タイトルもすぐに忘れそうな…
配役もストーリーも、どちらかと言えば地味な映画です。(~_~;)
原作は英国在住の作家カズオ・イシグロの同名のベストセラー小説ですが、
観終わった後、浮かんだのは、
「人生」「仕事」「忠誠心」「後悔」
というキーワード…
一言で感想を述べるのが難しい
じわじわと…心に残るものがありました。
舞台である広大な敷地に建つ英国貴族の館や
インテリア、サンルーム、エントランスなどがとても美しくて映像の中に引き込まれます。
実際にロケで使われたのは、ディラムパークという屋敷だそうです。
ナショナルトラストで募金を呼びかけています。(^^;;
↓
http://www.nationaltrust.org.uk/dyrham-park/how-to-get-here/?findPlace=Dyrham%20Park&type=&view=map
ストーリーは、
立派な英国貴族の館の絵画がオークションにかけられ米国の富豪が屋敷ごと買い取ります。
新しい主人に継続して雇用される事が決まった執事のスティーブン役をアンソニー・ホプキンスが演じています。
彼は人手不足を考え、
新しいメイド長を雇う事を主人に提案しますが
そのきっかけとなったのが、エマ・トンプソン演ずる元同僚ミス・ケントン(ミセス・ベン)からの手紙でした。
「子育ても終わり夫とも別居中、生き甲斐がない」と悲観する手紙の内容に
再度、使用人として屋敷で働く事を勧めるつもりのスティーブンは、
主人から借りたダイムラーで彼女の住む街へ
車を走らせます。
その途中で立ち寄った町の人々の評判と、
自分が尽くした以前の主人である貴族の実像との違いに戸惑いながら…複雑な思いで過去の出来事を回想します。
それらは、第二次世界大戦前の政治的影響力を持つ英国貴族の館での、とても濃くて緊張感ある日々であり、
同時にミス・ケントンとの仕事に対する意見の相違など様々なエピソードを思い出すのに程よい移動時間であったようです。
スティーブンはケントンが優れたスタッフであった事を思い出しながら、
彼女との待ち合わせ場所に到着、
そして、20年ぶりの再会を果たしたスティーブンでしたが、
すでにケントンの気持ちは変わっていました。
雨の中、バスに乗ったケントンとの別れのシーンは印象に残りました。
…う~む、
何なんでしょうねぇ。
「娘に孫が生まれるから…そばにいてやりたい」
まぁ、生き甲斐を孫に求める気持ちはわからないでもありませんが、
遠路はるばるやってきたスティーブンの
せっかくの再就職の話を簡単に断ってしまうのが、私には納得いきません。(~_~;)
印象に残ったのは、
ケントンが昔の事を後悔しているというセリフにスティーブンが、
「人生には、いつも悔いが残るものだ」
と、答えるシーン…
二人の座るベンチの頭上でイルミネーションが灯ると同時に人々が歓声をあげて拍手するのをみたスティーブンの
「なぜ拍手するのだろう?」という呟きに
ケントンが
「夕暮れが1日で一番良い時間だと言うわ」
と答えるシーンは、
どちらも“意味深”です。
観終わった後で
DVDのパッケージの紹介文に足された
『このまま、何も言わずに愛し続けたい』
という日本語のコピーが、とても薄っぺらに思えました。(~_~;)
ちなみに、この映画では、
あの、「スーパーマン」のクリストファー・リーヴも出演しています。
1993年の映画ですので、落馬事故の2、3年前という事でしょうか…。
音楽では、
館での晩餐会の席で女性ゲストが歌うシューベルトの
「Sei Mir Gegrusst(私の挨拶を)」と、
ラストに近い再会シーンで
スタンダードナンバーの「ブルームーン」が流れますが、
その二曲よりも映画の背景に終始流れているBGMが秀逸で
マイナーでかつ小刻みなベース進行が、
そこはかとない不安感や緊張感を醸し出しており、
退屈になりがちなストーリー展開を引き締めているように思えました。
実直で忠実な執事に徹するアンソニー・ホプキンスの演技も、イイですね!
清水 由美