだろ。

 歌っているときは、とっても気持ちがよかった。昔、歌が好きで好きで、無心で音楽をしていたことを思い出した。
 あの頃、何も怖いものなどなく、生きていたような気がする。
 それが今では、街にすっかりのまれ、少しどころか、ほとんど気にすることもなく、社会に心を許し、その冷たい街の風に、歌うことすらしなくなってしまった。

 そんな、昔置き去りにしてきた思いが、再び甦ってくる。
 オレは絶対誰にも負けられない。
 I must remain, and you also.

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4 コメント

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顔バレ (怪鳥)
2007-01-05 09:37:16
初か?最後の8行はまるで詩のようだね。君も昔は突っ張っていたよなあ・・・。そういえば。
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ドラマーの怪鳥へ。 (熊猫刑事)
2007-01-05 16:02:14
いや、『深夜特急③』で顔出てるよ。

突っ張ってた?ただ、青臭さかっただけだね。

怪鳥、今度ここ行ってみる?ドラムセットも置いてあるよ。
返信する
明けましておめでとうございます (まき子)
2007-01-05 16:47:41
この頃フォーク居酒屋がはやっているそうなんですが
この世代の人達には、なつかしの曲なんかが流れていいんでしょうか。
ちょっとついていけないけど、
楽しそうにギター弾いているのを見ると
なんだか羨ましくなります。
そうそう、遅ればせながら、明けましておめでとうございます!
また本年もよろしくお願いします。
今年こそはホッピーのみたいです。
返信する
明けまして! (熊猫刑事)
2007-01-05 21:06:29
おめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

今年は、まき子さんのホピ研初参加ありますかな。
「まき子のホッピー」見てみたいです。

さて、ノスタルジーが心地よくなってくるのは、既に人生下り坂です。
だから、フォークの調べがとても心地よく聞こえたわたしも、もうだいぶDOWN SLOPEです。

そうやって、酒飲むと、昔話ばかりするようになるんだろナ。
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