暮れなずむ町並みが夕陽に映える頃、わたしはバンコクのバスターミナルへと到着した。クルマのスモッグがもうもうと立ち込める中、わたしはバスを降り、辺りを見回した。たくさんのバスが発着を繰り返しながら、忙しなく人々が行き来している。
この日、わたしは朝早く、ノンカイの宿を出て、バスターミナルに向かった。この美しい町を去るのはとても惜しかったが、わたしはバンコクへ向かう選択をした。
わたしは、早く振り出しに戻りたかったのである。
カオサンにでも行こうか。
しかし、どのバスに乗っていいのか分からない。
ドンムアン空港ならば53番のバスに乗ればいいのだが、このバスターミナルでも同じ系統のバスでいいのだろうか。
まごまごしていても仕方がない。
わたしは近くにいた青年を捕まえて、カオサンに行くバスを聞くと、彼は「ボクも同じバスに乗るところだ」と言って、バス停まで連れていってくれた。
彼は片言ながら英語でいろいろと話をしてくれた。
日本語を学びたいこと、将来はエンジニアになりたいこと、などなど。彼が降りていくまでの30分間はアッという間に過ぎ、お互いの住所を交換して別れた。
バンコクのバスはお得である。
こうして、1時間近くもバスに乗って料金は3.5バーツである。タクシーを使ったらその100倍はふっかけられるのがオチだろう。だが、席には座れずともわずか10数円でこんなに移動ができるのである。
カオサンに着く頃には、すっかり辺りはとっぷりと暮れてしまった。
わたしは、再びNATⅡに泊まったのである。
ここへ戻ってくるのに、結局、1ヵ月半もかかってしまった。
気がつけば、もう5月である。
旅に出て、もう半年が過ぎようとしている。
しかしながら、わたしはまだバンコクである。
さて、次にどこへ行こうか。
ビルマ(あえてビルマと表記する)、それともマレー半島か。
せっかく、西へ急がず、ラオスを回ってきたのだから、ここはマレー半島に向かうのもひとつの手である。
いや、むしろそうでなければもったいない。
ロンドンに辿りつくのなんて、いつになってもいいじゃないか。
10年かけようが、20年かけようが、それでもいいじゃないか。
それが、わたしの特権なのだ。
カオサンの通りを歩いていると、ルアンパバンの宿で会った日本人がにこにこしながら近づいてきた。バックパックを担いでいる。
「どこへ向かうんだ」とわたしが聞くと、彼は「ブルネイだ」と答えた。
意外な答えにわたしは思わず聞き返してしまった。
「ブルネイか」。わたしは、小さな声で反芻した。
そうなのだ。
ここではどこでも自由に次の行き先を決めることができるのだ。
そういえば、次にドゥルックエアという聞きなれない飛行機会社を使って、ブータンに行くという奴とも会った。
カオサンには自由が溢れていた。
この自由な風を壊す必要もないな。
そう思いながら、わたしは軍事政権の国に行くより、南に向かうのが賢明かなと、思いながら、カオサンの街角でタバコにそっと火を点けた。
※当コーナーは、親愛なる友人、ふらいんぐふりーまん師と同時進行形式で書き綴っています。並行して語られる物語として鬼飛(おにとび)ブログと合わせて読むと2度おいしいです。
この日、わたしは朝早く、ノンカイの宿を出て、バスターミナルに向かった。この美しい町を去るのはとても惜しかったが、わたしはバンコクへ向かう選択をした。
わたしは、早く振り出しに戻りたかったのである。
カオサンにでも行こうか。
しかし、どのバスに乗っていいのか分からない。
ドンムアン空港ならば53番のバスに乗ればいいのだが、このバスターミナルでも同じ系統のバスでいいのだろうか。
まごまごしていても仕方がない。
わたしは近くにいた青年を捕まえて、カオサンに行くバスを聞くと、彼は「ボクも同じバスに乗るところだ」と言って、バス停まで連れていってくれた。
彼は片言ながら英語でいろいろと話をしてくれた。
日本語を学びたいこと、将来はエンジニアになりたいこと、などなど。彼が降りていくまでの30分間はアッという間に過ぎ、お互いの住所を交換して別れた。
バンコクのバスはお得である。
こうして、1時間近くもバスに乗って料金は3.5バーツである。タクシーを使ったらその100倍はふっかけられるのがオチだろう。だが、席には座れずともわずか10数円でこんなに移動ができるのである。
カオサンに着く頃には、すっかり辺りはとっぷりと暮れてしまった。
わたしは、再びNATⅡに泊まったのである。
ここへ戻ってくるのに、結局、1ヵ月半もかかってしまった。
気がつけば、もう5月である。
旅に出て、もう半年が過ぎようとしている。
しかしながら、わたしはまだバンコクである。
さて、次にどこへ行こうか。
ビルマ(あえてビルマと表記する)、それともマレー半島か。
せっかく、西へ急がず、ラオスを回ってきたのだから、ここはマレー半島に向かうのもひとつの手である。
いや、むしろそうでなければもったいない。
ロンドンに辿りつくのなんて、いつになってもいいじゃないか。
10年かけようが、20年かけようが、それでもいいじゃないか。
それが、わたしの特権なのだ。
カオサンの通りを歩いていると、ルアンパバンの宿で会った日本人がにこにこしながら近づいてきた。バックパックを担いでいる。
「どこへ向かうんだ」とわたしが聞くと、彼は「ブルネイだ」と答えた。
意外な答えにわたしは思わず聞き返してしまった。
「ブルネイか」。わたしは、小さな声で反芻した。
そうなのだ。
ここではどこでも自由に次の行き先を決めることができるのだ。
そういえば、次にドゥルックエアという聞きなれない飛行機会社を使って、ブータンに行くという奴とも会った。
カオサンには自由が溢れていた。
この自由な風を壊す必要もないな。
そう思いながら、わたしは軍事政権の国に行くより、南に向かうのが賢明かなと、思いながら、カオサンの街角でタバコにそっと火を点けた。
※当コーナーは、親愛なる友人、ふらいんぐふりーまん師と同時進行形式で書き綴っています。並行して語られる物語として鬼飛(おにとび)ブログと合わせて読むと2度おいしいです。
ただ、番外編を1回予定しているけれどね。
休載の間にビルマに行きたいなぁ。
第一便最終回か・・・。
半年、かなり長い間旅をしたねえ。
第2便の師の俺深も、また楽しみにしてるよ。