1年に2回くらい、岐阜に行く。岐阜駅からバスにゆられて数十分。某バス停で降りて、徒歩で現場に向かう。ものすごい田舎である。目的地の会社に縁がなかったら、一生来ることなどなかっただろう。歩いている途中に、「左門」という町中華がある。随分、昔から気になっていた。汚いたたずまい。お客さんが入っているのを見たこともなく、だが只者ではない雰囲気を醸し出している。いつか入ってやろう。そう思って無為に10年を過ごしてきた。出張の時は、夜に酒を飲むから昼は大抵抜くのである。だが、この日は違った。「左門」に入ってみようとあらかじめ画策していたのである。もしかすると、閉店してしまうのではないかという予感が脳裏をよぎったのである。
意を決して、店に入る。店の外観もボロかったが、インテリアは更に酷かった。油が堆積して、その上に埃が積もっているように見えた。一歩、店内に入ると、足が粘着テープに貼りつくような錯覚を覚えた。
にちゃ。にちゃ。
油なのである。
この時点で、もうどうしようかと思った。
電話が鳴ったフリをして、外に出て、そのままドロンしようとも思った。だが、足元の粘着がそれを阻む。さながら、害虫駆除のあれの様。
テーブルに座った。本当は触りたくもなかったが、触らなければ椅子には座れない。出来うる限り、多くの指を使わないように、人差し指と親指だけで椅子を動かし、座った。さて、メニュー。厨房の方を振り返ると、ホワイトボードにランチのメニューが書かれている。達筆すぎて、何が書かれているか分からない。辛うじてアルファベットのAとBが判別できる。とりあえず、女性の店員さんにランチメニューを聞いてみることにした。
「AとBのランチって何ですか」。
すると女性は中国語で返してきた。さっぱり分からない。
仕方ないから、「不知道」と言って、やり過ごした。日本語が通じないのか。なら、もういい、「A」で頼んでおくか。
そして出てきたAランチがこれ。なんとAランチは酢豚だったのだ。
しかし、ワンプレートの中華っていうのもなかなかない。プレートには焼売と春馬もついている。ご飯ひ大盛りで、ボリュームは満点だ。ただ、なんとなくプレートが殺風景で、見ようによっては余りもんにも見えなくはない。
だが、酢豚はうまかった。餡のとろみはくどくなく、甘酸っぱい味付けがちょうどいい。うまいやん。
飯も絶妙で繊細な炊き加減だった。
ちょっと大ぶりの焼売も春巻も本当にうまい。質量ともに満足である。
次に岐阜に行った時も、もちろんお世話になろうと思う。
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