過日、水道橋駅近くを通った際、アメリカンドックが食べたくなり、ちょっと行ってみるかと後楽園のWINSにあるフードコートに行ってみることにした。東京ドームホテルが出来ても、なお未だに掃き溜めのような場所が残されており、秘かに自分は最後の楽園と呼んでいた。その楽園が跡形もなくなくなっていた。
急いでスマホで確認したところ、閉店は2018年6月1日。何、令和の時代をまたがることなく閉めてしまったのか。更に急いで、スマホのアルバムを調べると、このフードコートに最後に行ったのが2018年5月25日。閉店する6日前。その時、そんなこと一言も書かれていなかったけど。まさか、急遽決まったことか。しかし、閉店する1週間前に来られたのは不幸中の幸い。もしかすると、虫が知らせたのかもしれない。
競馬は20代後半にきっぱりとやめた。拙ブログでも、もう何度も書いているが、ミレニアムの奇跡、今も語り継がれる無敗の馬、テイエムオベラオーに稼がせてもらい、競馬から脚を洗った。けれど、ギャンブラーが集う酒場やギャンブル場グルメはその後も好きだった。ギャンブラーから愛される店は掛け値なしにうまいし、ギャンブル場の店は駄菓子屋の雰囲気さえ漂わせているから。何故、ギャンブルグルメがうまいか。それは荒くれらが味を研ぎ澄ませたといっても過言ではない。すってんてんになろうとも、大金をせしめても、そのギャンブルグルメは常に彼らを王公のように振る舞わせた。だから、勝っても負けてもギャンブルグルメはうまくなければならない。
5月25日に食べた、「煮込み」。
ギャンブラーらが長い年月をかけて作り上げたものだ。やれ味噌は白がいい、やれ醤油を隠し味に入れろ、やれネギをたっぷりまぶせなどなど。その積み重ねがあったことは想像に難くない。いや、「煮込み」だけではない。このフードコートにあるもの全てがアートテキチャーだ。
冒頭で自分は、「パドックウインズ」を掃き溜めと書いた。いや、これは敬意を表して。後楽園の奥座敷、後楽園ホールと並ぶ水道橋の聖地、いやはやいろんな異名が頭に浮かぶが、この言い方こそ相応しい。
後楽園に残った最後の楽園と。
研ぎ澄ましされた「煮込み」が、あの巨大なアメリカドックがもう食べられないなんて。
お客がお店をつくり、お店がお客を作るように、持ちつ持たれつなのかもしれませんね。
ギャンブラーは激しいので、その辺はお店の人は大変なのかなと思います。勝ったときよりも負けた時の方が多いでしょうから。