99歳の監督、新藤兼人。
それにしても、エネルギーは衰えていない。
もうこれを最後とするそうだが。
で、みずからの体験から、上官のくじで決められた生死の境。
ベッドを上下にした親友に訪れた妻からの一枚のはがき。
そのはがきが、またもや人生を紡ぎだす。運命のいたずら。
手紙を出した妻は、夫を戦死で亡くし、その弟と結婚するも、弟も出世、死亡。
残された、父と母は相次いで死んだ不幸。
一方、生き残って帰った男の妻は、父とできて街へ出て行っていた。
不幸な二人を結びつけた一枚のはがき。
二人のやりとりなど、綿密な新藤話術でひっぱっていく。
妻にすり寄る団長の姿は、村社会の象徴でもあり、喜劇的だ。
そしてラスト、「裸の島」をおもいださせる、両天秤の水運び。
新藤の原点は、ここにあった。