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喫茶さすらい 003 - ひとつのテーブルにそれぞれのストーリー - 「服部珈琲舎」(豊島区南池袋)

2015-02-24 21:49:50 | 喫茶さすらい

席に通されるまで、多少の時間がかかった。

土曜日の夕方。池袋の街は人いきれ。店内も相当混んでいた。

通りに面した席に通され、行き交う人の流れをただぼんやりと眺めていると、黄昏ていく池袋の街が、急にもの悲しく映りこむ。

人と人が出会う場所である喫茶店は、人と人がすれ違う場所であること。そんな当たり前のことに気づく。

いや、池袋の雑踏では、すれ違うことすら気づかないのかもしれない。

 

「服部珈琲舎」。

大正2年の創業だという。

「まだ、竹やぶがあちこちにあった」と同店のホームページは当時の池袋を今に伝える。

恐らく、数えきれないドラマを、この喫茶店は演出してきたことだろう。


隣の席に座るカップルの会話が耳に入ってくる。

彼女はケータイに手をやりながら、あまり楽しそうに見えない顔でこう言った。

「アシタ、チョータノシイコトガアル」

それを聞いた彼氏は、少し戸惑ったように返した。

「ドンナコト?」

 

 ボクは、1200円もするケーキセットのカプチーノに手を伸ばしながら、その会話を聞いてしまった。


結局、彼女の言う。

「チョータノシイコト」 というものが、どんなことか分からなかった。

ただ、彼女は、その会話を通して、彼氏にちょっとしたテストをしているように感じた。そのテストというのは、出方ばかりうかがう彼氏の行動を引き出すもののような。

 誰もが通る淡い思い出。

そして、成熟しない男の苦い記憶。

喫茶店は、人と人の交差点である。恐らく、いつの時代も。

何故か、ボクが食べる甘いケーキも、いつしか苦くなった。

男は、いつの時代も愚かであり、いつの時代も奥手である。

ひとつのテーブルにいつもひとつのストーリーがある。

 

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