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駅毎に途中下車をして、立ちの飲み屋さんを巡る「立ち飲みラリー」は、やはり、というか京浜東北線「上中里駅」で頓挫した。
なにしろ、駅の周辺に賑やかさがない。わたしは、2回ほど駅を降りて、立ち飲み屋を物色してみたが、まず居酒屋そのものが少なかった。そこで、インターネットの力を借りて情報を求めたのだが、やはり有力なものは皆無であった。
そこで、当ブログに寄せられたひとつの情報に全てを託すことにした。それは、「北区生まれ」さんから提供いただいた「荒とよ」というお店の情報だった。早速ネットで調べると「荒とよ」の公式ホームページが見つかった。
だが、「荒とよ」は確かに酒屋さんの角打ちではあったが、立ち飲み屋ではなかった。
しかし、これも何かの縁。そこで、近隣の立ち飲み屋の情報を聞くのもいいではないか。
わたしは、「荒とよ」を訪れることにしたのである。
JR上中里駅を降りて西口を後にする。勝手気ままに歩いて酒場を探す立ち飲みラリーだが、今日はあらかじめ店を決めて突撃する算段。
わたしは、ひたすら西へ歩いた。
東京メトロ「西ヶ原」駅の脇を横道に入った。
そこはもう住宅街だった。風情ある下町の風景。辺りはもう暗くなっており、人の気配はあまりない。
しばらく歩くと「西ヶ原四丁目」の交差点に出た。
本当ならここを右手側、つまり北進するべきなのだが、わたしは西側へ行ってしまった。間違いに気づき、交差点に戻ってくるまで10分を費やした。
気を取り直して、北の方向に進んでいくと、やがて都電荒川線の踏切に出た。
だが、これも行き過ぎ。また、再び戻って、小さな路地を右手に曲がり、ようやくお目当ての角打ちに着くことができた。
外観は古風な庭園風家屋。
小売店の店先に飲むスペースが設けられているものとばかり思っていたわたしはすっかり意表を突かれた。
黒木を使用した建物は威厳さを湛えている。
少し入りにくい雰囲気も漂うが、思い切って縄のれんをくぐった。
すると、作務衣をまとった男性が現れ、わたしの前に立ちはだかった。
何故か、わたしは少し慌てて「こちらでお酒を飲ませて貰うと聞いて」と口ごもりながら言うと、男性は、「えぇ、どうぞ」とややぶっきらぼうに言いながら、わたしに席を勧めた。
席といっても、テーブルが整然と並べられている訳ではない。50坪くらいの店内の端に2、3のテーブルが置いてあるだけだ。中央は広いスペースがあり、店内を広く見せている。
お店というような雰囲気ではない。店内は薄暗くウッドベースが心地よいジャズが流れている。居酒屋と言ってしまうには、
わたしは、まずビールを貰った。
すると、旦那さんは「ウチは食べ物の持ち込みOKですから」と言い、奥の冷蔵庫にビールを取りに行った。
「持ち込みOK]というのは同店のホームページで実は知っていた。だから、わたしは店の外に出て、向かいの魚屋さんに走り、「鯵の刺身」と「蛍イカ」を買って、店に戻ったのだった。
席に戻るとヱビスの小瓶が置かれていた。
わたしは、グラスにビールを注いで、早速刺身で一杯はじめたのである。
「持ち込みOK]ではあるが、同店にもメニューは一応用意されているのだ。
メニューは3品のみ。
酒盗が500円、野沢菜と豆銘と書いて「とうべい」と読む熊本の珍味が各300円である。
しかし、メニューが3品という酒場もこれまた、いとおかしなのである。
お店の旦那は面白い人だった。
お店では様々なイベントを開催しては、好評を得ている風でもあった。
「こないだは、マジックショーをやったし、たまに寄席もやっていますよ」。
遊び心を持ち、更に人脈もあり、豊富なアイデアと行動力を併せ持つ。人生、かくありたいナと思う。
さて、お酒を頂こうか。
同店は酒屋だけあって、日本酒が豊富なようだ。
ここは、専門家の旦那に、お奨めのものを持ってきてもらうことに。
すると、旦那は奥にある巨大な冷蔵庫を物色しはじめ、1本の一升瓶を手に取った。
それが、「十五代九郎衛門」(湯川酒造店)だった。
日本酒のことはよく分からないが、一口飲んでみると、それがこれまで飲んできたものと比べて、ずっと深くておいしいものであることはすぐに分かった。
おいしい!
こんなお酒はこれまで飲んだことがなかった。
日本酒だけど日本酒のようでない。
きりっと口あたりにキレがある。
そうやって、旦那さんと話しをしながら、チビリとお酒を飲っていると、アベックのお客さんが入ってきた。
一見自由人風の長髪の男とその彼女と思われる若い女性。
旦那さんは、「いやぁ、久しぶり」と言って、彼らを歓待した。
しばらく、彼らはわたしとは反対のほうで話し込んでいたが、わたしが、「蛍イカ、いかがですか?どうもひとりじゃ食べきれないんで」と誘うと、アベックは遠慮することもなく、わたしのテーブルに来て、一緒に飲み始めたのだった。
彼らは、六義園に花見に向かう途中に立ち寄ったとのことだった。
お酒を仕入れて、夜桜を見ながら一杯やる、と言っていた。
そういえば、わたしがここに来る際、どこかのお寺の桜が見事な花を咲かせていた。
上野では、まだ満開ではなかったが、この辺りはちょうどこの日が満開のようだった。
彼らが、この店に来るのは、約1年も前のことであったとのこと。
1年も姿を見せずに、よくここの旦那は顔を忘れないでいるもんだ、と感心してしまった。
聞くところによると、長髪の青年はかつて一世を風靡したムード歌謡を歌うボーカルグループのリーダーのご子息だった。
2杯目は「鶴齢」(青木酒造)を頂いた。
彼らも、1杯のつもりが2杯となり、そして3杯となっていった。
刺身がなくなると、今度はボーカルさんが同店のメニューから「野沢菜」と「豆銘」を頼んでくれた。
しかし、この両品はとてもおいしかった。
特に「豆銘」だ。
旦那さん曰く「豆腐ように似てる」と言いながら、豆腐ようほどクセがなく、まろやかなわさび漬けのようである。ちびちびと舐めながら酒を頂くと、これがまた最高にウマイ。
もうどうにも止まらなくなるのであった。
やがて、彼らは、六義園の閉館が近くなったということもあって、店を後にしていった。
わたしは、最後に「分福」(分福酒造)を飲んで締めとした。
本当にいい酒場だと思う。
落ち着いて、うるさくもなく、しっかりとお酒が味わえて、人の出会いもある。 旦那さんが、またいい人で、機知に富んだお話しも面白い。
出来るなら1週間に1度は立ち寄って、様々な話しをしたい。
そう思わせる酒場であった。
早くも、今年の居酒屋アワードの呼び声高い店が出現した。
僅かメニューが3品の店。
立ち飲み部門で?
いやいや、堂々の居酒屋部門で、だ。
旦那さん!また近々行きます!
なにしろ、駅の周辺に賑やかさがない。わたしは、2回ほど駅を降りて、立ち飲み屋を物色してみたが、まず居酒屋そのものが少なかった。そこで、インターネットの力を借りて情報を求めたのだが、やはり有力なものは皆無であった。
そこで、当ブログに寄せられたひとつの情報に全てを託すことにした。それは、「北区生まれ」さんから提供いただいた「荒とよ」というお店の情報だった。早速ネットで調べると「荒とよ」の公式ホームページが見つかった。
だが、「荒とよ」は確かに酒屋さんの角打ちではあったが、立ち飲み屋ではなかった。
しかし、これも何かの縁。そこで、近隣の立ち飲み屋の情報を聞くのもいいではないか。
わたしは、「荒とよ」を訪れることにしたのである。
JR上中里駅を降りて西口を後にする。勝手気ままに歩いて酒場を探す立ち飲みラリーだが、今日はあらかじめ店を決めて突撃する算段。
わたしは、ひたすら西へ歩いた。
東京メトロ「西ヶ原」駅の脇を横道に入った。
そこはもう住宅街だった。風情ある下町の風景。辺りはもう暗くなっており、人の気配はあまりない。
しばらく歩くと「西ヶ原四丁目」の交差点に出た。
本当ならここを右手側、つまり北進するべきなのだが、わたしは西側へ行ってしまった。間違いに気づき、交差点に戻ってくるまで10分を費やした。
気を取り直して、北の方向に進んでいくと、やがて都電荒川線の踏切に出た。
だが、これも行き過ぎ。また、再び戻って、小さな路地を右手に曲がり、ようやくお目当ての角打ちに着くことができた。
外観は古風な庭園風家屋。
小売店の店先に飲むスペースが設けられているものとばかり思っていたわたしはすっかり意表を突かれた。
黒木を使用した建物は威厳さを湛えている。
少し入りにくい雰囲気も漂うが、思い切って縄のれんをくぐった。
すると、作務衣をまとった男性が現れ、わたしの前に立ちはだかった。
何故か、わたしは少し慌てて「こちらでお酒を飲ませて貰うと聞いて」と口ごもりながら言うと、男性は、「えぇ、どうぞ」とややぶっきらぼうに言いながら、わたしに席を勧めた。
席といっても、テーブルが整然と並べられている訳ではない。50坪くらいの店内の端に2、3のテーブルが置いてあるだけだ。中央は広いスペースがあり、店内を広く見せている。
お店というような雰囲気ではない。店内は薄暗くウッドベースが心地よいジャズが流れている。居酒屋と言ってしまうには、
わたしは、まずビールを貰った。
すると、旦那さんは「ウチは食べ物の持ち込みOKですから」と言い、奥の冷蔵庫にビールを取りに行った。
「持ち込みOK]というのは同店のホームページで実は知っていた。だから、わたしは店の外に出て、向かいの魚屋さんに走り、「鯵の刺身」と「蛍イカ」を買って、店に戻ったのだった。
席に戻るとヱビスの小瓶が置かれていた。
わたしは、グラスにビールを注いで、早速刺身で一杯はじめたのである。
「持ち込みOK]ではあるが、同店にもメニューは一応用意されているのだ。
メニューは3品のみ。
酒盗が500円、野沢菜と豆銘と書いて「とうべい」と読む熊本の珍味が各300円である。
しかし、メニューが3品という酒場もこれまた、いとおかしなのである。
お店の旦那は面白い人だった。
お店では様々なイベントを開催しては、好評を得ている風でもあった。
「こないだは、マジックショーをやったし、たまに寄席もやっていますよ」。
遊び心を持ち、更に人脈もあり、豊富なアイデアと行動力を併せ持つ。人生、かくありたいナと思う。
さて、お酒を頂こうか。
同店は酒屋だけあって、日本酒が豊富なようだ。
ここは、専門家の旦那に、お奨めのものを持ってきてもらうことに。
すると、旦那は奥にある巨大な冷蔵庫を物色しはじめ、1本の一升瓶を手に取った。
それが、「十五代九郎衛門」(湯川酒造店)だった。
日本酒のことはよく分からないが、一口飲んでみると、それがこれまで飲んできたものと比べて、ずっと深くておいしいものであることはすぐに分かった。
おいしい!
こんなお酒はこれまで飲んだことがなかった。
日本酒だけど日本酒のようでない。
きりっと口あたりにキレがある。
そうやって、旦那さんと話しをしながら、チビリとお酒を飲っていると、アベックのお客さんが入ってきた。
一見自由人風の長髪の男とその彼女と思われる若い女性。
旦那さんは、「いやぁ、久しぶり」と言って、彼らを歓待した。
しばらく、彼らはわたしとは反対のほうで話し込んでいたが、わたしが、「蛍イカ、いかがですか?どうもひとりじゃ食べきれないんで」と誘うと、アベックは遠慮することもなく、わたしのテーブルに来て、一緒に飲み始めたのだった。
彼らは、六義園に花見に向かう途中に立ち寄ったとのことだった。
お酒を仕入れて、夜桜を見ながら一杯やる、と言っていた。
そういえば、わたしがここに来る際、どこかのお寺の桜が見事な花を咲かせていた。
上野では、まだ満開ではなかったが、この辺りはちょうどこの日が満開のようだった。
彼らが、この店に来るのは、約1年も前のことであったとのこと。
1年も姿を見せずに、よくここの旦那は顔を忘れないでいるもんだ、と感心してしまった。
聞くところによると、長髪の青年はかつて一世を風靡したムード歌謡を歌うボーカルグループのリーダーのご子息だった。
2杯目は「鶴齢」(青木酒造)を頂いた。
彼らも、1杯のつもりが2杯となり、そして3杯となっていった。
刺身がなくなると、今度はボーカルさんが同店のメニューから「野沢菜」と「豆銘」を頼んでくれた。
しかし、この両品はとてもおいしかった。
特に「豆銘」だ。
旦那さん曰く「豆腐ように似てる」と言いながら、豆腐ようほどクセがなく、まろやかなわさび漬けのようである。ちびちびと舐めながら酒を頂くと、これがまた最高にウマイ。
もうどうにも止まらなくなるのであった。
やがて、彼らは、六義園の閉館が近くなったということもあって、店を後にしていった。
わたしは、最後に「分福」(分福酒造)を飲んで締めとした。
本当にいい酒場だと思う。
落ち着いて、うるさくもなく、しっかりとお酒が味わえて、人の出会いもある。 旦那さんが、またいい人で、機知に富んだお話しも面白い。
出来るなら1週間に1度は立ち寄って、様々な話しをしたい。
そう思わせる酒場であった。
早くも、今年の居酒屋アワードの呼び声高い店が出現した。
僅かメニューが3品の店。
立ち飲み部門で?
いやいや、堂々の居酒屋部門で、だ。
旦那さん!また近々行きます!
でも、このお店、ステキですね!
一旦入店した後でも、向かいの魚屋さんに行って、つまみを買ってきてOKってことなんでしょか?!
そして、日本酒も「おいしい」って思えたことに、
他人事ながら、なんだか嬉しいです。
やっぱし帰国したら、絶対に一緒に飲んでみたいです(笑)。
ホッピーで喉を潤したあとは、日本酒へ。
なんちゃって。
しかし、このお店はお奨めです。
実は、店に居ながらにして、まき子さんのことを何度も思い出しました。
「多分、ここに連れてきたら、すっごく喜ぶだろうナ」と。
日本酒の奥深さに今更ながら畏れを感じます。
少しずつ、日本酒を理解していきたいとも思います。
一時、お酒をご一緒させていただく事で盛り上がりましたね。
帰国されたら、是非一献やりましょう。
でも、あと半年もあるのか。