雲の上には宇宙(そら)

 雪国越後にて、30年ぶりに天体写真に再チャレンジ!

ステラショット3で『オフセット』にけりを付ける?(その2)

2024年01月22日 | 画像処理のはなし
”初撮り”の作品も撮れないまま、月はすでに上弦を過ぎ満月期に。
ここはじっくり腰を据えてCMOSカメラオフセットについて検証してみたいと思います。

まずは オフセットとは なにか? から。

これまでの「上越天体写真友の会(J-APA)」の勉強会で得た知識から
CMOSカメラの撮影で各ピクセルでの作業手順を要約すると・・
露光開始でPD(フォトダイオード)が、受けた光子電荷に変換して蓄積を開始する
設定した露光時間に達したら、蓄積した電荷電圧値に変えて読み取る・・・・・
読み取った電圧値(アナログ値)は、ADU(アナログ・デジタル変換ユニット)により、・・・・・・
・・・・・・・・定められたビット数のグレースケール値(デジタル値)に変換される

もし 上の手順ので計測された電圧値(アナログ値)が、PDの感度のばらつきなどから
ADUにより、本来””以上のグレースケール値(デジタル値)を得るべきものが
”として切り捨てられる危険があります。
特に低輝度データが重要な意味を持つ分野では、これを防ぐための方策が必要となります。
その方策がオフセット(バイアスともいう)なのだと思います。
具体的にはで、グレースケール値(デジタル値)”0”に相当する基準電圧(アナログ値)を
変更する(わずか下げる)ことにより、グレースケール値を底上げ(下駄をはかせる)して、
”0”で切り捨てられる事を防いでいるのだと思います。

以上を踏まえて、検証した結果の報告です。

Ⅰ. ステラショット3ASI533MCの適切なオフセット値を求める

手順 1. 低輝度画像の取得
まずは、検証するCMOSカメラの輝度””付近の画像を取得します。
これは意外に簡単で、昼間の室内でも大丈夫です。

具体的には(以下、ステラショットの場合で説明)
検証したいオフセット値を設定(注1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・
検証したいGainを設定(注2)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
明るい外光が入らない様、カメラにキャップをする(注3)
設定可能な最も短時間の露光時間を設定して露光(注4)・・

(注1)・・・・・ ステラショットではカメラ”接続”の横の”設定”ボタンで「冷却」設定と合わせて「オフセット」設定が可能・・・・・・・・・・・
*「冷却」についてはごく短時間露光のため、必要なし
(注2)・・・・・Gainを上げると輝度レベルの幅も広がるため、適切なオフセット値も変化します・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(注3)・・・・・カメラキャップをして良いなら、既存の”ダーク画像”でも良さそうですが、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こちらは実際の撮影に合わせた露光時間でダークノイズを取得するのが目的のため使えません
(注4)・・・・・わたしのカメラASI533MCでは32μSecが最低露光時間ですが、”露出[秒]”のスライドバーで設定できました

手順 2. ヒストグラムを使って低輝度画像を検証
ヒストグラムを見ることができるツールが必要ですが、わたしはステライメージ9を使いました。

それでは検証用に撮った画像のヒストグラムですが、まずはオフセット値が0の場合
Gainは推奨とされている(?) ユニティゲインの100です
ヒストグラムの輝度レベル表示幅(からの間)を50まで狭めて拡大しています
上のオフセット値”0”のヒストグラムからわかる事は、
輝度レベル”0”のピクセルが一番多くなっているものの、
その中にはPD(フォトダイオード)感度のばらつきから、本来”4以上”(注5)となるべきものが
含まれているかも知れないということ。
(注5)・・・・”1”ではなく”4”と書いたのは、ASI533MCADUは14ビットなのですが、
ZWOのカメラではそれを4倍して16ビットの輝度レベルにそろえて出力しています。
ヒストグラムの棒グラフの間隔が空いている(4レベルの間隔)のはそのせいです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (参考に) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回の検証では、オフセット値、Gain値をいろいろ替えて画像を何枚も撮っているのですが、
画像情報」の [ FITSヘッダ ]の 表示で 撮影画像のオフセット値Gain値を確認することができます
( 画像クリックで拡大表示できます ) *露光時間は小数点以下2ケタまでしか表示されないため、32μSecが 0.00となっています
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それでは、いよいよオフセットを設定すると、どうなるかですが ・・・
前回記事 で気になった、オフセット設定にあった 謎の[デフォルトに戻す]ボタン。
このボタンを押すと、わたしのASI533MCではオフセットに””が表示されたので、
まずはこのオフセット値で検証してみました。(Gain100は変わらず)
棒グラフが伸びきったため、右側に「ピークを表示」モードのグラフも追加
なんと、予想に反してオフセット値が0からになっただけで、ヒストグラムが大きく変化!
オフセット”0”ではピークは1未満だということしか言えなかったのですが、
オフセット”1”では右側のグラフから、輝度レベルのピークが20くらいになったことがわかります。

これでも十分オフセットの効果は得られたわけで、
オフセット設定時の[デフォルトに戻す]ボタンで設定されるオフセット値は、
額面通りカメラメーカーが設定したデフォルト値(プリセット値)なのかも。

ちなみに、他のカメラではこの[デフォルトに戻す]ボタンでどう設定されるのか?
私より早くステラショットを購入していた お仲間に調べてもらったところ、
同じメーカーのASI294MC Proでは””、ASI385MCでは””が設定されるそうです。
ということは、ますますカメラごとに定められたデフォルト値ではないのかとの思いから、
再び開発元のアストロアーツに問い合わせ中です。
(なんでデフォルト値を設定できるのかもふしぎだったので ・・)

アストロアーツからの回答はまだ届いていないのですが、気持ちが焦って
オフセット設定が不可のステラショット2で同様の短時間露光の画像を撮りなおして比較したところ・・・
(注)ステラショット2のゲイン設定スライダーでは100とならず102となります
ステラショットのオフセット値””のグラフと完全に一致しました。(画像コピーではありません)

つまり、オフセットの設定ができないステラショット2では
ステラショットのオフセット設定で[デフォルトに戻す]ボタンで表示されるオフセット値が適用されている事がわかりました。
つまり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これまでステラショット2で多くの時間を費やして作成してきた撮影画像はむろん、
貴重なダーク画像フラット画像ファイルはオフセット値で作成されており、
ステラショットオフセット設定を[デフォルト値]とすれば、
これからも「ダーク減算」「フラット処理」に使える。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ということです。

これで今回の検証の大きな目的の一つが判明しましたが、
書く方だけでなく、読むほうもお疲れかと思いますので、続きは次回に。

次回からは Gainを変えた場合でもオフセット値はデフォルトでよいか?
更に欲張って
持論の『天体写真ではオフセットはあまり気にしなくてよい?』についても検証できれば。


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これまでステラショット2で作成した大量のダーク・フラット画像が
今後も活用できそうなことがわかって、ホッとしています。
衝動買いに近いステラショット購入の意味があった、という事も含めて。

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