『マダムのアパルトメントで』
アビニョンから車で約30分(100km/h)のバニョールは人口2万人の静かな街だ。
大雪でなければ、当初の予定ではアヴィニョンで夕食ということになっていたらしいが
Championg」に立ち寄る。
ここへ入ってまず驚いたのは、とにかく食材が豊富だということ。
チーズならあらゆる種類のチーズがド~ンと並べてあるし、壁一面がヨーグルトだけの棚もあって、商品レイアウトがとてもダイナミックだ。
肉やハムソーセージも、デ~ンと塊状態で置いてある。
それらを地元の人たちは日本のスーパーの2倍はあるかと思うような大容量のカートに
どっさりと買い込んで行く。
(これで10日分の食料?)と思う程の量だが、ムッシュに訊くとフランス人の標準家庭で
3日分くらいの食料なのだという・・。
折りしもフランスでは1月6日(今日)がカトリックの「公現祭」というお祭り?なのだそうで
ガレット・デ・ロアという紙で作った金ピカ王冠付きの、直径30cm以上もあるパイやケーキが入り口付近に所狭しと並べられていた。
マダムにねだって「ガレット・デ・ロア」を買ってもうらう。
これを食べる時、中に陶器の人形が入っていて、パイを切り分けた時に入っていた人が
王様の冠をもらえるのだそう・・。
レジではベルトコンベアのような台の上に自分で買った品物を並べて棒で仕切る。
前の客の清算が終わると、このベルトコンベアが動いて自分の番、というワケだ。
なかなか合理的なシステムである。
清算が終わって出口横のパン屋さんに立ち寄る。
マダムが「焼きたてのバケットは美味しいよ」といいながら差し出した。
その言葉通り、一口食べてみて驚いた。
外はカリッカリ、中はしっとりとして粘りがあって、程々の塩味・・。
やや薄茶色で、日本で普段食べているバケットよりも細くて食べやすい。
この地粉が、違うのだろうか・・。
フランスで食べた美味しいものNo.1を選ぶとすると、私は間違いなくこのバケットを挙げるだろう。
車から降りて、マダムのアパルトメント到着。
建物は古いが、セキュリティもきちんとしていて入り口の二重のドアを開けエレベーター
で10階へ・・・
本当は11階になるが、フランスではホテルでもそうだったように1階は0階なので、
マダムの家は11階だが、表示は10階なのだ。
(なんだかややこしい)
エレベーターを降りてブルーのドアを開けると、全く段差のない玄関、西洋の家の造りだから当たり前ではあるが、
段差のある玄関に慣れている日本人の私は(どこまでが玄関?)と少し戸惑ってしまう。
玄関コーナーで靴を脱ぎスリッパに履き替える。
マダムも私と同様で、玄関で靴を脱がないと気が済まないのだという。
改めて「日本人」を感じた瞬間であった。
さて、7年ぶりの再会のコリー(マダムの息子)どこにいるのだろう…。
「お~い、〇〇く~ん!」と呼ぶが出てこない。すっかり待ちくたびれて寝てしまったのかなぁ…。
玄関を入ったコーナーには、クリスマスの飾りが置いてある。
フランスのクリスマスは、日本と違って期間が長いのだそう…
木でできたサンタさんの人形の顔も、ヨーロッパしていてなかなかイイ。
部屋全体はオークル系の壁で統一されていて、天上が高いせいか広々としている。
部屋数も3つ、それに二十畳くらいのリビング、キッチンもバスルームも広い。
充分な広さだ。
リビングの壁際にノート型のパソコンが3つ並べてあった。
フムフム…ここでマダムはBBSに書き込みしていたのねぇ…。
その姿を想像してふと、可笑しくなった。(マダムごめん)
夕食はアンディーブのサラダとポークピカタ、それに先だってのイタリア旅行で買ってきたという美味しいサラミにパイ皮のシャンピニオンクリーム煮など。
それらが、あっという間に食卓に並ぶ。
(相変わらずマダムは手際が良い。)
大きな楕円形のテーブルにはプロヴァンス独特の色彩感で描かれたオークルの地にグリーンの葉とと濃紺のオリーブの実がデザインされたテーブルクロスがかかっていて、一層、料理を引き立てているようだ。
テーブルセッティングなどにも、センスの良さが感じられる。
久々の再会をシャンパンで乾杯!
アンディーブは白菜の芯のような形の野菜で、食べると少しほろ苦いが如何にも「野菜」
という味がして、とっても瑞々しい。
歯ざわりも良くて、病み付きになりそうな味だ。
胡瓜も日本のに比べると大きめだが、
香りも味も、昔の日本の胡瓜の味がした。
その頃になるとコリーが寝ぼけマナコをこすりながら起きてきた。
思えば前橋に遊びに来た時は4歳…すいぶん大きくなったものだ。
私のことを「お由美姐さん」と呼ぼうか「オバチャン」と呼ぼうかと悩んでいたらしい…
う~ん、BBSで参加していたコリーにとっては無理もない。
とりあえず、「オバチャン」に決定。これにて一件落着。
買って来たガレット・デ・ロアを切ってみる。
コリーが切り口から何やら取り出した。
(噂の人形だな…)
ところが人形だと思ったソレは2cm角の陶器のタイルのようなものだった。
鳥の絵が描いてある。
コリーがこれまでガレット・デ・ロアから出てきた人形を見せてくれた。
どれも3cmほどの小さな人形だ。
鳥の絵の描いてあるタイルというのは珍しいのかもしれない。
うちの息子たちに言わせるとレアもの、なのかも…。
肝心のガレット・デ・ロアのパイだが、すでにお腹がいっぱいだったため明日食べることにする。
マダムも雪の中、往復して疲れているに違いない。
今夜は、早めに寝て明日に備えることにしよう…それにしても天気が心配。