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10年ほど前だろうか。
「Number」で馳氏がフットボール観戦記を頻繁に寄稿していたのは。
フットボールに関する記述もさることながら、それに付随する旅の様子や欧州のおいしいものをレポートする才にも長けていることを感じたのである。
サッカーライターの御大がそうであるように、また馳氏もそうだった。そう食にこだわるのである。
そう、フットボールは旅であり、旅とはすなわち食べることである。
この本は、何気なしに図書館で手にした。
迷うことなく借りることにしたのだが、その期待通りの本だった。
ハードボイルドな馳さんとは違う側面を見出すことができる。
特に度々登場する記述「腹がパンパン」という表現は、馳ファンにとっては少し信じられなくもあり、また想像したくないお姿であろう。
あのミステリアスな外見の馳氏のお腹がどかんと突き出てしまっているかとイメージしてしまう記述に少しショックを受けるのである。
だが、常に歌舞伎町を徘徊しているような馳氏が旅の道中であったり、現在住まわれている軽井沢で起きるちょっとした事件やエピソードは、本質の馳氏を感じさせてくれる。
サッカーライター金子達仁氏と生のムール貝を食べるシーンや軽井沢で松茸ごはんではなくごはん松茸に臨むシーンでは、つい笑ってしまう。シリアスな筆致の氏とは思えないおもしろぶりなのである。
もっとも、馳氏は様々なペンネームで様々な雑誌に連載をもっておられるので、文体を変えるのなんて、難儀なものではないのだろう。
ともあれ、あっと言う間に馳氏の食に関する激しいスピリットをこの1冊で感じてしまったのだ。
しかしながら、最後に出てきたマクロビオトープ。
この展開が急だった。一応、その経緯については触れていたものの、それまでの美食っぷりを一気に履がえすのは、奇をてらったわけではあるまい。
どうせならば、続刊でマクロビを採りあげてその変貌ぶりを明らかにするのも一興だったのではないかと思うのである。
でも、やっぱり面白い。
馳氏の文章は。
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