常時50人以上の労働者を使用する事業場は、毎年1回以上、「ストレスチェック」(労働安全衛生法第66条の10にいう「心理的な負担の程度を把握するための検査」)を行い、結果を労働基準監督署に報告しなければならない(労働安全衛生規則第52条の21)。
ところで、ストレスチェックは何のために行うのか、その目的は正しく理解されているだろうか。
まず、労働者にとっては、自分のストレスの状態を知ることで、ストレスをためすぎないように対処したり、医師から助言を受けたり、場合によっては会社側に業務量の軽減などを求めたり、メンタル不調を未然に防ぐことが第一の目的だ。
一方、会社にとっては、従業員のストレスの状況を知り、職場環境や業務量などがその原因と考えられる場合は、それへの対策を講じることで生産性向上や事故防止に、ひいては従業員の定着に寄与することが、ストレスチェックの目的と言える。
ところが、ストレスチェックに関しては、「メンタル不調あるいはメンタル不調者を見つけ出すもの」と誤解される向きが多い。 そのため、「自分は健康だから受ける必要はない」「会社に知れたら昇進に影響しかねない」としてストレスチェックに非協力的な従業員も、雇う側の立場で「誰がメンタル不調者か教えてほしい」と要望する管理職も、少なくない。
また、高ストレス者が多い集団の管理者の評価が低くなる傾向や、さらには、気に入らない上司を貶めるように部下(受検者)が回答するケースすら見聞きされる。 これでは、無意味どころか、逆効果にすらなりうる。
経営者や労務担当者は、従業員(管理職を含む)に対して「ストレスチェックはストレスの度合いを測るものであって、結果が人事に直接影響するものでない」と明言したうえで、協力を求めるべきだ。
そして、ストレスチェックの結果は、集団分析等の手法を用いて職場環境の改善に活かしたい。 ただし、個別に業務量の軽減などを求める従業員がいたら、それには丁寧に対応するべきであることは言うまでもない。
もし自社内で対応するのが難しければ、EAP(従業員支援プログラム)機関等、外部に委託することを検討してもよいだろう。 無論それにはコストを要するが、ストレスチェックを実効性あるものにするための必要経費ととらえるべきではないだろうか。
ストレスチェックは、もちろん法律上の義務であるので実施しなければならないのだが、義務感だけで実施しているのでは、もったいない。
せっかくコストと時間を掛けて実施する以上は、意味あるものにするべきだろう。
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