「石和温泉」駅にたたずみながら、さて一風呂行こうかと歩いてはみたものの、温泉はホテルの中ばかり。
もちろん、ホテルには日帰り温泉はあるものの、それだけでは物足りない。入浴料も高いし、ここは仕方ない。ケータイで銭湯を検索するとしよう。恐らく、この界隈の銭湯は温泉のはずである。
すると、「石和温泉」という、ズバリその名の銭湯がヒットする。
だが、思ったよりも遠い。ボクは20分かけて、現場まで歩いた。
山梨県の盆地はもうすっかり秋の気配だった。
風が優しく、日射しは弱い。
時刻は15時半を回った頃合いなのに、どこかもう夕方の雰囲気だ。
石和は14年ぶりだった。どこの宿に泊まったか、もうそんな記憶もないけれど、でもなんとなく街並みはこんなだったかなと懐かしさを感じた。
15時50分を過ぎた頃、銭湯に着いた。
入湯料380円。
安い。
タオルを貸してくれるサービスがあるのかと思っていたが、予想に反して、それはなく、番台のお父さんに「タオル貸してもらえないですか」と尋ねると、「脱衣所に干してあるから、使っていいよ」と返ってきた。
さすが、田舎。
優しい。
脱衣所に入ると、少し暗がりになり、銭湯はどこか年代を思い起こさせるような古い造りになっていることが分かる。
窓の向こうにある浴場に人影はない。
浴場は奥に湯船が3つ並ぶ、いわゆる関東型だった。
ここは山梨県。辛うじて関東地方である。
ペンキ絵は富士山。真っ青な空と富士山が河口湖にその姿を映している。風呂の温度はやや高く43度近い温度と思われる。
湯水は透明で、若干ぬるぬる感を感じるが、強烈な泉質というわけではなさそう。銭湯スタイルだから、掛け流しでもない。
とにかく、誰もいない無人の銭湯は気持ちがいいもの。
外はまだ明るく、窓からは陽ざしが射している。
仕事あがりの一風呂。
幸せな時間だ。
そしてその銭湯の、いかにも田舎な感じの穏やかで緩い対応。いいねえ。
そして貸切状態の一人風呂。
最高じゃないか師よ。
厳密にいうと、町の共同浴場に行きたかったんだ。
間違っても、観光客用のホテル温泉には行っちゃいけないと言い聞かせながら。
町の匂いを嗅いで、酒を飲まないとね。