もう20年以上前だが、会社員時代の上司でみんなから「トオルさん」と呼ばれている方がいらっしゃった。
いろいろとお世話になったのだが、彼の修理が非常に面白い。
放送機器を海外から輸入している会社のサービス部門だったので、納品した機械に問題が発生するとすぐに
現場に行って修理しなければならない。
僕がサービス部門に籍を置いていたとき彼と一緒に仕事をしていた。
彼は修理に行く際、特に大それた工具は持っていかない。
「ツマドラ」と呼ばれる調整用に小さなマイナスドライバーを耳に引っ掛け、ポケットに手を突っ込んで出かける。
(風体はなんとなく刑事コロンボ?)
現場に到着すると、彼は不思議な行動にでる。
機械に話し掛けるのだ!
「トオルちゃんがきましたよぉ」
「どうしたのかなぁ?」と・・・
初めていっしょに仕事をしたときは、さすがに驚いた!
もちろん初めてのお客さんも驚くに決まっている!
前面パネルを開けると、内部の基盤を覗き込んだかと思ったら・・・
「おまえが悪いのか?」
「だめだぞ!」と・・・
今度は部品に話し掛ける。
「しばらくすると、こいつが原因だなぁ」とツマドラの先端をペロッと舐め、おもむろにトリマーを回しだす。
(トリマーとは半固定抵抗器のことで、平たく言うと基板上のボリュームのこと)
彼は調整のときにオシロスコープなどという無粋な測定器は使わない!
映像機器なので、画面を見ながら数箇所のトリマーを回したかと思ったら、急に考え込む。
何度か同じような動作を繰り返すと、機械は正常に動くようになっている。
まるで手品のようだったが、基本的な技術力がないとできない修理だと思う。
もちろんチップ(IC)が壊れているときは交換しなければ直らないのだが、当時の放送機器はアナログ回路の
塊で、温度特性も悪く簡単に設定がずれてしまうものだった。
つまり再調整で直ることが多いことは事実だった。
でも・・・
あまりにも不思議な修理!
彼は今も健在で僕が辞めたあとも技術屋として仕事を続けている。
毎年11月に行われる幕張の展示会は、会場をフラフラしている彼に会える楽しみもある。
(本当にフラフラ歩いているのだ!)
もちろん僕は「トオルさん」と声をかける。(彼はたぶん70歳近いはず?)
彼は「ヨッ! ゴロちゃん元気か?」と返す!
これは年中行事だ!
こんなことを書いたのも、先日HS1のセッティングを行っているとき、HS1に話し掛けている自分に気が付いた
からだ!
う~ん、トオルちゃんの教えを守っているのかも?
時々仲間と話すんだよね、技術屋は奇術屋だと!
いろいろとお世話になったのだが、彼の修理が非常に面白い。
放送機器を海外から輸入している会社のサービス部門だったので、納品した機械に問題が発生するとすぐに
現場に行って修理しなければならない。
僕がサービス部門に籍を置いていたとき彼と一緒に仕事をしていた。
彼は修理に行く際、特に大それた工具は持っていかない。
「ツマドラ」と呼ばれる調整用に小さなマイナスドライバーを耳に引っ掛け、ポケットに手を突っ込んで出かける。
(風体はなんとなく刑事コロンボ?)
現場に到着すると、彼は不思議な行動にでる。
機械に話し掛けるのだ!
「トオルちゃんがきましたよぉ」
「どうしたのかなぁ?」と・・・
初めていっしょに仕事をしたときは、さすがに驚いた!
もちろん初めてのお客さんも驚くに決まっている!
前面パネルを開けると、内部の基盤を覗き込んだかと思ったら・・・
「おまえが悪いのか?」
「だめだぞ!」と・・・
今度は部品に話し掛ける。
「しばらくすると、こいつが原因だなぁ」とツマドラの先端をペロッと舐め、おもむろにトリマーを回しだす。
(トリマーとは半固定抵抗器のことで、平たく言うと基板上のボリュームのこと)
彼は調整のときにオシロスコープなどという無粋な測定器は使わない!
映像機器なので、画面を見ながら数箇所のトリマーを回したかと思ったら、急に考え込む。
何度か同じような動作を繰り返すと、機械は正常に動くようになっている。
まるで手品のようだったが、基本的な技術力がないとできない修理だと思う。
もちろんチップ(IC)が壊れているときは交換しなければ直らないのだが、当時の放送機器はアナログ回路の
塊で、温度特性も悪く簡単に設定がずれてしまうものだった。
つまり再調整で直ることが多いことは事実だった。
でも・・・
あまりにも不思議な修理!
彼は今も健在で僕が辞めたあとも技術屋として仕事を続けている。
毎年11月に行われる幕張の展示会は、会場をフラフラしている彼に会える楽しみもある。
(本当にフラフラ歩いているのだ!)
もちろん僕は「トオルさん」と声をかける。(彼はたぶん70歳近いはず?)
彼は「ヨッ! ゴロちゃん元気か?」と返す!
これは年中行事だ!
こんなことを書いたのも、先日HS1のセッティングを行っているとき、HS1に話し掛けている自分に気が付いた
からだ!
う~ん、トオルちゃんの教えを守っているのかも?
時々仲間と話すんだよね、技術屋は奇術屋だと!