お風呂さすらい 51 「石和温泉」(笛吹市石和町市部)で一風呂浴び、服を来て脱衣所を出ると、そこはすっかり居酒屋だった。
銭湯の共有スペースである。入ったときは、広いスペースであると認識したが、それ以外はとりたてて何かを感じたわけではない。だが、風呂から上がると、その雰囲気は一変していた。
数人の男が酒を飲んでいる。その客は風呂上りの客ではない。だって、銭湯にはわたしだけしか入ってなかったのだから。
その向こう側は厨房になっていた。そして、番台のお父さんとは違う男性が料理を作っていた。
わたしは、かなり意表をつかれた。
確かに、銭湯には共有スペースを広くとり、風呂上りにリラックスしてもらう工夫をするところは少なくない。東京北区の「やなぎ湯」は生ビールも用意されている。
だが、それはあくまでもサブ的な役割にしか過ぎない。主役は銭湯なのだ。
けれど、この石和温泉の共有スペースは完全に銭湯機能と並列する、もうひとつの顔だった。
これを食堂と呼んでもいいだろう。事実、銭湯の店頭では「入浴とお食事」と書いてある。
だが、目の前でビールと一品のつまみを食べる仕事帰りの男性を見ると、食堂を超越し、酒場に見えるのである。
わたしは厨房の男性に「生ビール」と「冷奴」を頼んだ。
「生ビール」はキリンの一番搾り。本格派である。
「たまらん。風呂上がりの1杯」。
わたしは一気にビールを飲みほしてしまった。そして、ビールをおかわり。
ビールを運んでくれるのは、番台を担当するお父さんである。
酒肴の品ぞろえも悪くない。
「もつ煮」、「ホッケ開き」、「マグロブツ」、「エシャレット」などなど。
食事メニューもあるが、断然つまみ的なものが多い。
「もつ煮」ももらったが、これも断然おいしい。甲府のとりもつを期待したが、しっかりと豚もつだった。
しばらくすると、番台のお父さんがわたしに話しかけてきた。
「出張かい?どこから?」
「東京です」と答えると、「こないだ、東京に行ったよ。スカイツリー。バスでね」。
「バスは楽だし、安いからいいよ」と笑顔で話してきかせてくれた。
しかし、何なんだこの銭湯。
おもしろいじゃないか。
「居酒屋さすらい」史上初、「お風呂さすらい」とのコラボ。
その名も「石和温泉」。
田舎はこういう店があるから面白い。
銭湯だけでは経営がということで始めたんだろうけど、いいじゃないか、こういうアットホームな銭湯も。
風呂だけじゃなく居酒屋としても楽しめるなんて、最高じゃないか、師よ。
ラーメンは石和で2番目においしいと自画自賛していたし。
素朴な料理が、また泣かせるんだ。
温泉が、村の人達の「憩いのスペース」って感じなんだからだろうね。
しかし、自画自賛していながら自ら2番目っていうのは、俺の中では全くもってあやしい発言だよ。(笑)
そういうとしばらく温泉に行ってないなあ・・・。
ラーメン二番は、お店の人がリスペクトするラーメン屋があるんじゃないかなぁ。
きっと。