「BBB」

BASEBALL馬鹿 BLOG

居酒屋放浪記 0314 - ファンファーレが店を熱くする - 「安兵衛」(台東区浅草)

2010-02-08 12:30:18 | 居酒屋さすらい ◆立ち飲み屋
 休日の午前中、どこに酒を飲みに行くか、でしばし悩む。
 赤羽は近いけれど、最近「喜多屋」づいている。
 上野はいつでも行けるし、などと考えながら吉田類さんの「東京立ち飲み案内」(メディア総合研究所)を繰っていると、「安兵衛」のページが目に飛び込んできた。

 「競馬ファンならずとも訪れてみたい穴場店。冒険気分が味わえる」。そして、「ここで飲んで馬券を買うと当たるという噂が土日に人を呼び、競馬がある週末は大混雑」とある。

 春のG1真っ盛り。
 そんな中、飲みに行くのも気がひけたが、ちょっと出かけてみることにした。

 浅草仲見世は人いきれ。
 浅草寺も振袖姿の人がちらほら。
 今日も浅草は賑わっている。

 

 浅草ロック座の裏手、「安兵衛」に着いてみると、拍子抜けした。
 「みどりの日」のこの日は競馬の開催日ではないらしい。
 10時頃到着すると、お客は3~4人だった。

 近所のご隠居さん風、常連さんらしき謎の中年が既に杯を傾けている。
 店は10坪ほどの小さな作り。入り口に焼き台を設けて焼き物を焼いている。

 店の中央に大きなテーブル。三方の壁はぐるりとカウンターがあり、厨房は右手奥。焼き台の目の前にもテーブルがあり、青空のもと立ち飲みできるスペースも用意されている。

 システムがよく分からなかったが、厨房にいるお母さんに「生ビール」(400円)と「煮込み」(350円)を頼んだ。
 支払いはキャッシュオン。デリバリーはなく、用意が出来たら、お母さんに呼ばれるので、自ら取りに行く。

 「生ビール」は銘柄不明。ビールは比較的早く出てきたが、「煮込み」が遅かった。この日が祝日ということもあって、人手が足りないのだろう。「煮込み」が出てきたのは、軽く10分は超えていた。

 店内を見渡す。
 店の西側の壁には40インチ以上はあるかと思われる薄型テレビが!
 これだけ大きいと、さすがに迫力がある。
 競馬中継で盛り上がる店内は容易に想像ができるところだ。
 G1レースのファンファーレが鳴ったら、ここはさながら競馬場と化すのではないだろうか。

 壁には当たり馬券なのだろうか、コピーが貼ってある。
 万しゅうを出したのだろう。それも相当な倍率で。
 そんな馬券のコピーが誇らしげに飾ってあるのが印象的だ。

 酎ハイを頼んだ。
 その頃からか、時刻が正午に近づくにつれて、客も少しずつ増えてきた。
 わたしの近くに陣取った大荷物を抱えた若者と目が合った。
 彼の目は真っ赤だった。
 「どうも、こんにちは」。
 わたしから彼に話しかけると、標準語とは異なるイントネーションで彼も挨拶した。
 聞くところによれば、夜勤を終えて今、仕事がはねたという。
 帰り際に一杯飲んで帰るところのようだ。

 彼はたまにこの店に立ち寄るのだという。
 仕事帰りか、ウィンズで競馬をするときに。
 彼に「競馬をするのか」と尋ねられた。
 わたしは「今はしない」と答えた。

 そう、もうわたしは競馬を卒業したのだ。
 2000年、テイエムオペラオーで年間の競馬黒字化を達成し、競馬からは足を洗ったのだ。
 一応言っておく。
 99年の皐月賞を制する前から、オペラオーには一目を置いていた。馬界を背負う名馬になる確信を当時、わたしは持っていた。
 また、00年の黒字化は秋華賞を制したティコティコタックの存在も大きい。
 G2、G3の負けをG1レースが帳消しをしてくれたというのも大きかった。
 だから、わたしは競馬から一切足を洗えたのである。
 もうひとつ付け加えれば、98年に安楽死となったサイレンススズカの存在も大きい。
 競馬とはなんと残酷なものかと思い、競馬に対し、幻滅を感じたのもこの頃だった。

 それでも、彼は滔々と競馬を語った。
 わたしはもう、近年の競馬事情には疎く、話しについていくのがやっとだった。

 つまみがなくなり、はて何にしようかと思案していると、店の黒板メニュー表に「おつまみカツカレー」(350円)という文字が飛びこんできた。
 酎ハイのお代わりとともにそれを頼んだ。
 カレーに合うのは「酎ハイ」しかないとわたしは思う。
 それは、かつて田町の「酒処 しゃら」で得た答えである。

 その通り、「おつまみカツカレー」は相当うまかった。

 この店のウリは地鶏の焼き物のようである。結局、焼き物は食べる機会を得なかった。
 次回訪れる際には、必ず抑えておこうと思う。

 店には独特のグルーブ感があった。
 客はそれほどいなかったが、独特のノリが確実に存在した。
 それは恐らく、競馬開催時の活気から来る独特のものであると思う。
 競馬が生み出す様々なドラマがこの店に悲喜こもごもの人生模様を演出してきたはずだ。
 少なくとも、店はそうした客との二人三脚で歩んできたことは容易に想像がつく。
 むしろ、店の有り様を決めたのは、客の様々な欲求のうえで、構築されたのではないかとも思う。

 だから、独特のグルーブ感が備わっているのではないだろうか。
 赤羽の「喜多屋」が09年の立ち飲みアワードの最右翼と目されていたが、ここに来てその雲行きも怪しくなった。
 それほど、この店の雰囲気はいい。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 居酒屋放浪記 0313 - 立ち飲... | トップ | 今年もうまかった!「澤乃井 ... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (事情通)
2010-11-22 22:23:53
なるほど。一見さんだとそのような感想になるのですね。
しかしこの店、地元住民からは鼻つまみものです。周辺にたむろする浮浪者、手配師、ならず者、他の居酒屋で騒いで出入り禁止になった者の溜まり場なのです。お気をつけあれ。
返信する
雰囲気 (熊猫刑事)
2010-11-22 23:18:55
アドバイスありがとうございます。
そんな雰囲気プンプンでした。

常連の方らしきお爺さんがふらふらと現れ、店のお姉さんに「●●さん~ん、今日はお金持ってる?」と声をかけていました。
いろんな人が来るものだと思った覚えがあります。

昼間から空いている酒場は大抵(ほぼ全てといっていい)、競馬好きな人が集まってきます。それだけで、人を判断できませんが、危うい確率は高くなることでしょう。

この店が日常的になってしまうと迷惑かもしれませんね。
たまに行くからいいと言えるのでしょう。

ありがとうございます。
返信する

コメントを投稿