1枚の絵

2007年06月27日 | art
ピアノのレッスンに行くと
スタジオの壁に1枚の絵が貼られていた。
観る者の心が凍りそうな、今まで見た事も無いほどの淋しい絵だった。
絵の中から、描いた人の声が、叫びが聞こえそうだった。
A4の紙に、荒涼たる景色の中1軒の家が描かれていた。

生徒でもあり、先生の友人が描いたという。
ふと、去年のコンサートで、彼がピアノをぎこちなく弾いていた姿を思い出した。
10年以上鬱で苦しんでいるという。
そんな彼の心の内が手に取るように…分かり過ぎる絵だった。
その絵を見つめていると、描いた人を思いっきり抱きしめてあげたいと思った。
底なしの寂しさが、まだ稚拙な絵から噴き出し
稚拙とはいえ、描いた人の言葉にならない気持ちが痛いほど伝わり、わたしはゴッホの絵を思い出していた。

この絵をどう思います?
先生に聞かれた。
先生と同い年のようだから、まだ30代。
未来はまだまだ限りなく前に広がっているというのに。
彼のために絵の感想をいただけますかと。
思ったままを、そして描き方のコメントを述べた。
学生時代、色彩心理学を学んだけれど、その絵のように、殆どが茶色で埋められているのは何を表しているのだろう?
色彩心理、そんなことはすっかり忘れている。

今は心を病んでいる人が珍しくない。
時代背景なのか、家族の問題なのか原因は多分様々、
心が繊細な人には住みにくい世界に確実になりつつある。

1枚の絵を描くたびに、今は描いた人の心が解放されつつあることを祈らずにはいられない。
コメント
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