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居酒屋放浪記NO.0186 ~OZAKIへ~ 「立ち呑み 偶々(たまたま)」(港区新橋)

2008-07-22 12:43:25 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋
 「魚沼や」を出て南の方向に向かった。
 ニュー新橋ビルの南西の角の交差点に差し掛かって思い出した。
 そうか、今日は尾崎豊の命日だったんだ。
 今年は17回忌。
 そう、あれから16年も経ったのだ。

 尾崎の元マネージャー大楽光太郎さんの著書「誰が尾崎豊を殺したか」によると、尾崎は亡くなる前日、後楽園で飲み、泥酔、帰宅途中民家の庭で発見され、病院に搬送された、ことが記されている。途中、確か日光街道のどこぞの派出所の警官に敬礼をするなど、相当酔いつぶれている様子だったという。

 尾崎はいつから泥酔するようになったのか。

 元々、尾崎は酒が好きだったと思う。
♪辿りつくといつも最終の電車、酔いどれの独り言はこの町では欲望に崩れていく♪
と歌った「はじまりさえ歌えない」や♪最終のプラットホームに集まる酔いどれたち。ちどり足のステップふみ、笑顔で床にくずれる。見知らぬ淋しさが少し風に吹かれれば、「ばかやろう」なんて、小声でつぶやく。あぁ、笑うがいい、おいらは酔いどれ♪、未発表曲「酔いどれ」といった曲など高校在学時代から相当飲み歩いていたことがうかがえるが、その一方で大人の象徴とする酒については、こんなふうにも歌っている。
♪あいつは言っていたね、サラリーマンにはなりたかねぇ。朝夕のラッシュアワー、酒びたりの中年たち」(BOW!)
 また、自身の著書「誰かのクラクション」には、こんなくだりがある。
「(大人たちは)1杯の酒に安らぎを求めるというのか」。

 尾崎の5枚目のアルバム「誕生」が発表された際、確か「レコード批評」だったか、著名な音楽評論家がこんなことを書いていた。
 「闇雲にサラリーマンが嫌い、と言っていた尾崎も成人し、少しづつ社会に生きる人たちが分かりかけてきたのではないか。このアルバムには、そうした詩が多く見られる」。

 「誕生」と最後のアルバムになった「放熱への証」が、元もとの尾崎ファンの間にどのような評価がされているかは、それぞれだろう。だが、古くからの尾崎ファンは詩や曲のストーリーのディティールの浅さにがっかりした方が多いのではないだろうか。一部の大人たちからは、レコード批評のような評価も下される。
 成人を迎えた尾崎は、未成年と成年とを隔てる象徴だった酒のシーンが頻繁に歌われるようになった。その混迷が大人であることを尾崎は気付いていたのだろうか。

 あたかも、酒びたりの中年を蔑むように歌っていた尾崎、だが同じように酒びたりになったエキスキューズが「誕生」以降の作品に出ていない。もしかすると、その後、様々な形で吐露されていったかもしれないが、今となってはもう分からない。

 オレと尾崎の距離は歳を経るごとに遠くなる。
 それは、オレがこっち側の人間になってしまって相当な時間が経ったからだ。
 だが、それによって尾崎を否定することなどありはしない。
 むしろ、尾崎の存在は遠くなる一方、輝きは増している。

♪ネオンが吼えてる。誰もが溜息ついている。夜の街、ビール片手に今日の痛み抱きしめて♪
「Get It On」

 まだ、どこかの街角で尾崎がふらついているような気がしてならない。

 そんなことを考えながら、オレは一軒の立ち飲み屋で酎ハイ(350円)のグラスを傾けていた。
 ニュー新橋ビルの西側面を出て南に150mほど行った小さな店だ。
 もしかすると、今晩オレは泥酔して、どこか軒先の民家で尾崎のPV「街路樹」で彼がしたように這い付くばりながら、息絶えてしまうのだろうか、などと馬鹿なことを。

 お店で何かつまみを貰ったような気がしたが、忘れてしまった。
 カウンターの先に行き、料金と引き替えにラップにくるんだ小皿をとって、席に戻る。 セルフ方式をとる同店。肴はけっこう豊富で串焼きから冷奴まで僅かな金額で食べることができる。

一人で飲むとついピッチが早い。
何杯目かの酎ハイを口にしていると、携帯が突然震えた。
MJからだった。

仕事を終えて、ようやくMJがこっちに向かうという。
オレはグラスを飲み干し、外へ出た。既にけっこう足がふらつく。
ふと、こんなことを思った。
尾崎は死の前日、愛息裕哉君を思わなかったのだろうか。その当時(恐らく)3歳だった息子の姿が浮かばなかったのだろうか。ラストアルバム「放熱への証」には一度たりとも子供の描写は出てこなかった。尾崎が子供のことを思わなかったとは思えない。だが、もっと強く感じていたら、彼は泥酔などしていなかったかもしれない。

 3軒目はほどほどにしよう。
 そう言い聞かせて、オレは待ち合わせの場所へ向かった。


【08年11月頃、閉店を確認】
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